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絣と塩とクジラの世界

2023年1月某日 
江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~
たばこと塩の博物館

渋いワンテーマ、小粒でピリリ、とにかく独自性にあふれる特別展を繰り出すたばこと塩の博物館。通称「タバシオ」。
今回はインドネシアの絣=イカットをフィーチャー。

イカットを中心に据えつつ、タバシオらしく塩、そしてクジラも絡めた構成。ほえ~なるほど~がいっぱいの読み物系も充実。
今回も新しい発見があったなあ。ホントに100円でいいのかしら?

レンバタ島のイカット「海の民のイカット」
レンバタ島のイカット「山の民のイカット」
レンバタ島のイカットを生み出す生活文化
インドネシア東部のさまざまなイカット
江上幹幸コレクションについて

メインビジュアル。さりげなくIKAT


●一見地味だけど、すごい技術がつまっている絣

織り方の理屈は知りつつも、すごい技術だとみるたびに感心する。気が遠くなりそう。
細かく印を付けて、糸をきゅーっと縛る。縛った場所は染まらない。縛るつっても何千何万回とか、もっとかな?

そうして縛った糸を染めて、縦糸と横糸を織る。
織るときにずれたら模様がズレちゃうから、丁寧に織る。
そうしてようやく意図したデザインが浮かび上がってくる。
そこがすごいと思うんだ~絣の技法って。

展示品はシンプルな模様からだんだん細かくなっていく。
モチーフはマンタ、ウミガメ、船、人、ワニ、などなど。幾何学模様とストライプも印象的だった。
具体的なモチーフと幾何学模様がさまざまに組み合わされて、デザインは無限大。
ストライプにしても太さ細さ、隣にどの色を持ってくるとか、すごく考えながら心を込めて織ってるんだろうなあ。

色も多彩。主に藍と茜とウコンで染めている。きっと染め方を工夫していて、微妙に色味を変えられるんだろうなあ。
ほとんど腰巻とか腰衣。しかも婚資とか晴れ着用も多い。そりゃあ気合いも入るね!

色と模様と細密具合が素晴らしい


●読み物系の展示がいっぱい。情報が盛りだくさん

地域によって異なる製塩方法。
糸を染める・紡ぐ・織る課程。
伝統捕鯨方法は命がけ。そして全部みんなで分ける。クジラは捨てるとこがない。

●海の民と山の民

海の民が塩を作る。クジラを捕る・肉を加工する。染めに必要な石灰を採取する。
 ↓
山の民は綿などを栽培し糸を紡ぐ。藍や茜、ウコンなどの染料を採取し糸を染める。糸を織って布を作る。農産物も育てる。
 ↓
海の民の女性が行商へ行く。山の民と物々交換する。
そうして海の民も布を織ることができる。
さまざまな地域ごとの特色が豊か布が生まれていく。

そうして経済が回っていく。「捕鯨文化圏」。これぞ循環型社会。
素朴ながらうまいこと回っている。お互いに得意なものを生み出して、ないものは補い合う。
独自の単位で交換するので、もめ事もないんだそう。
うまいこと回っている。

●江上幹幸(えがみともこ)氏

民族考古学の調査で1980年代後半からインドネシア東部を訪れ、少しずつイカットを蒐集してきたのだとか。
島ごと、地域ごとに異なる染織物文化が存在しているとのこと。
いや~よく集めてくれましたね~巡り巡って日本に貴重なイカットが集結してるってある意味奇跡だと思う!


●つれづれに

エスニックやテキスタイルに興味がある者として、とっても楽しめた。
思いがけず、未知の文化にガッツリ触れられた。見ごたえたっぷり~
ホントに100円でいいのかしら?(2回め)

●今日のおみや
・イカット×更紗のコースター
裏と表で全然違うテイストでおもしろい。日常に伝統工芸を取り入れていきたいものね。
・塩
タバシオにいくとつい買っちゃう塩。日本産も外国産もいろいろ。比較的小さいサイズで売っているのでお試しにぴったり。

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