『鳩舎』に立ち寄る日々。

はじめに。


これが初投稿。
正直noteに何かを投稿するつもりは無かったが、折角アカウントを得たのならばという気も一応あった。
とはいえ自分は、新しいノートを手に入れたら1ページ目の書き出し方に何日でも何週間でも躊躇い使わずに積む人間である。これは電子ツールでも同じことだ。最初のいいねには一瞬の迷いも無いが、最初の投稿には題材含めて無数の躊躇いがあった。
もちろん読み専アカウントも無数にあろう。そのひとつになるのが安穏である。誰も咎めないし投稿は必須では無い、云々かんぬん。そこへ飛び込む以下のツイート。

あっ…………感想認めて無いなそういえば。


文芸誌『鳩舎』。創刊号は「花人バース特集」。奥付含めて実に173ページ、絵も小説も漫画も詩も俳句も短歌もエッセイも写真も書も占いもレシピもある。なんでもある。創作物の宝石箱のようにみっしり詰まってその質量たるや。表紙はまさに宝石のように美しいアラレの散りばめ、これが光のかかりかたで花吹雪のように舞う。そして表紙絵が良い。何かもう何もかも良い。

上手い具合に語彙力も失せた。元々あまりに素敵な雑誌であったので、ともかく簡単には終わらせたくない、まとまった感想をどこかで認めたいと思っていたので、どうせならこれを初投稿にしてしまい、躊躇いも一緒に解決してしまおうという魂胆である。


ちなみにこの雑誌、2号も今後発行予定とのこと。
非常に楽しみ。


※     以下ネタバレあり。極力しないようにはしますが、チラ見えする可能性はあります。
※2  1箇所、リンク埋込みと和解できず、URLがそのまま表示されているところがあるかもしれません。リンク自体は機能しているはずです。ご容赦ください。





内容に関して。

1, 中表紙、目次

めちゃくちゃ良い。生物と書いてヒトと読ませる、それは『花人』が『花』であり『人』でもあるが故。
その生態は限りなく植物、中でも名前の通り『花』に近い。しかし肉体は人間と同等のそれで、知能を持ち会話も出来る。世話をせずにいればあっけなくその生を終えてしまう、人の手が入らなければ生きていけないと言うが……。
美しく、奇妙で、妖しいモノたち、確かにこれは『生物(ヒト)』。これを端的に示してある中表紙、もうこれだけでワクワクが止まらない。設定自体が魅力的なのはもちろん、「花人バースってなぁに?」な人が初見しただけでも概要が伝わるだけでなく、くどくなく、詩的で、とにかく良い。
言葉は尽くせば伝わるというものでもない。かといって足りなくてもいけない。非常に良い中表紙。デザインも良い。とにかく良い。良いのかあ、と伝わってくれていれば有難い限り。
BOOTHにてサンプルのPDFをダウンロードできる。そこに、この中表紙はある。



https://twitter.com/hirokoroku/status/1699288313172291796?t=ktomvGTtSVStOWl-tQ0eTQ&s=19



中表紙一枚の扉を抜けて、目次にて道案内を眺めに行く。そしてページをめくり、本文へ入る。
そこには温室がある。
多種多様な草花を生かし続ける無限の温室がある。




2, 本文ざっくり(主に花人バース特集関連)



このnoteをシリーズにして、全作品に感想述べようかと考えたりもした。素敵、素晴らしい、凄い、ももちろん、「こう読めるすごい」「こう読んだすごい」「こういうとこめっちゃ好き」等、一言で感想と言っても色々ある。今回はネタバレも避けたい気持ちがあり、全体の雰囲気からふわっとした物言いをしておくことにする。



花人たちはそれぞれに蠱惑的だ。
純粋なものも妖しいものもそれぞれに、月夜の森へ誘う道のように、甘い香りを漂わせる食虫植物のように。
描かれた人間たちもまた魅力的だ。
愛憎悲喜こもごもの心模様、花人相手や人間相手など様々に、各々の色模様を纏い浮かび上がらせてそこにいる。
一度この温室を訪れれば、いつでもそこで彼ら彼女らの心模様に出会えるというのは非常な贅沢だ。端的に言えば良質な短編集のようなもので、ここでは作品がそれぞれ見事な華なのだ。
この温室に立入るのに、お金は確かに要るけれど、今ならダウンロード版で非常にお手頃。現在(2024/04/02)はダウンロード版なら500円。先のURLでサンプルにまず触れるのも良い。サンプルは0円。
とりあえず一見。



何度立ち入っても良い豊かな温室、花畑。自分は軽率に、(自分も何かの花を育ててみようか)と思ったりした。自分が育てるなら何の花だろう。釣った魚に餌をやるのを忘れるタイプの人間にはよくサボテンなどをオススメされるが、サボテンの花はそのようにして己を買った人間をどう思うのだろうか……などと発想が膨らんでいく。膨らまされる。そしていつの間にか家にサボテンの花人が住んでいる。怖い。良い。何より、可愛い。そしてやっぱり、魅力的にそこに居るのが彼らなのだと、そう思い知らされる。
子細を欠く感想だが、ひとまずこれにて。


3, 巻末(星座占い)



昨今星座占いと言うと、「朝の情報番組の終わり際に流れるアレ」「雑誌の片面ページにコーナー作ってやってるアレ」「ページの下の方に一言ずつコメント書いてあるやつ」「実は占い師がその日の気分で適当書いてるらしい?」など(全て筆者の偏見)だが、この雑誌の星座占いは、当該ページ曰く。

「雑誌の巻末によくある十二星座占い──……の、様子がおかしいようだ。」
(『鳩舎1号』160ページより引用)

実際様子がおかしい。占いと言えば「今日は良いことがあるでしょう、ラッキーアイテムは緑のハチマキ」のようなものではなかったか。だがそんな未来予知めいた占いはここではやっていない。Xでよく流れる、「○○座ってこんな人」を、端的に、詩的に、分かりやすく、美しく書かれたものが、この『鳩舎』1号の星座占いであった。そしてこれが、また、良い。この様子のおかしい占いが見たいために雑誌を買ってもかなりのお釣りが来る。
面白いことに、星座ごとに執筆者が異なっており、各星座の文面にも特色が現れている。文章を星座に差し向けた時の体裁が、それぞれで全く違う。自分は乙女座なのだが、文体に納得感が凄まじかった。そう、乙女座に必要なのは取扱説明書。正義の女神と豊穣の女神を託された乙女座の、時に難儀な点として語られるポイントが美点として書かれた、その書き様の素晴らしさ。
また個人的には天秤座、双子座、水瓶座、魚座の文章が一等好きである。内容は詳しく触れないが、雰囲気と文体と内容が好きだった。それってつまり全てでは?


おわりに


これは感想なのか疑わしい(販促になってないか?)が、ここまでお読みくださった読者のあなたに心より感謝を述べる。よく読んでくださった、ありがとう。どうか『鳩舎』も読んでください。
この『鳩舎』1号、冊子版は既に完売で入手できないが、先にも記した通り、サンプルとダウンロード版がBOOTHで入手可能になっている。まだ触れたことが無ければ是非とも、それぞれのリンクへ立ち寄ってみて欲しい。

最後に、執筆者、編集者、発行者、関わる全ての方へ感謝を。手に取れて良かった。ありがとうございます。2号も心待ちにしています。

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