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娘の結婚まで 嫁に癒される

Yちゃんはすぐ来た。しかもニコニコと来た。

彼女は約束の時間の、遅くとも5分前にはやってくる。
娘のユルサとは何たる違い、と、つい比較するものの、
「娘を育てたのは私だ・・・」
と自戒する(;'∀')。

連休後半、いい天気である。夫は、気の済むまで車をいじったり、チェンソーの手入れをしたい人なので、
「行っといで」
と送り出してくれた。

ウヒャヒャと出かける。目的地は、某産直のパン屋さんと、某店のジンギスカンである。パン屋さんにはかねてより
「いつか一緒に行こう」
もしくは
「夫婦でドライブがてら行くといいよ」
と言っていた場所だ。

3月にたまたま行く機会があったのだが、その日はYちゃんが
「今日はやめときます」

これには深い事情があり、そのうち書くかもしれないが、嫁と姑というより、母と娘、いや、仲良しと久しぶりに会った(昨日も会ったけど)感じでウキウキである。

目的地には難なく着いた。が、店の界隈はいつもと違い酷く混雑している。産直祭りなるものをやっていて、屋台なども出ている。駐車場は他県ナンバーやバスでごった返していた。
鮎の塩焼きが300円であったが、それを横目で見ながら
「パンはあっという間に売り切れる」
Yちゃんを促し、中に進んだ。

産直奥の小さなパン屋さんは、更に混雑していた。
私は口早に言う。

「おすすめはコレとコレとここら辺。この、桃とヨーグルトクリームは新商品だけどめっぽう美味しかったからこれもオススメ」

言いつつ、目指すものに手を伸ばす。幸いなことに狙っていた商品は、Yちゃんが
「私も買います」
と言って、私たちが籠にいれるとなくなった。

「このカレーパンは揚げてないからヘルシーで、こっちの大辛はあっという間に売り切れるの」
と説明すると
「R、大辛好きだから」
と籠に入れ、
「ピロシキもある、これも」

お目当てのパンは過不足なく購入し、ニコニコと店を出たら、どやどやと人が入って来て、奥に走りこんで行った、危ないところであった。

「幸先いいね。せっかくここまで来たからジンギスカン買って帰って、お昼にいかが?」
「いいですねぇ」

可愛い嫁と、欲ばりの姑は次なる目的地に向かう。
果たしてそこは物凄いことになっていた。
いつも休みには混むのだが、まだ開店時間でもないのに駐車場は満杯で、バイクの人たちも屯して待っている。ことほど左様にそこの「ジンギスカン」は有名で美味しいのである。

私たちは、レストランが空くのを待っている人たちを横目に、精肉コーナーに静々と入っていき、私は上ラム1キロ!!
Yちゃんは昼はウチで一緒に食べるから、息子が帰ったときRの分だけあればいい・・・と500グラム購入した。いつでも息子のことを考えていてくれるのが本当にありがたい。

お互いに普段ならこんなに買わないのだが
「せっかく来たので」
というところが似ている。

「私は目的だけ済ますとあとは家がいいタイプなんだけど、どこか行きたいところある?」
と言う私に
「早く帰って、ジンギスカン食べましょう」
と、頼もしい嫁であった。

来た道を戻り、昼前には家に着いた。
「きっとね、Tさん(夫)は 『早かったね』って言うからね」

ただいま~と入っていくと、台所で何かしていて
「早かったね」

2人で顔を見合わせ笑った。

彼はこの前会社の後輩から届いたサクラマスで、フレークを作っていたのだった。これが絶品で、私がしばらくお腹の調子が悪くおかゆで過ごしていたときに、薄いおかゆとサクラマスフレークで命を繋いだのだった。

「さあさあ、ジンギスカン始めようじゃないの」

薫風香る5月である。窓を開け放っても虫はまだ入ってこない。モウモウと匂いも煙も出るが、この時期は全部窓から流れていくので、室内に匂いがこもることもない。

肉と野菜を次々に焼きながら
「何しろ1キロあるからね、いくらでも食べてよ」


ジンギスカン~♪

3人して勢い込んで食べ始める。サクラマスフレークもアツアツご飯に乗せるから、ジンギスカンの肉汁、タレとともにご飯が進んでて仕方がない。昨日までの私の食欲のなさは何だったのか。


ワタシ以外ニンジン嫌いなので採用されず、色が地味になる・・・。

食べるだけ食べたが、1キロの肉は半分ほど残った。
「やっぱり1キロって多いんだねぇ、でも、明日も食べられるイヒヒヒ」

食べては喋り、喋ってはお茶やコーヒーを飲み、デザートはもちろん別腹で、夕方まで過ごした。
Yちゃんは結局、朝からずっと姑宅で過ごしたのである。

「友達にしょっちゅう姑の家に行くなんて、変だって言われるんですよ」
「変でもよろしい、私も変なのだから」
「そうですね、キャハハハハ」

彼女が帰ってから夫がしみじみ言った。

「息子にしたら、自分の母親と嫁さんが仲良くしているのは本当に嬉しいものだよ」

「なにも心掛けてそうしてるわけじゃなくて、私たち、似てるのよ、価値観とか。

ただ、Yちゃんは私と違って落ち着いてるし、賢いと思うよ」

少ししてYちゃんからメールが来た。


 ノコノコおじゃましてすみませんでした^^;とても楽しかったです!
 ジンギスカンはほとんどR一人で食べました!
 あと6枚しかありません(笑) また誘ってください!


ああこのめんこい嫁御を宝と言わずしてなんと言おうか。この子を泣かせるようなことがあったら、いくら我が息子であろうと許さぬぞと、改めて思うのであった。


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