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趣里主演『ほかげ』に見る【選ぶ自由】

映画『ほかげ』を観た。メインキャストは、朝の連続テレビ小説『ブギウギ』で主演を務める趣里だ。

舞台は終戦間もない闇市。趣里が演じるのは、戦争の絶望から立ち直れないまま、生きるために体を売る女。ある日、闇市で盗みをしながら食いつなぐ戦争孤児が、彼女の居酒屋に盗みに入る。少年は、それを機に、度々訪れるようになり…… そこに帰還したばかりの若い兵士が加わって……

と、残りは、ぜひ映画館で観てほしいのだが、ぼくがこの映画を見て痛切に感じたのは、

誰もが戦争に縛られている。

戦争は終わった。けれども戦争の残した傷があまりにも大きくて、過去から自由になれないのだ。誰もが、まるで重たい荷物を背負っているかのようだ。とは言え、前に進まなければ、野垂れ死にが待っている。「前なんて向きたくない、でも、前を向かなければ生きられない」と引き裂かれるような思いで生きている。

そんな彼らを見ていると、単純だけど、今の時代を生きるぼくは、もっと自由に生きていいんじゃないか、思い知らされた。そして改めて感じたのは、

ぼくには選ぶ自由がある。

戦争と比べること自体が無茶なのは百も承知している。けれども、彼らには選ぶ自由がない。戦争という大惨劇に巻き込まれ、傷を負い、そして立ち直る間もないまま、前を向いて生きることを強要される。彼らの逞しい姿は勇気を与えてくれる。けれども、やはり痛々しい。

でも、ぼくは違う。

もちろん、これまでの人生、楽なことばかりではなかった。傷ついたこと、傷つけたこと、思い出すのがつらいことだってある。でも、それと同じくらい、楽しいこと、嬉しいこと、感謝したいこともあった。

だから、人生とは、なんて問いに答えるならば、詰まるところ、ぼくは選ぶことができるのだ。

つらいことがあった。だから、これからもつらいことばかり。そんな人生観を選ぶのもぼくの自由。良いことがあった。だから、これからも良いことばかり、そう選ぶのもぼくの自由。

無理矢理ポジティブというのは、どこか違う。けれども、どうせなら自分を良い方向に導いてくれる考え方を選びたい。そして、ぼくには、それを選ぶ自由が与えられている。そんなことに感謝の念が湧いた映画『ほかげ』のご紹介である。

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