読書レポート【フィンランドの教育はなぜ世界一なのか】①出産、幼児教育②人生の授業と道徳(著者:岩竹美加子 2019年)


#①【フィンランドで親をやるのは楽だった】

【出産】

・出産は手ぶら、ベビーカー連れは運賃無料

・無痛分娩が普通 ・精神的な支えとなる夫が立ち会う

・父親も家事育児をするのが当然 ・便利な液体ミルク

・ベビーカーそのまま 日本)子育ては大変

------

【幼児保育】

・家族保育やベビーシッターの助け

家族保育:自宅で4人以下まで子どもの世話をする。

3歳未満の子どもを自宅で小学校就学前の子どもを世話する制度、社会保険庁から毎月家庭ケア手当てがある

・朝食、昼食、おやつが出るフィンランドの保育園

・東京の保育園は親が忙しい:お弁当、カバー縫物

・保育園は、幼児教育の重要性から、「生涯学習」の一環

ソーシャルケアから、地方自治体による教育、へ。

問い)

1・親が外で働いているかどうかに限らず、子どもには保育園に行く権利がある

2・保育園で行うのは、保育・遊びか、または、学習・教育か

3・保育園のスタッフにはどういう教育が求められているか

・保育料の無償化、保育士の給与

幼児教育に携わる人の高等教育の必要、資格(教える・養育する・保育する):大学で学んだ教育学学士、応用科学大学で学んだ養育社会学学士、職業学校で学んだ保育士

・1つのグループで8名までが認められるが、現状10名もある

-------

・女性の社会進出は70年代から

1920年:ネウボラ(妊娠中の母体検査・就学前までの育児相談)ドイツ制度モデルに

1930年後半~1940年代:母性保護政策

1944年:妊娠期間中の定期健診の無料

1960年代:中流・上流階級:母性と仕事の両立

1963年:有休を使った産休制度 ※労働者階級の社会主義思想背景

1970年代:女性は家庭で

1980年代:北欧型福祉国家への転換:

保育施設の設置,、男性を含む育休の社会整備

-----

【小学校】

入学式はない、テストもない、服や髪についての校則はない

-国立・私立は全体2%、あとは地方自治体の効率

-小中一貫9年間

-授業時間は日本の半分、1クラス20人満たない、違うことをしている

-テストがない

1人1人の子どもの関心や目指すものは、異なる。子どもが自分らしく発達していくことが大事であって、それはテストで測ることはできない。他の子どもと比較したり、順位を競ったりすることに意味はない。

-6つのカテゴリーに分けられている

1・言葉とインターアクション 2・算数 3・環境・自然の知識・テクノロジー 4・個人・会社・社会(ソーシャルスタディーズ)5・芸術と手仕事 6・健康と活動能力

詳細>-ソーシャルスタディーズ:政治のリテラシー、法律、起業、経済消費活動、ICT,メディアリテラシー、文化=アクティブな市民としての成長を目指す

-宗教:国教、他宗教も教える

-人生観の知識:宗教が扱う問題を宗教的にではなく考える、より広く、ソーシャルスタディーズ・政治学・倫理と関連する

-子ども1人1人にタブレットがある、小学校でプログラミング授業

-休みが多い

・服や髪についての校則はない、禁止された体罰、運動会やクラブ活動ない

・教育方針、教科書検定制度ない

日本)文部科学省→学習指導要領→全国の教育員会・都道府県・国立大学法人・地方公共団体へ提出→学校が従う

フィンランド)教育文化省教育庁→教育計画の根拠(何を教育計画の根拠にするかを示すもの)→地方自治体と学校がそれぞれの教育計画を作成

更新にあたっては、子どもの意見を取り入れる、中央からの教育検定制度もない

-----

【学童保育】

・それほどニーズ高くない(勤務先が近いため)

----------

#②【フィンランド式人生観の授業と道徳】

・日本の道徳

著者意見)日本の道徳は、日常のモラルを越えて、もっと大きな志のことではないか?郷土愛・愛国心は教科書になる。倫理や哲学、政治につながる事柄である。また根底には教育そのものが使役となっている。国が下々に与えるというものではない。本来教育は、学ぶことが権利であり、自主的に学習するもの。

