【黒田の10年】

日本銀行の黒田東彦総裁が任期満了退任されました。
2013年3月総裁就任、量的質的緩和を強化、2016年2月マイナス金利導入、2016年9月長期金利を抑え込むYCCを導入。
〇短期決戦を想定した異次元政策が長期化し、どんどんと深みに入っていった。
〇最初の3年半で作戦はネタ切れ、あとの6年半は自らの政策に縛らて身動きとれず。国債の大量購入を継続、日銀BSの膨張。
黒田さん就任当時デフレ懸念は深刻でした。よって異次元政策の妥当性はあったと思います。しかし当初より「出口」が困難な政策でありました。
黒田さんは並みの大蔵官僚ではありません。広い視野と深い教養、胆力があり忍耐力もある。人の世のウラオモテを知り、人情の機微もわきまえている。いわゆる「国士」的な官僚でした。
ただ、黒田さんは「奇策」「リスクテイク」を指向する人でした。誤解をおそれず言うと「ギャンブル」を好みかつ強い人でした。彼を知る人の多くは、この性向を認めると思います。
連合艦隊司令長官山本五十六も有能かつ視野の広い「国士」でした。そしてトランプゲーム(賭け事)の名人でもありました。山本は有能過ぎて「真珠湾攻撃」という奇策を立案し、これを成功させます。しかし、それは出口なき対米戦争の不幸な号砲でした。山本長官と黒田総裁、異能の二人がどうしても重なって見えてしまうのです。
評論家を気取るつもりはありません。しかし、この10年間は、吾輩が学び経験してきた金融の「常識」を覆し、「金融とは?貨幣とは?」を問い直す契機になりました。何かを書き残しておきたく小文としました。
(2013年4月6日記)

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