2022年の詩

詩(2022年)


音のたつ夜

梢まで
さへぎらふ樹のなく
また明るひ
灯の陰にあつて
とても遥かな夢と
その夢へ広がる川を
目のとほひ
やうやくよく見へてくる
夜へ
耳をそばだててゐる
枝のすゑまで
たはみ 葉と
樹のさやに揺れ
はれて優しひ
そのあをぐろひ
樹のうへに
おほきひ空を 空の月を
眺め 目に耳をそばだててゐる 愛しみつつ

   (2022年1月17日 Twitter)


あなたの
まなざしと言ふ
そのまなざしに身のこゑの呼ばれるやうな
ひとつの
野に笑ふ花であり
花を愛ほしむ花の
互ひに語らふ花と花の
身のこころへ届き
それを掬ひたくなるやうな
まなざしと言ふ
あなたがわたしを呼ぶこゑと
話し合ふ気持ちでわたしも
あなたの目を見てゐる
鳥に似て
さざなむほどの鳥らしひその目を
見て あなたのこゑとこころに
さはつてみたく
そつと椅子に座つてゐる

  (2022年1月17日 Twitter)


夜の歌より

雨が紐の垂れる
紐で布を縫ひ合はす
紐の細ひ
音のかはきの近くへ
寄せ その
紐の垂れる
音を雨に濡らしてゐる
紙があり
紙のうへを
身の内側の星の漂ふ
その星を手と
指先の紐より
色づけ 潜め
紙さへ布に
変へるくらひ
雨が降り 降り頻り
紐のかはひた
こゑの行き交ふ夜の暗さです

   (2022年1月28日 Twitter)


その日のほとりより

日の光の明るく
ほど近ひ
窓よりここと
此所から見てとても高ひ
空へ
あまり明るく光の
さざなんでゐる
その色の
手ざはりは
幽かに黄色く
さやに
やはらかひため
風景を明るませるこの
日の在り方から
けふを
春の近くの日と時と知り
あるひは冬を
冬の命の寂しひこゑを 尊び 恐れ 惜しんだ

   (2022年2月25日 Twitter)


あこがれ

時を心へ
やうやくその心の手より
触れ得て
心波立つ思ひもしつつ
しかし宵の頃の
日はやはらかく
こゑを身へ
繰り返し
たゆたはすつど
日の薫る
この時の経つ
今は寂しひ
時の
内のひとの瞳は
幽かに頬を
瀬のやうに
青く撫で 今を
やはり寂しんでゐてほしひ

   (2022年2月25日 Twitter)


礫に寄せて

迷ふとなく
わづかにおかしな心より
おかしひと思ふ
官能をこころたづさへ
街の
東京と言ふ
道の波のやうに連なる此所の
余りしづかな往来を
同じく歩ひてゐた
しづかでありつつ
空へ広がる
こゑは寂しひ
寂しく騒々しひ
往来に
ゐた
三月十一日も あるひはこの灰色の
二月二四日の私も
こころ漂ふ東京にゐた おかしくあつた……

   (2022年3月11日 Twitter)


花の在る道

足取りはさも
そこにあなたの在ることを
在ると言ふ
その
おののく心まで
やはらげるやうであり
斜陽を
およそ寂しく
ほほえますやうであり
おまへは私を
だう思つたのか
その足取りの
軽やかさを失はなひまま
そつと遠ざかつた
けふの この往来の
春らしひと思はせる
一つの命と 一つの心との出会ひを
たふとひと言ふならあなたは一輪の花である

   (2022年3月11日 Twitter)


春の別れ

思ふ…、と言ふ
そのかがよふ
瞳へ手で
思ひさへ浚ふやう
思ふ…、と
囁かれた気がした……
夕暮れの
お寺のほとりの
(墓所で…、
風が
思はう心へさはり
なずみ 思ひを
浚つた時に
その風の
内の
何もなひ優しひ指より
墓所の片はらの木立ちを思ふ
……、思ひがあつたと 風にこころ濡らされた

   (2022年3月25日 Twitter)


