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⑤故人の長女で喪主の姉

人が亡くなって、ある程度の規模のお通夜やお葬式をしようとするとなかなか決めることがたくさんある。
コロナ禍とはいえお通夜には300人規模の会葬者を見込んだ。
葬儀は親族のみだ。

たくさんの決めなければならないことを「今すぐ」とか「今日中」とか「通夜の朝までに」とか期限にあわせて決めていかなければならない。

祭壇をどうするか。花の色や種類。棺の種類や色。遺影の写真。エントランスに飾る父の思い出の品探し。
香典返しの内容や会葬礼状の内容。通夜弁当の内容。
斎場での助六寿司の数や、告別式の引出物の内容、精進落としの料理の内容や数。

父の死に纏わる一連のセレモニーは喪主である弟に決定権があるが、個人の妻であり施主(お金の出処もこちら)である母の意向は当然配慮せねばならない。
そして故人の長女であるわたしの意向なんぞ無視してくれていいのだが、生まれながらに家庭内フィクサー(笑)なためになぜが最後に「これでいい?」と最後の決断のお鉢が回ってくる。
フィクサーと言ってもいわゆる調整弁的立ち回りも兼ねているため、母と弟の顔色を見ながら決めていくのだからなかなか神経を使う。

ひとつだけわがままを言った。
会葬礼状に、父、弟、母の名前が載っているのに私だけ「親戚一同」にまとめられたら寂しいじゃん、と差出人欄には故人の長女、としてわたしの名前もいれてもらった。
フィクサーなのだからこれくらいは許されるだろう。
「お前はほんとに出たがりだな(笑)」
弟が笑った。


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