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陽光

無性にナンが食べたくなって、久しぶりに昼休みは会社の外に出かけた。

ナンはやっぱり大きくて、おなかをパンパンに満たしてくれた。

そして、見事に睡魔が襲う午後。
お天気いいし、しかたないねと思いながら、体を動かして抵抗する。


気分転換に時々開くニュースサイトは、相変わらずのラインナップである。



そういえば、9年前も、目に見えないものへの不安が、世の中に溢れていたなぁと思いだす。

そんな9年前の3月の今日、私はハレの日を迎えていた。
今日みたいに、あたたかくて、とても天気がいい春の日だったことを、よく覚えている。

参列してくれた人たちの笑顔や、おめでとうの言葉を思い出すと、まだ少し心がくすぐったい。

あの日のことで忘れられないのは、「久しぶりに人と話すことができて、すごく安心できた」と、言ってもらえたことだった。


「こんな時に」
という言葉を、どうとらえたらいいのか、たくさん悩んでたくさん考えて、私たちは結婚式を決行した。

「こんな時だから」
少しでも、誰かといる時間を楽しんでほしい。
ぬぐいされない不安はたくさんあるけれど、みんなで不安をわけあえる時間が少しの救いになればいい。

そんな思いがたくさん行き来していた。


大切な人たちがそこにいてくれる喜びを、大切な時間をわたしたちに分けてくれる人がいる安心を、わたしは今も覚えている。


「いつも通り」が難しい時だった。

でも、楽しいことは楽しかったし、嬉しいことはやっぱり嬉しかった。
笑ったり泣いたり、美味しいご飯を一緒に食べて、大変だったこと怖かったこと、不安だったことを声にして、また笑った。

一緒に過ごしたアホみたいな日々を振り返って、懐かしい気持ちをあじわえた時間には、いいようのない幸せがあった。

ずっと結婚式はしてもしなくてもいいと、思っていた。
2011年の3月という日取りでなければ、今ほど特別には思い出さなかったかもしれない。

あの年のあの日に結婚式を予定していたことに、意味なんてないのかもしれない。
でも何か縁があることだったのかもしれない。


そんなことを思う今日は、
あの時に似て、街は静かで、少し窮屈で、確かな正解がだれにもわからない不安な空気をまとっているからかもしれない。

それでもあたたかくなる空気と、色づきはじめた春の景色に心は踊るし、美味しいものはお腹を満たしてくれる。


不安もあるけれど、楽しいこともうれしいこともあるのが事実なのだ。


それでいいのだ。
そういって、また、明日を迎えることができたらいいな。





ありがとうございます。ロックンロールと生クリームとマンガと物語に使いながら、自分の中のことばを探っていきまます。