・「人生観」の知識という項目

フィンランドでは、宗教の授業を取らない生徒のために存在している授業。哲学、倫理、ソーシャルスタディーズ、政治、文化、道徳。自立し寛容で、責任と良識ある人へと成長すること・グローバル化し急速に変化する世界での民主主義的なシティズンシップを目的とする。

「人生観の知識」(小学校の教科書4冊のテーマ)※ディスカッション、読み物

1・人生観の知識で学ぶ、友情、異質なことと寛容 一緒に生きること 私と自然

2・良い人生 人生観 倫理的な問題 人間と自然

3・正義と公平 いろいろなライフスタイル 子どもの権利 自然の将来

4・人生観の知識での学習 思想の自由 文化 平等と平和 持続可能な開発

→それぞれの人が持つ世界に関する概念

問)世界はどのようなものか、私たちは何を知ることができるか、幸福になるためにはどう生きたらよいのか

【以下、その科目でのテーマや教科書の項目】

・良い人生

幸せであることと幸福、人生を導くものは何か、価値と規範の意味、人生で実現する価値、責任と自由、私はどんな人になりたいか

・価値と規範の意味

価値:それ自体の価値(愛・幸福・人生はそれ自体が価値)、手段としての価値(価値を得るために使われる)

規範:特定の分野/手段:規則、行動ふるまいの形、命令、許可、義務、法律、規範 ※特定の規範は絶対的なものとせず、相対化する視点がある

(例:女性だけがスカートをはくのが規則ではなるが、すべての文化で守られる慣習ではない)

・道徳(moral)と倫理(ethics)

道徳:善悪、正不正を分け、具体的に人はどう行動すべきかに干渉する。

倫理:行動についての規範ではなく、道徳をより哲学的に考える。

道徳:個人的意見、文化的環境、それを越えた普遍的原則、3つのレベルが存在。子どもの権利と人権は普遍的な原則だとする。

道徳的に育てられた人の特徴>

-他人を尊重する。他人はどう感じるかを理解できる。

-十分な人間関係のスキルがある。

-自分自身の原則を作ることができ、行動できる。

-原則を正しい結論に導くことができる。

-決定ができるよう、物事は十分に知る必要があることを理解。

-正しいことをするために、何をできるかを自分に問う。


・道徳は発達する

叱られたくない→利益ご褒美のため→認められたい→義務感・正義感→市民権と人権へ

・どうやって、私はそれが正しいと判断できるか

自分自身の道徳的価値観とは?欧州哲学史より:古代ギリシャの哲学者アリストテレスは美徳にふれ、近代哲学のカントは他人との立場を思いやるためについて語る。行為の結果の功利主義的発想。

・子どもにはさまざまな権利がある

子どもの権利は大人の義務。子どもの権利は国連で合意し、フィンランドで発行は1991年。自分の権利を知ることで自己肯定感を高めることができ、相手にも同じ権利があることを知り尊重することが義務。

・12歳から始まる様々な権利

-12歳から:自分に関わる公的な決定について、役所や公的機関に意見表明できる。

-15歳から:刑法の対象になる。学習義務を果たした場合、契約を結んでフルタイムで働ける。市民組織を設立できる。

-16歳から:学習義務が終わる。

-17歳から:国から親への児童手当給付が終わる。学生は国の学習支援(給付型奨学金、学習ローン、家賃補助)を申請できる。

-18歳から:法的に成人になる。契約を結べる。両親の許可を得ずに、自分に関することを決定できる。選挙権と普通選挙の被選挙権をうる。国政選挙と国民投票する権利を売る。政治参加をするためには、自分の権利と義務を知り、批判的に考え、何ができるのか、どう参加するのかを知っている必要。結婚できる。男性の兵役義務が始まる。

・権利と義務=ルール、学校では法律が遵守される

・思想と言論の自由

・知るとは何か

・人はどう生きるべきか

-人間の知覚する世界:世界像(宗教、科学)、世界観、人生観

-人権の根拠:人の尊厳:人は人であることによって尊厳を持ち、それが権利の基盤になる。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?