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ほとけへの想いを胸に、画家たちは創作する

2024年3月某日
春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術
府中市美術館


今年もこの季節がやってきた!府中市美術館の春の江戸絵画まつり。
「ほとけの国の美術」ということで、楽しい~って感覚にくわえて、厳かな雰囲気も味わえる。

仏像や仏画だけが仏教芸術じゃあない、伊藤若冲や円山応挙や長沢蘆雪など個性的(奇想?)な絵師のさらに個性的な絵も、仏教の思想の上に成り立っているのだった。
当時は人々の生活と仏教がとっても密接で、仏教の思想が一般常識というか根底にあったんだろうな~そして切実だったんだろうな~

西洋画を観るとき、聖書や神話がモチーフになっていて「そうなんだ~ほえ~」みたいになるし。
例えば禅画なんて観るものを試すような、考えさせるような内容で「お、おう?」みたいになるし。
美術においても同時代性、その時代のリアルな感覚を共有するって重要なんだなあと改めて感じた。

でもそこはやっぱり府中市美術館。
あれこれ考えなくても、美しくて楽しくて、バラエティに富んだ展覧会になっている。
いつもながら、うっとりニヤニヤしながら鑑賞したのだった。


二十五菩薩来迎図 土佐行広 京都市・二尊院

・日輪サイド
全員菩薩さま。ありがたや。
衣が金。線と塗りどっちも金。截金があしらわれていて、綺麗。
観る角度で光り具合がいろいろ。ありがたや。

観世音菩薩、いいお顔。「来ましたよ~」感。
普賢菩薩が持っているシャラシャラしたやつ、いい音が出そう。
太鼓叩いて笛吹いて、お琴に鳴り物などなど、音楽隊が続く。
この世のものとは思えない、素敵な音楽が流れているんだろうな。
踊る菩薩も優雅。
しんがりはお地蔵さま。衣が素敵だ

優雅な踊る菩薩


・月輪サイド

勢至菩薩、風を感じる。「来ましたよ~」感。
こちらもやっぱり音楽隊がすごい。琵琶に竪琴 いろんな鳴り物
虚空蔵が舞う。つま先上がっててノリノリ。
しんがりは龍樹菩薩。お地蔵さんとリンクコーデ。

3 阿弥陀二十五菩薩来迎図
こちらは掛け軸版。阿弥陀如来の後光がビカーーー
周りの菩薩は楽器演奏なし、全員踊ってる。

9 春日宮曼荼羅図 
春日大社はこの世の浄土。御蓋山の上に菩薩たち

7 柳橋水車図屏風
月の存在感。鉛?銀?なんらかの金属でもりっと表現。
水車がエンボス。金箔が幾何学的模様みたいでおもしろい。
柳もデザイン化されてるようでちゃんと柳。

11 十王図 
地獄の審判たち10王のうちの6王。
なんというか、素朴な絵柄で牧歌的な感じさえするんだけど、やっぱり人間が裁かれている場面描写はエグい。
でもなんだか半笑いみたいな微妙な表情なのはなぜだろう?甘んじて受け入れているのだろうか。


死んだ後を心配するより、今をどう生きるか。
ほんとうに、そう思う今日この頃。

14 達磨図 岩佐又兵衛

横目のギョロ目。唇噛んでるの? いろんなことが読み取れる表情。
すごい目力、といか顔の圧。
顎と首のラインが又兵衛ラインじゃあないから、最初わかんなかった。


21 蝦蟇鉄拐図 鈴木芙蓉

蝦蟇も一緒に口からびゅーーーっと何かを吐き出す。
さすがの仙人パワーーー

22 松に小禽・梟図 狩野山雪

なんとも言えない頭もっこり梟の表情。
どうやら他の鳥にからかわれてるらしい。でも気にしな~いって感じが好き。

26 三福神図 仙厓義梵
仙崖さんのイエーイな恵比寿大黒福禄寿 大福茶飲もう


31 毘沙門天像 鈴木其一

めちゃめちゃかっこいい。惚れた。すっごい強そう。腹の獣も
現代アートの細密画みたい。

33 荼枳尼天像 鈴木其一

酒池肉林?を地で行く夜叉的な女神。
なんやかんやでお稲荷さん信仰と結びついて、白狐に乗っている。
構図がおもしろい。

65 布袋図 酒井鶯蒲
いじられがちな布袋さん 袋に乗っかってイエーイ!

63 すたすた坊主 白隠慧鶴
すたすた坊主とは、冬に裸でやってくる歌って踊る門付けの人。

62 辰松布袋図 白隠慧鶴
布袋さんがニコニコしながらお福さん人形を操る。福々しい


64 布袋図 葛飾北斎

北斎の布袋さん、めちゃめちゃふてぶてしいわ~
まんまるキュートな布袋さんが多い中、ふてぶてしいわ~
しかも耳かき中。そんなところを切り取っちゃう北斎先生のセンスったら。


66 皿回し布袋図 春叢紹珠

出た~頭で皿回しする布袋さん。
もお禅画ったらなんでもアリよね。
前観たときから誰かに似てるな~って思ってたんだけど、荒〇宏氏…?


43 白隠慧鶴 豊干禅師・寒山拾得図 
白隠さんにしては結構コテコテに書き込んでるような。
寒山拾得がちょっとジジイぽいなあ。
無邪気な子供みたいってイメージが強いけど、考えてみたらまあまあのオッサンたちなのかな。

44 豊干禅師図 仙厓義梵
仙厓さんの豊干禅師オンリー画。
なんて気だるい表情なんだ。メランコリーすぎる。ぜひ会場で観てほしい。
墨使いがミニマム。でもメリハリはある。


58 降竜伏虎羅漢図 逸見一信

増上寺の「五百羅漢図」を描いた逸見一信の作品。
さすが、羅漢さんの気合いの表情がすごい!
虎を調伏し、龍を乗りこなす羅漢さん。
黒と金の世界。書き込みに隙がない。


57 石峰寺図 伊藤若冲

若冲との縁が深い石峰寺。
なんだけど、この絵は不思議な世界って感じがするなあ。
若冲の脳内の石峰寺というか。若冲が考えるのほとけの国?
書き割りのような、ちょっと浮世離れしてるような雰囲気。
本人もそんな感じだし、いい意味で。


67 阿弥陀如来像 悟心元明
大仏顔面。螺髪ぐるぐるもよくわかる。頭からなんか出てますよ

104 芭蕉涅槃図 弟子と歌の動物たちが悲しむヴァージョン

92 藤花鼬図 長沢蘆雪

日本画でイタチって珍しくない?かわいいけども

90 春景群鳥図 長沢蘆雪
ほんと上手い、花も鳥も繊細。
いろんな書き方ができるスキルがあるんだね

94 雪渓双熊図 円山応挙

ふわふわな熊の親子。
「さあ冬眠するわよ」「僕まだ眠くないよ~」


113 雪中狗子図 円山応挙

はむっとしながらこちらを見る子犬。
目鼻が大きくてかわいい。デフォルメしててもふわふわ感


117 子犬図屏風 長沢蘆雪

締めは蘆雪のゆるかわな子犬たち。
蘆雪さん酒飲んで描いてる?みたいなギリギリのプロポーションかも。
めまぐるしく動き回る子犬たちの一番かわいい瞬間をとらえたぜ!ということかしら。
昨年新たに見つかった屏風で初公開。


おまけ

プチワークショップにて、
手のひらサイズの折りたたみ毘沙門天と涅槃図動物塗り絵。
塗り絵は、ちょっぴり写経みたいな気分になった。

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