こゑを叩く

雨のかうして降つてゐる
かうしてしづかに
水の
波形の
形のなさを耳より両の目へ
目の想像する暗ひ外の空間へ
夜と言ふ
濡れた空気の充ちる時へ
さざなませ
しぶき また湿らし 瀬々らぐやう
笑ひ あるひはその
形のなさでもつてほほえみ
この
窓辺にゐて耳を澄ます身へも
それが雨であるとわかるやう
降つてゐる
あまり豊かなこゑであるために
所在さへ失くしたやうに降る様子が哀しひ

(2022年4月22日 Twitter)


ちひさなこゑの反響より

けふはどのやうにか
強ひと思ふ
……、ことの在る
風や その風の力の量に
そよぎ
笑ふやうな(あたたかひ……、
花のほとりの通りにゐてしまつた
風の遠のく
道のだひぶ続く向かうに
昨日は
ここへ今在るやうな
かういふけふでなかつたと
寂しむ思ひの
ある気がしてゐる
なべてその
蒼ひ葉と 優しひ草に囲まれて
風に体を震へさせ
あるひは風を惜しんでゐる 花のためらしひ

(2022年4月22日 Twitter)


焦燥

とほひ……、と言ふ
そのこゑを発する唇の
とほさとそのとほひ往来に近ひ言葉の
手の指と
胸の(湖の……、
波の形に
こゑそのものを湿らすやう
降り しぶき そよぎ
しづかにやんで去つてゆく
雨の降り方と
その震へる水量とを合はせるけふに
となり耳を傾けて
雨音を寂しんでゐる
しづく……、と言ふより
したたり あるひはこはく
時めく雨の降る様子へ
その心優しく しかし表へ
こゑを表すことの難しひ しどけなさに触れつつ

   (2022年5月27日 Twitter)


記憶

目(…と目…、)のほとりに漂ふ
その目(…と目…、)のとほく
(程近ひ…、)間の
目(…の深ひまろみ…、)に至る奥行きを
(目に…、)
憶へてゐた……
ほほえみ(だつたらうか)(あるひは)
夢の笑まひの
笑みから笑みへ
至るとほり道を行くやうに
目(…と目…、)のほとりの道路を
(目の在り様を…、)
憶へやうと歩く片はらの
(片へに漂ふ……)
人とともに
サッとかすめ取り 手許へ置かうとし 又は
盗み そして(日差しの内の心へ……、)
そつと返した 人と 人らのゐた晩春の今へ

   (2022年5月27日 Twitter)


憧憬

けふを
けふと言ふけふらしひと
人伝てに
あたかも日と風と草の湿つた今とを
思ふやう
ここへけふの
手ざはりとしか言ひやうのなひ
春の
やつと調ふ
こゑの明るく恥じらふ様子を
綴り 憶へ 何をか願ひ
そしてそのけふは
ひと日ののちにまたけふかも知れなひやうな
儚ひ思ひでゐる
うるはしひと言はば
その無窮のけふは
人伝てに
ひとの在るしづけさのまま 寂しく美はしひ

   (2022年5月27日 Twitter)


対話

よふけ……、草のしづか(であり……、
その草と草の鋭ひならび方の
ほとり(の夜……、へ
夜に霞み 充ち 濡らして広がる
よふけ……、の雨が
とても寂しく降つてゐる
蒼ひ空より
土のうへ……、あるひは
土の片はらの草の穂の立つ
濡れたかほりのうへへ
空の(余程の……、蒼さを
思はせるくらひ
雨音のこゑの響き 下垂り
私の 夢(……、のやうな心……、の周りを
湿らし ずつと降つてゐる
雨が時と同じやうに
降つては生まれ 生まれては漂ふ 夜らしひ

   (2022年6月6日 Twitter)


わづらふといふこと

懊悩しつつ 思ふ…、と言ふ(夢の…、
悶へる思ひそのものであるやうな…、
夢…、と言はば
この暮らしの生の中程に留まり
聞こへてくるしづかな騒音や
目に
明るんでゐる(この夜らしひ…、
灯の儚く滅ぶ光景や
息を吸ひ 吸ふままの力で吐き 吐ひては
自づから
それが私の身の片はらと内側にある息として
夢…、をしたためる
(かういつた…、
夢の暮らしの風景そのものへ
移ろふやうな(香り…、に近ひ気がしてゐる
私の目を
直ぐと見 あるひはこころ哀しさを湛へ
そのひとの懊悩の内に見へる目も夢へと近ひ

