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(舞台感想)リア王

大阪の新しいホール、SkyシアターMBSで見ました。

良かったです。
悲劇でした。
涙溢れました。

リア王のあらすじは知っているつもりでした。しかし始まってみると、リア王と3姉妹のことしか覚えておらず、グロスター家って何だっけ?という状態でした。お恥ずかしい。

話を知らなくても充分に楽しめました


舞台が始まり、いきなり登場する現代風オフィスの演出に面食らいました。
しかし、老い、組織、権力、親子、という構造は明確なので、舞台が中世ヨーロッパでも現代オフィスでも大差はなく、話が進むにつれ違和感はなくなりました。


老いについて考えました


若い頃、リア王は、長女と次女の甘言に騙され、末娘の真心に気付けなかった阿呆で、凋落する最後は自業自得なのだと思っていました。

しかし50代となった今は違います。リア王を笑うことはできません。

ヒトは群れで生活しています。サルやライオンと同じです。群れを追い出されると、個体が群れの保護無しで生きることは難しく、野垂れ死ぬ可能性が大です。

年老いて衰え、狂って一人で彷徨うリア王は、自分の将来の姿に見え恐怖を感じました。

そこに天使のごとく現れるコーディリア!

よく考えれば、外国へ追い払った娘が軍隊を動かして助けに来てくれるなんてとんだファンタジーですが、荒涼とした話の中、それは唯一のオアシスのように温かく、思わず涙ぐみました。

オフィス風の演出に沿って考えると、少子高齢化の日本株式会社が持続的な成長をするためには若い世代が大切。年寄はネクストステージへ退出してください。あなたが苦労して獲得した過去のノウハウは全部譲っていきなさい。譲ったらあなたは用無しです、というところですね。

リアルです。
複数のコミュニティを持てとよく言われますが、リア王を見ていると、死期が近づくとすべてのコミュニティから一斉にシャットアウトされるのかもしれない、と思いました。

段田安則さんは圧巻でした


私は2022年のショーン・ホームズ氏演出、段田安則さん主演の「セールスマンの死」に大感激しました。
そのため本公演には大層期待していました。期待値を上げすぎたかと心配していましたが、全く問題ありませんでした。断トツに素晴らしかったです。
特にリア王が荒野を彷徨うシーン。シンプル極まりない何も無いステージだったのに、荒野の石ころが見え、雨風が見え、稲妻が見えました。濡れそぼった重い服が見え、凍える寒さを感じました。良かったなあ。

エドモンド役の方が素晴らしく序盤から目を引きました。
2階席からでお顔をよく判別できず、後から調べ玉置玲央さんと知りました。大河ドラマ「光る君へ」の道兼役の熱演に、凄いなあと感心していたところでした。
注目している役者さんにたまたま出会えるとは、なんとラッキー!と嬉しくなりました。

コーディリア役の上白石萌歌さんも素晴らしかったです。姿勢がまず美しかった。抑制の効いた柔らかいお芝居が、思慮深く優しいコーディリアにピッタリでした。冒頭の座っている姿だけで、気高さが伝わってきました。

SkyシアターMBSについて


JR、大阪メトロの駅から近く、便利な場所にありました。建物の6階です。商業スペースはオープン前でしたが、レストラン階が複数あるらしく楽しみです。観劇後にちょっと飲めるところがあれば嬉しいのですが。
2階席の1列目で観ました。
手すりが低く舞台がよく見えました。万一の転落には注意です。ご安全に。
女子トイレ個室の空き表示が、JR新大阪(だったと思う)のトイレと同じ方式で笑ってしまいました。(アナログですが効率的で感心するのです。)



お読みいただき、ありがとうございました。



●データ
公演期間
2024年3月8日(金)
~2024年5月2日(木)

会場=東京、新潟、愛知、大阪、福岡、長野
作=ウィリアム・シェイクスピア
翻訳=松岡和子
演出=ショーン・ホームズ
美術・衣裳=ポール・ウィルス
出演=段田安則 小池徹平 上白石萌歌 江口のりこ 田畑智子 玉置玲央 入野自由 前原滉 盛隆二 平田敦子 / 秋元龍太朗 中上サツキ 王下貴司 岩崎MARK雄大 渡邊絵理 / 高橋克実 浅野和之