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人々の生活をいろどる板谷梅樹のモザイク

2024年9月某日
特別展 昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界
泉屋博古館東京


展覧会のチラシを見たときから気になっていた、板谷梅樹というモザイク作家。
美術館でモザイクをじっくり観ることって、あんまりないかも。
それこそ壁面や床が多いような気がする。
板谷梅樹の作品は、額に納まるくらいのサイズから、お皿や装身具など手で触れられるものが多い。
1つ1つのピースが細かいな~銀細工と合わせてて繊細だな~
などなど、なんだか新鮮な気分で鑑賞した。

板谷といえば、板谷波山。
板谷波山の息子(五男)の梅樹。
焼き上がっても気に入らないものはガッシャーンと壊しちゃってた板谷波山。
こだわりが強い陶芸家がガッシャーンしちゃうイメージは、彼から始まったのだとか(山田五郎の受け売り)。
とにかく波山がガッシャーンした陶片が、梅樹をモザイク作家へ導いたんだろうな~
波山と同級生の小川三知に弟子入りして、ステンドグラスを学んだ影響もあっただろうけど。

モザイクだからモチーフをある程度単純化しているんだけど、稚拙な感じにはならず、むしろ洗練されているというか。
色づかい、色の組み合わせが洒落てるからかしら。
「これ素敵~欲しいわ~」って素直に感じるものがいっぱい。

初めて知ることがいろいろとあって、いや~とっても興味深かった。


三井用水取入所風景

ホールにどーんと構える、現存する一番大きい作品。風光明媚~
濃淡いろんな緑と水の流れとのコントラストが効いてる。
富士山のピースが鋭角でかっこいい。
手前のピンクや黄色は丸っこくてめっちゃ抽象的。メリハリ~


第Ⅰ章:「モザイクの世界で」

日本劇場(日劇)のモザイク壁画でデビューしたのは26歳のころ。
それまでにはブラジルへ行ったりなんやかんやあったみたいで、その辺りも気になるところではあるけどもそれはともかく。

古代ギリシアに着想を得た洋画家・川島理一郎の下絵をもとに、音楽・平和・戦争・舞踏をモザイクで表現した壁画群。
親父波山の陶片とガラス片を組み合わせていたのだとか。

ちなみに日劇の壁画は現存しない。廃棄されてしまった。
今では古くなってもなるべく保存していこうって流れだけど、当時はそうでもなかったのかな…

戦後、壁画はベニヤで覆われていた。タイアップ商品売り場を作るとかで。
なんか乱暴で嫌だわ。
で、日劇を解体するときにベニヤを剥がしたら壁画が現れてビックリ!みたいな。
マリオンのどっかに埋め込んで残せばよかったのにーーー
東宝の砧撮影所で20年間眠っていて、建て替え?のタイミングで消えてしまったそう。
扉の上のちいさな3点は残っていて、遺族が持っている。
せめてもの救いだけど、なんか切ない。

って最初からなんとも複雑な気持ちになっちゃったけど、その後は板谷梅樹ワールドに浸る。

・笛を吹く人 赤が鮮やか

・長谷川コレクション by吉三郎
うさぎ魚鳥 波山と重なるモチーフ 構図を相談したらしい
同じ色使いで異なるモチーフ描き分けー

・壺 派手な色がいい シックでサイケな幾何学
・花 キューブみたい 丸三角四角 色が綺麗 背景が黒で締まって見える



メインビジュアルにもなっている孔雀のような鳥。デザインが素敵。
背景のグレーが洒落てる


・花 白背景 黒輪郭これかっこいい モノトーンに赤黄色が効いてる



黒背景にカラフルヴァージョン パキッとしてるすごく色鮮やか
サインはU.I 梅樹板谷

・紫陽花 色合いが素敵
・薔薇 緻密だわー形とかピースが トゲもあるよ皿もあるよ

シール 貼る場所はまだキメていない


きりん

かわいい。丸っこいからかな~ひらがなだからかな~
デフォルメしてるんだけど、センスがいいからしっくりくるというか。
よく見ると、ツヤっとしたのとマットなのと、ピースのテクスチャーが異なってるの
ちなみに、釉をちょっと剥がして使ったりしていたらしい。なるほど~


・飾皿 
出光佐三が板谷家の支援者だった
出光の社員への贈呈品として、梅樹のモザイク皿をあげていたのだとか。
葉っぱ?有機的なモチーフと幾何学模様的なデザインの組み合わせがおもしろい
とにかく色の組み合わせがバラエティに富んでいて、並べてみると楽しい~
思わずポストカードをゲッツ。

飾皿のバリエーションのほんの一部


飾筥
薄いブルーに赤十字モチーフが洒落てる
微妙なアールもいいピースそれぞれ色味がちょっとずつ違うので、それがいい味になってる

同じような形で梅樹の梅みたいなモチーフとか、朱が効いた漆の筥も


第Ⅱ章: 「日常にいろどりを」

・ステンドグラス
小川三知の参考作品と梅樹の花と

・煙草系
灰皿、煙草入れ、盆など。ちょっとしたとこなんだけどデザインされていて洒落てるのよね
煙草入れる箱が宝物箱みたいに見えるわ~

・香盆 異国風 ターコイズみたいな色味がベージュに映える


装身具 帯留め

昭和10年代~銀座の和光で装身具を販売していた
ブローチ、ペンダント、帯留、バックル、カフスボタンなど
ペンダントヘッドいいねー

装身具 ペンダント

小さいピースが角度によってキラキラするの
モザイクだから微妙に角度ついてるからだと思う
銀のパーツも渋くキラキラ
無限大のマークを組み合わせたようなモチーフがお好み?インフィニティーーー


ステンドグラスのランプシェード
辰砂の台座は波山作 ということで親子合作


第Ⅲ章:「住友コレクションと板谷家」


葆光彩磁珍果文花瓶

この作品を大正6(1917)年に住友家15代当主・住友吉左衞門友純(春翠)が入手。
ということもあり春翠が波山の作品を蒐集し、住友コレクションにいくつか含まれている。

桃枇杷葡萄は吉祥モチーフで珍果。すごくでっかい。
波山本人が会心の作って言ってるからよっぽどだよね!

・彩磁更紗花鳥文花瓶もいい 
淡ーい更紗で宝相華(ほうそうげ)で これもでっかい

・葆光彩磁双魚文皿 
魚も吉祥モチーフとのこと。やちむんもそうだっけ?

・八手葉花瓶 ヌーボー波山 濃い茶色が珍しいかも

・板谷まる(玉蘭)
結構アクティブだった波山の奥さま。
絵も描くし、花瓶も作るし、故郷で学校も設立した。
結構グッときた

・板谷菊男 
波山の長男。ちょこっと作陶していたが、継がずに高校教師に。
ちなみに長男が菊男でー五男が梅樹ということはー
次男三男四男の名前が気になるところ。花にまつわる名なのだろうか?

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