織田商店で曲がって…
入学式当日だったと思う。
着物姿の母と二人で家を出ると
町に向かって歩きだした。
暫く歩くと、町の入り口に入った。
ここからは、通りの両側にぎっしりと店や民家がが並んでいる。
そこからまた少し歩いたところで母が止まった。
「このお店の所を曲がるのよ。
織田商店て書いてあるでしょ」
お店のガラス戸に織田商店と書いてあった。
「あとは、まっすぐ行けば学校だからね。
ここを確かめて曲がるのよ」
「明日から一人で大丈夫ね?」
町には何度か来たことはあり、
決して初めての場所ではなかったので
僕は「うん」と返事した。
よって、翌日から僕は家を出たら
織田商店を目指してまっすぐ歩いた。
織田商店で左に曲がって小学校に向かった。
小学生だった兄や姉もいたので、
入学当初は連れて行ってもらったに違いないと思うのだが、
それが思い出せない。
同じ年の子たちも近所にいたのに、
やはり、入学当初に一緒に通った記憶がない。
そのうち、何かの拍子に思い出せれば、
ものすごく楽しいだろうなと思う。
そんなわけだから、
記憶の中の僕は一人で黙々と歩き
織田商店を確かめると左に曲がった。
学校までは30分以上歩いていたと思う。
1年6組の楽しい生活が始まった。
(まこと)
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