   (2022年6月12日 Twitter)


想ふことより

思へば こゑ……、らしひこゑ……、たちの
ずつと風のやうに充ち
烈火のやうに身のほとりを行き
時に
花のやうに香ぐはしひ
香ぐはしく……、穏やかである
さういふ
こゑの末まで高く 野と広ごり 川と同じく
閑かである ひと頃へ
耳を傾けたり 私もこゑを発したり
その言葉の往来するとほりを
歩ひてゐたと思ふ
この……、思ふと言ふ
ひとりばかりの生の造りのうへに
こゑのなく 又 あつても静かに消へる
生の片はらの生……、と身の心そのものとを
結ぶ隧道のあつたと言はうか
字を綴り こゑを読み 今も詩を書ひてゐる

   (2022年6月17日 Twitter)


日の習ひ

風の吹く……、吹き さはぎ 渡らうと
また どこと言ふこともなく
目にだうしても見へなひ音と
時の経ち方 遥かなそのざはめき方より
夜ごと 窓を開ひてゐると
風の……、戦ぐ様子の
聴こへてくる
聴こへるつど
何ともなく 風のそこへ吹くことに
さういふ
目に映らなひ風景の
とほひ……、恐らくとほひ
幻の片はらのやうな空の近くに吹くことへ
その風を
妻恋ふ思ひで鳴き交はす
虫らの窓辺へ
ゐる気がしてくる
虫らはけふも梅雨の草陰に濡れ 静かでゐる

   (2022年6月17日 Twitter)


旅の草々

思ひ(わづらひ……、)つつ 樹の立ち並び
あまり濃やかに繁る樹の片へを
歩き廻り 折ふしに樹のもとの小さな塀や
その一つの樹の周りへ
巡らされた石垣のうへに
休み 少し水を飲んでは
又 思ふ(わづらふ……、)日の
旅程の(やうな……、)時の
うねる (それともさざなみ、とほのき、
寄せて来る……、) 時と言ふ程の
けふひと日の内ばかりに
ゐたやうに思ふ
思ふなら 昨日もそのやうに在り
樹と風と草も同じく佇立し
昨日ともけふとも言ひがたひ
時の縁(に似たまろひこころ……、)の脇を
歩き 心を愛しみ 心(と体……、)の
空洞を寂しんでゐたと思ふ 日記をするなら

   (2022年7月2日 Twitter)




ある晩 ある人をとふ ある夜更け
かやうに風の吹く 風の流れる
夜に似てゐる夜に
ありとある風のほとりで
人をたづね 人の心の戸を叩く
夜もすがら
ある人をおとなふ 数の少なひ
言葉より 何をか話し合ふ
人へ 風の風量をとひ
だういふ風に吹かれると 風が在るかと
考へる さうして言葉を手にたづさへ
夜の中空に こゑを置くやう
人に言ひ 別れて歩き 夜道を帰る
時のある道路を
やうやくこれを けふの 夜のとほりかと
心に何も思ふこともなひまま
今を夜かと思ひつつ
こゑを両手に握つたり離したり したと思ふ

   (2022年7月27日 Twitter)


幽けさ

夜気の冴へ 夜の微かな空の重量と
空のほとり(らしひこころ……、)を漂ふ
秋の匂ひ(のやうな風……、)に
冴へ 余り涼しく冴へ渡り
夜気のかほる(夜気の周りの空間……、)の
儚ひ暗さと明るさと 互ひに亡ぶ
時と所を 寂しく(目と目の内の心で……、
心と言ふ夢の川の霧のやうな場所で……、)
摑む もしくは拾ふ 又は掬ひ それら
時刻の見せる夜間(夜と夜の狭間……、)を
浚ふ手さへまた
冴へてゐるらしひ さう思へてゐる
樹と 樹の脚元に立つ草と 草の隣の道に
これら夜の輝き(としか言ひ得なひ
風(決して吹かなひ夜風だらうか……、)の
余程ふかひ風合ひ……、)は
どのやうにこの時刻や場所を思はせるだらう
秘めやかに 皆 眠りつつ息吹するだらうか

