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それは盲点だったわ~と思った盲目整体師の食事

盲目整体師高野をサポートしているささきです。
視覚障がい者の毎日は、目が見える私には気づかない発見や驚きに満ちています。

高野は20年前に全盲になったので、
普段の暮らしはすっかり慣れていて、
整体院内など、自分が知っている場所では
それほどサポートすることは多くありません。

必然的に外出したときの歩行や外食時、
新しく訪れた場所などでのサポートが多くなります。

先日も2回続けて、「食事」関連のお話を書いたのですが、、
今回も外食で大丈夫だと思って気を抜いていたら
大丈夫じゃなかったお話です。

上品に食べることはとても難しいのです・・・


視覚障がい者の方の食事のときは
目の前に何があるかを伝えるのに
時計に見立てて伝えるというのを聞いたことがある方もいるかもしれません。

12時のところにキャベツの千切り、
15時のところにトマト、
6時のところにとんかつ、などといったように説明していきます。

このこと自体はいつもやっていることなので
問題はないのですが・・・

あるセミナーに参加したときのことです。
それはちょっと良いホテルで開催された経営セミナーで
食事つきのものでした。

午後からの開催だったので、
夕食がついていたのですが、
それは素敵な、普段食べることのない、
豪華なものでした。

コロナ禍ということもあり、
上品な重箱型のものに入ったものが配膳されました。

※写真はイメージです(画像ACより)。こちらが出てきたわけではありません。

上の写真はイメージなのですが、
定食屋さんでこういう箱に入って出てくることってありますよね。。

実際、以前に定食屋さんでこのパターンのものを
一緒に食べたことがあり、食べ物の場所を教えるだけで
美味しく食べられていたので、
私は今回も大丈夫だと安心していたわけです。

「●時のところにお刺身、▲時のところに天ぷら、■時のところに煮物で、
〇時のところに前菜の盛り合わせ・・・」と重箱の中身を説明したあと、
私は自分の席に戻って、大急ぎで自分のものを食べていました。
(サポートやフォローのために早食いをしているのです)

品数も多く、上品な味付けだな~と
食べながら高野のほうをみると、、
何と、、食べられてなかったのです!!

あわてて、飛んで行って様子をみると
悲しそうな顔で、
「食べにくい・・・・」と訴えてきました。

大きいテーブルだったので、
同じセミナーに参加している他のグループの方もいらっしゃって
心配そうにこちらを見ています。

どうやら、お箸で狙っても、食べ物にたどりつかず、、
お皿の上の空間だったり、箱の仕切りにぶつかってしまったり。。
箱とお皿の間の微妙な隙間にお箸が挟まってしまったり。。

定食屋さんではこんなこと起こらないのに
なぜ、こうなってしまったのでしょう??

・・・盲点でした。。

問題は高野にとっては
「上品すぎる盛り付け」にありました。
ちょっといいホテルなので、盛り付けも美しく、
箱の仕切りも多いうえに、その中には
さらにお皿、しかもそれは
扇形だったり、ひょうたん型だったり、花びら型だったり。

そしてさらに「余白の美」を意識した盛り付け。

定食屋さんでは、箱に入っていても、
その箱のサイズに合わせた四角いお皿で、すき間はなく、
しかもその空間いっぱいに
野菜いためだの、フライだのが入っていることがほとんどです。
だから、お箸でちょっと探れば、すぐに食べ物に行きつくのです。

ところが、「余白の美」を意識した芸術的な盛り付けでは、
食べ物に行き着かず、
「余白部分」・・・「食べ物と食べ物の間の空間」をお箸がさまようだけ。
あるいはお皿と箱のすきまにお箸が入ってしまうだけ。

このままでは夕食が終わりません!!
というか食べられません!!

「こりゃ困った・・・」と思った私は・・・・
テーブルマナーもへったくれもなく、
「ホテルのシェフごめんなさい!!」と心の中で謝りつつ、
箱から全部お皿を取り出して、テーブルの上に並べたのでした・・・。

お皿だけになれば、手で持って食べることができます。
箱から取り出したことで、
手で触って、小鉢もお皿も認識できたので、
無事に食事を終えることができたのでした。

今回の一件で、
「目が見えない」ということは、
食事に限らず、
「似たようなことだから、これもできる」とはならないんだということに
気づかされました。

見えている私が、
「ほんのちょっと」の違いだと思っていても
見えない本人からしたら
「大きな違い」なのです。

きっと他にも
私が気づいていない
今回のようなことがあるかもしれない・・・と

別の日、庶民的な中華料理のお店で
A定食のお皿を持って汁を飲み、
きれいに平らげていく高野を見ながら
思いました。

あっっ・・・!!
そのお皿私の方に傾けないで~~っ!!
テーブルの真ん中に
チンジャオロースの残り汁が~~っ!
だーっとテーブルにこぼれた汁を
あわてて拭き、高野を見ると
「どうしたの?」ときょとん顔。

まさかの、
こぼれたことに気づいておらず。
持ったお皿を
「水平」に戻す感覚が
わからなかったようです・・・。








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