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あの日ザンギを食う、ずっと前の話

1月1日。
社長の帽子が独特なことでお馴染みの某ホテルで2020年のスタートを迎えた。
7月に開催される東京オリンピックを前にして、こけら落としとなるサッカー天皇杯決勝が行われる新国立競技場を見るために、俺は大晦日に北海道を飛び出し東京へと飛んだのだった。

だが、先に宿を確保したものの最後までチケットを獲得する事は出来なかった。
仕方なく、得点が決まり観客の歓声が聞こえてくる新国立競技場の外観を1周見て回り、そのまま神宮外苑を通り明治神宮へと向かった。
明治神宮では人生で経験がない程の大混雑に巻き込まれた。初詣に2時間並ぶなんて田舎者には考えられぬ。

そんなわけで、どこを歩こうが何に乗ろうが常に混雑した世界の中で2020年最初の日を過ごした。
色々大変な時代だけど、今年も騒がしく進む年になるんだろうと思っていた。

この時までは。


世界が一変したのはこの日から約3週間後の話だ。
例のアイツは2019年までに日本、いや、地球上で培われてきた常識と言うものを片っ端から過去のものにしやがった。

前述のオリンピックは1年延期。
それはまだ良い方だ。

いつの間にか常にマスクをする事が当たり前になった。
気が付けば卒業式シーズンだと言うのに子供たちは学校に来ることを禁じられた。
大人ですら家から出ずに仕事を行うようにと言われる始末。

「人が集まる」と言う事を否定される世界が、桜が咲く頃には出来上がっていた。
「テレワーク」
「リモート」
「三密」
「ソーシャルディスタンス」
今まで聞いたことがなかった言葉ばかりがメディアやネット上を駆け巡る。
2020年は世界中が混乱し続けたまま過ぎ去った年だった。



2021年。
相変わらず世界の混乱は続いていた。
ただ、少しずつではあるが世間にはその混乱に対応した新しい概念が生まれていた。

キッチンカーもその一つと言える。

もっとも、キッチンカーというもの自体はコロナ以前の時代に大都市中心に一般化していたものではある。
2021年。俺の地元では急速とも言える勢いでキッチンカー業者が急増し、自治体もイベント開催等で支援したこともあり一気に浸透した。

キッチンカーの利点
・店を構える必要がない(土地に関する費用は減るが当然車に関する費用はかかる)
・自ら移動できるため、お客を求めて戦略的に動くことも可能
・持ち帰りに重点を置いた商売が出来る
・このSNS時代、販売するフードどころか車両のデザインすら「映え」になる

ご時世も相まって利点が多すぎる。
欠点を挙げるとするなら「特に寒冷地で冬場の移動リスクが高い」「車に乗れる人数に限りがあるため、何でもこなせる人材が必要」と言うくらいか(2022年現在は「燃料を筆頭にコスト高騰」と言う問題も出ているが)

話を戻す。
俺も地元のキッチンカーによくお世話になりつつも、やはり外出自粛の流れに従い2021年も不必要な遠出は控えていた。

2022年の春も同じく遠出をしないようにしていた。

あの日が来るまでは。(続く)

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