   (2022年7月28日 Twitter)


日の片はらにて

わたくしの心のまはりの(畔のやうな……、
草の(あるひはかがよふ 濡れた道路を
あなたと
あなたの暮らしの(在るであらう心の芯の
淵に似ておとなしく 湿つてをり
余りこはひ気丈さとを
何も言はずに身へ伴はせ
あなたは私を煙たさうに見た
見つつ 又 こゑを発してゐる(気のする
その(幻のやうな……、
心ばかりの深くのどかな(川……、
もしくは田と 野と 林と 湖のほとりへ
やはり草の(並ぶ棚引き方より
思惟とも官能とも言ひ切れず
ただそれを智恵と言ふことの出来さうな
あなたはあなたの心でもつて
歩ひて行つてしまひさうだつた
夏と言はば時に こゑの空へ漂ひさうに思ふ

   (2022年7月28日 Twitter)


家居と歩行

こゑを読み くりかへし こゑを
耳に憶へ その聴こへたこゑを手に携へ
手にて象り 形らしひこゑをテーブルに置き
椅子やあるひはいぐさのうへに
腰かけながら こゑに耳を澄ましてゐる
こゑは樹に
樹のまはりの山や 山のしづかな胸の内の
目に映らなひ おほきな空と
空を支へる草の穂たちに似てをり
そしてまた
どこと言ふことのなひ街の
明滅する夜気や 閉じた門扉や
何も言はずしたたかに延びる舗装からも
聴こへて来てゐる その道では
虫が鳴ひたり 人の歩ひてゐることもあり
音のなく 寂しひ程しめやかに
雨の降るのみである時もある
さうしてこゑは造形され 漂ひ 呼吸される

   (2022年7月28日 Twitter)


あはれみ

どのやうにか……、
こころにわづらはしひ思ひの在り、
余り重苦しく、
さうかと思へばこころもいづくとなく震へ、
何と言つたら言ひ表せるかわからなひ、
切なひ感情があつた……
道の脇や、
樹の中途や、
健気な花のもとからも、
夏の終はりもまう近ひことを考へさせる、
蝶や 蝉や 蜂や 夜には
鈴虫もゐるらしひ、
こゑと姿の空へ往来する、
寂しく また愛ほしさの
暑ひ風の内に濃やかな一日だつたためなのか、
思はうとしても分からなひ……
ひと日をかへりみて
夜風に耳を傾けつつ 筆をとればさう思へる

   (2022年8月19日 Twitter)


措定

虫のゐて……、草陰にきつと虫のゐて、
なにか考へ なにか思ひ なにか識り
なにか感じるやう
こゑをその草のほとりへ
沿はせてゐる 草は
草の姿をとほして
葉の細ひ尖端を空へ向かはせ
しづかにそよひでゐるらしひ
雨と言はうか
濡れた濃かひ滴の落ちる……、それとも舞ふ
仮に
夏と言ふ 夜のかぼそひ涼気のある
野のまはりは
いつにも増して湿つてゐた
虫の……、虫と草の……、
こゑのふかひ……、そのこゑの表す
物思ひをなぞつてうたふ
その夜を何と言はう どのやうに哀しまうか

   (2022年8月19日 Twitter)


踊り(あるいは舞ひ……

朝の明けやう時の頃……、
時の中心のまだ眠り続ける夢の心のほとりに、
その心のおもてを漂ふ
幾つかのさざ波(のやうな光といふ現象)を
かき分けて、
だうもかき分けつつ あなたはしかし、
いまだ静かにこの朝の
未明の夢の内側にゐた。
鳥もそのこゑを暑さにしのばせ、
虫はいつか草の裏側に震へてをり、
時の
(かやうな時ばかりの表にする
軸のやうなこころ……、
それとも時の川の岸辺と言はうか……)
その時の……、
明るひ夢のふところにゐて、
夢と夢とをつなひで重なる(夢を)畳んだ
窓辺で静かにあなたは寝息をたててゐた……。

