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おもしろ絵巻を永青文庫で堪能

2023年10月某日
秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開 ―永青文庫の絵巻コレクション―
永青文庫


戦国時代に興った細川家。
初代の細川藤孝(幽斎)、息子の忠興いずれも文化人というイメージがある。個人的に。
忠興は千利休の弟子で、また嫁がガラシャだったこともあり、歴史の舞台でもちょいちょい登場する。

とにかく文武両道で、3代忠利のとき肥後熊本五十四万石をゲッツ。
時は流れて16代護立氏の時代に永青文庫を設立。
細川家に伝来する文化財の散逸を防ぐ目的だったとのこと。
ということで肥後細川庭園を横切って、永青文庫へ。

というのも、先日「長谷雄草紙」の情報を見て、私の「これはおもしろそうセンサー」に触れた。
ちょっぴり「吉備大臣入唐絵巻」の雰囲気を感じ取ったからなのだった!


●「吉備大臣入唐絵巻」とは?
ボストン美術館所蔵のおもしろ絵巻。
一言で表すと、吉備真備のはちゃめちゃ冒険譚。
遣唐使として渡った唐で、いろいろとひどい仕打ちを受ける吉備真備が、不思議なパワーで軽々と克服していくお話。
バディーは唐に居着いてなぜか鬼になった阿倍仲麻呂。


今回の展覧会は「長谷雄草紙」をメインに、他にも興味深い絵巻が展示されていた。
模本もありつつ、さすが肥後藩ええもん持ってはる。


・長谷雄草紙(はせおぞうし)
紀長谷雄(きのはせお)が朱雀門の鬼と双六勝負をする話。
長谷雄が全財産、鬼は美女を賭ける。
賽をびしぃぃぃっと置くのをマンガのような線で表す。
涼しい顔で勝ち続ける長谷雄とイラついている鬼の対比もおもしろい。
最初は人間に化けてたけどいつの間にか赤鬼の本性が出ちゃってる。

まさに長谷雄が決めたところ

長谷雄の勝ち。
美女を連れてきて「100日は触れたらアカン」という鬼。そんな殺生な。
案の定、辛抱たまらず80日で触れてまう長谷雄。
すると美女は水となって流れてしまう。
あーっ!って感じでものすごいガッカリする長谷雄。そらそうだよねえ。
美女は死人の良いところを集めたもので、100日経つと人間になるはずだったらしい。

水と消えてしまった美女

後日「約束守れんかったやろ」と鬼に襲われるが、北野天神に祈り助かる長谷雄。
鬼はすたこらさっさと退散。ふーめでたし。というお話。

絵がいい。描き分けが上手くて味がある。
長谷雄の品がいい。
朱雀門への道すがら、魚屋や車屋などの町中の様子やいろんな種類の木が描かれていたり。
こんなのも描けまっせというアピールだろうか。
とにかく短いお話だけどおもしろ。お伽草子の元、的なお話の一つだとか。


・蒙古襲来絵詞(模本)
元寇といえば、のあの国宝の絵巻。
竹崎季長は肥後藩の御家人だったことから、縁を感じて模本と白描本(下書きみたいなもの)を作成したとのこと。
細川家が原本をゲットするチャンスがあったらしい。
が宮内省が買い上げて、現在は三の丸尚蔵館へ。

ドーーーーン


・信貴山縁起絵巻(模本)
命蓮の鉢を飛ばす神通力で有名。鉢よりも米俵が飛びまくる場面がおもしろ。
現在、東京国立博物館で四大絵巻の一巻として展示中。
さぞかし混み混みなんだろうな…
縁起ものだけど堅苦しくなく、楽しめる。

飛び交う米俵。Wikipediaより


・十二類絵巻(模本)
干支メンバーと狸率いる干支じゃあない軍団の戦い。
干支たちにちやほやされる鹿がうらやましい狸。自分は冷遇されて逆恨み。
狐、烏、ふくろう、猫、いたちなどの仲間を集めて、干支たちへ戦いを挑む。
鎧兜でガチンコの動物たち。
狸は鬼に化けたりしながらも、最終的には狸側が負ける。
世の無常を感じた狸は出家する。
腹鼓で踊念仏を唱えたりして、めでたしめでたし。ポーンポコポン。

十二支にもてなされる鹿とそれを見つめる狸。文化遺産オンラインより


・秋夜長物語絵巻
稚児物語。
僧侶と稚児の恋物語から比叡山と三井寺のバトル勃発!
稚児の梅若は石山寺の観音さまの化身だった~っていう、驚きの展開。
でも稚児物語ではわりと定石なのだとか。ほえ~~~

稚児の夢を見る僧侶。ここからはじまる物語


絵巻はやっぱりおもしろい!って改めて感じた。
次の場面をワクワクしながら手で巻きながら読むから、飽きないようにビックリな展開になってるのかな?
絵巻って、裏のデザインも抜かりなし。キラキラしてたりする。
ストーリーを把握しながらねっとり鑑賞できるのもよかった。
昔の人はおもしろいお話をひねり出すなあってことにもグッときた。

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