見出し画像

ネットレーベル&DJカルチャー

Photo(above) by Victor Camilo(CC BY-ND 2.0)
Text from happano journal_j 20200214

昔はLPという現物ディスクを使って、今は多くがパソコン操作によって、すでに録音された楽曲をシームレスにつないだりミックスしたりして、クラブなどのライブ空間でプレイする人、それがDJ。だろうか?

DJに興味をもったのは、『踊ってはいけない国で、踊り続けるために ---風営法問題と社会の変え方 』(磯部涼著、2013年)を読んだとき、その中の寄稿者DJのtomadさんの「僕とマルチネが踊り続けるためにしなければいけないこと」が面白かったから。

tomadさんはマルチネというネットレーベルを2005年、高校生のときに運営し始めた。高校の同級生と音楽をつくっていて、ネットで発表しようと思いついたのが最初のようだ。扱う音楽はダンスミュージックあるいはクラブミュージック。それを2チャンネルのような音楽掲示板で配信していた。掲示板なのでリスナーがリアルタイムでレスポンスを書き込んできて、やっている方もそれで盛り上がったという話だ。当時、音楽を配信して、みんなでレスポンスしあって楽しむ掲示板がいろいろあったそうだ。

ネット上の音楽配信あるいはネットライブに人が集まり、盛り上がるようになってから、オフ会のような形で現実の場で、イベントとしてやろうという流れになっていったらしい。それが2009年のこと。そこからクラブやその他の様々な空間、ときに誰かの家でクラブイベントを続け、多くの人が集まるリアルライブのイベントをオーガナイズするようになる。tomadさんが、風営法の問題を扱った本で寄稿を頼まれたのも、夜、街中でクラブイベントを主催していたことからの依頼だったようだ。ただし彼らがやっていたのは、非商業活動だったので、実際の風営法と関係があったわけではない。

わたしがtomadさんの寄稿に興味をもったのは、いくつかの理由がある。まず彼らがインターネットありきの活動をしていたこと。またその活動が非商業的であったこと。お金儲けのために始めたのではなく、インターネットを表現の場、発表の場、交流の場と捉えて活動を盛り上げていたこと。扱うものが音楽であり、それを規制の外側、つまり著作権を無視したやり方(というか、DJのリミックスはほぼすべてそうなのだが)でやっていたこと。そしてそれぞれのDJが、他人の音楽をミックスすることで自分がアーティストになっていたこと。またクラブイベントに集まってくる人々、あるいは場を提供する人々のライフスタイルが、日本ではあまり聞いたことのないもの(新種のシェアライフ)だったこと。などに興味を引かれた。

インターネットありきの活動、非商業的、ネットを表現の場と捉える、といったことは、葉っぱの坑夫の活動との共通点。カルチャー的にはかなり違うし、こちらが文字ベースの視覚表現であるのに対して、彼らはサウンドベースの聴覚表現。また著作権の考え方、あるいは方法論も違う。しかし基本の姿勢が似ていることで親近感をもった。

また彼らの活動の仕方の面白さ以外に、著作権抜きで音楽を扱うDJスタイルというものにも興味を覚えた。ちなみにクラシック系の音楽でこのタイプのDJというのは聞いたことがない(ん?ひょっとしてある?)。またそのプレイする音楽がDJアーティスト独自のものであるとするなら、そこで聞こえている音楽は作品なのか、あるいはDJは音楽家(作曲家と演奏家の中間のような)なのか、といったことが頭に浮かんだ。

この記事のつづき(残り約5000字)を読む



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?