   (2022年9月1日 Twitter)


寂しさ

つくゑのさも頑なに置かれて在り
つくゑの洋く風のよくとほる平な面に
秋をかうして知らせ
手と体を風の波打つ境のほとりと
時といふ
さざなむあたたかさの内側へ
内側の時の凍へる切なさへ
また秋を
教へるやうに寄せてくる
虫のこゑが
さつきから音もなく届ひてきてゐる
つくゑがかういふ夢をあらため
夢を芽生む夢のよはひ管に似た景色を胸へ
ぬくもらせ 静かに引ひて
そのつくゑの手前と 洋く面を
濡らし 雪ぐ 虫の数多ひこゑばかり
反響させて時めかすらしひ
在ることを在ると何をか物語りする前へ座る

   (2022年9月9日 Twitter)


叢のとなり

秋の秋としか憶へがたひ時や季の現す秋と
その秋に程近ひ秋のうへの秋の片はらの
秋のやうな所を
こころをさはがせながら 騒ぐ心の音や聲に
音や聲の視る時間の紅に
耳を傾けてゐたと思ふ
秋をあへて
秋の日の彩りのやはらぎ 又は
とほのひてゆく 色の深味の増さうとする
その前に
秋を訪ふ思ひに似てゐる
木のかぼそく枯れ 草の黄金にたほれ
葉は姿を小さくかはひてしまふ時や季の前の
秋の秋にいたる朝と夜の境を訪ひ
こころのさはぐ
さはぐ内側に佇つ誠実さを
視たくなつて来たのだらうか
今は又 秋が恋しく 秋も此所から後退さる

   (2022年9月17日 Twitter)


草の麓

よこがほは軒のもとにていづくへ向きつつ
秋めくこゑのうち騒ぐ
こころの寄せまた離る何程かの
夢のあはひを冷めてとほらふ
こゑのかはひた色のもみぢしてゆく
色と色とを重ねるこころの虚ろさを
秘め哀しむらしひをみなごのゐる
いづくには
めをぬく音声のせはしなさに
多ひ軒庇と華やぐをりの
いづくともなく浮き沈みする
をのをのさすらひ集ふこゑを聴き発てる姿の
思ふまま流れる様子のあり
またそれも哀しく切ながるやう
よこがほを此所よりとほのけてゐる
遠くを見何をか見かけ思ひの狂ひ
寂しまうとこしへのむなしさを
同じく装ひもみぢする樹のもとへ秋の静もる

   (2022年9月30日 Twitter)


亡び

つくゑよりもやふ霞の落ちつかなひやう
さはぐこころの俄に起ち
戸へわざを畳みかけ風ばかり
凪ぐ様子より身の程と
朧に身の周りをおどろかせる
こゑを聴きつつ霞む姿の霧に似て
冴へて夜の冷めてゆくいをりにひとり
なにをかしたためてゐる
灯もはかなげにうち静もり
夢の片へにたつ波の
いまだそのもとは騒がしひ
訪ひ離る表を空に
淵はこゑに澄むやうもやひつつ聴き入り
わづらはしひ憶への
しかしつくゑのこはばる上へ
悩ましく恐ろしひ凪ぐ浜のうしをを
思はせる静けさのある
夜も更けの身の程に驚き伝ふ思ひに又哀しむ

   (2022年10月1日 Twitter)


ひと時

口をつぐんで 耳に手を添え
口づから 胸の森へも手を差出し
昨日と同じ今日の日や雨や鳥の鳴き声の中
何も思わず いま生まれる程の
静かさを何と語ればいいだろう
その胸のふと思いたつ言葉の明るさに
どのような今日ひと日を側へ添えれば
言葉はより安らぐだろう

   (2022月10月2日 Twitter)


息づかひ

ひねもすたぎち雨もよひする
音の色もたへだへ色を寂しませ
玉かしぐこゑも静もり
戸よりたがへ
草の波さへ時を香らすけふの表に
音ほどありつつ失ひつつ
思ひは空のこゑのうちそよぐ
夢の片へにたつ夢を
いをりにて聴くさはがしさにこころ悩み
恥じらひつつ日をしたたむる
時をたどり
同じく音の色の時ほどかげらふ表にて
またしぶく寂しさを
秋めける日のおもしろさに
こころを交はし
ほろぶやうおぼへてなほ哀しひ
時も
華やぎ音を落ち着かせ色も干ひてしまふらし

   (2022年10月8日 Twitter)




さういふことばのあらうほど
思ひながら耳をかたむけ
さもことばを縁どらうとおぼへると
ややこころも重たく
ことばを失ふやうな心地のことばを湛へる程
あらうことよりなからうことばの
どことなく
聴こへては体のうへへ触れる気のしてゐる
さつきより
音と言つて雨を夜の長ひ時のかよふ
こゑよりとほひ耳元へ
雨を雨らしひ穏やかさとして
さはつてきてはこゑをまたたちのかせ
秋雨の
身のしどけなさを思はせてくれる
ことばさへ
あるくらひその在り様に
耳を傾けるといふ態度を得てしまふ程涼しひ

   (2022年10月14日 Twitter)


暮れるまへ

さう思ふまで思ひをつのらせ
思ふことよりやはり思ひ
その思ひを
口づから思ふまま思へ
こころを悩ましく渡るので
思ひを身と身よりその身へおのづから在る
こころの許へ
思ふといふこゑのまま聴く気のしてゐる
寄せては満ち
引くとなく離れ
離れると又その身の動きによつてこゑになり
こゑになればうたふやうで
日の明るさにも夜の樹の陰の濃さにも
似るらしひ思ひの深さが
あるひは身を含めこころの許へ
暮らしの内のこゑの発つ
思ふままの思へとしてさざなむらしひ
日の暮れ方に言葉を思へ詩を書ひてゐる

   (2022年10月30日 Twitter)


形式

灯のもとを灯の明るます物の形を
色の灯へ漂ふやうに見へて
形の周りへ落ち着き
その形より色の肌の風合ひを象られてゐつつ
しかし漂ふ
灯のうへへ灯の発てる
明るさを追ふやうに明るむ灯のもとに
やはり物の机の上に静かでゐる
さもくりかへし
昨日より置かれてをり
けふもまた
物を象る色の漂ふ
あるひは物の何も言はず在る事を
くりかへすといふ動きより
この夜の灯の発てる灯の
明るさを思へる身の周りや身の内に
身の色も漂ふか分からなひのだと思へさせて
考へさせる 此れが読むと言ふことならば

   (2022年11月13日 Twitter)


過程

さうあれば果たして問ふ
問ふほどに何をか募る
また、手の動き、時に歩行する
鳥のうたひ、風の笑ひ、音と
音の隙間の音の
音らしひ音を失つた何かの音の
ある気がする
さうしてけふの
朝とも昼とも夕べとも
いづれか時の内の
その時へ居合はせた
目の前へ咲く花と芽生く草と風のなひ風へ
問ふこゑと、問はれるこゑと
その中空にこゑさへなく咲ひてゐる花を
視て、又は、聴く気のする
気のする内は、それは心ではなひかも知れず
ふたたび問ふ
さうより他に、したためる日のこゑを忘れる

   (2022年11月19日 Twitter)




歩を辿る歩がある 歩のとなり
歩を辿ると見へる歩が
歩のうへへ歩を
愛しげに かなしげと言はうか
何か
こころ思ひ起こさせるやう
情のあり さも情を
自づから問ひ返してゐる足取りで
歩くと見へるひとの
雨のうち 愛しげに
歩のうへへ歩を辿り歩ひてゐた
そのやうに歩へ
歩を添へるとも見へたのは
雨のまぼろしする時の
かやうに今といふ今らしひ
こゑのとなりへ発つこゑの
こゑからこゑへ耳を傾けつつその胸へ
何も思はずに歩に歩を畳む私のゐた為だらう

   (2022年12月6日 Twitter)

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