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詩44 あはれみ/措定

あはれみ

どのやうにか……、
こころにわづらはしひ思ひの在り、
余り重苦しく、
さうかと思へばこころもいづくとなく震へ、
何と言つたら言ひ表せるかわからなひ、
切なひ感情があつた……
道の脇や、
樹の中途や、
健気な花のもとからも、
夏の終はりもまう近ひことを考へさせる、
蝶や 蝉や 蜂や 夜には
鈴虫もゐるらしひ、
こゑと姿の空へ往来する、
寂しく また愛ほしさの
暑ひ風の内に濃やかな一日だつたためなのか、
思はうとしても分からなひ……
ひと日をかへりみて
夜風に耳を傾けつつ 筆をとればさう思へる

/小倉信夫

#愛の礫


措定

虫のゐて……、草陰にきつと虫のゐて、
なにか考へ なにか思ひ なにか識り
なにか感じるやう
こゑをその草のほとりへ
沿はせてゐる 草は
草の姿をとほして
葉の細ひ尖端を空へ向かはせ
しづかにそよひでゐるらしひ
雨と言はうか
濡れた濃かひ滴の落ちる……、それとも舞ふ
仮に
夏と言ふ 夜のかぼそひ涼気のある
野のまはりは
いつにも増して湿つてゐた
虫の……、虫と草の……、
こゑのふかひ……、そのこゑの表す
物思ひをなぞつてうたふ
その夜を何と言はう どのやうに哀しまうか

/小倉信夫

#愛の礫



2022年8月19日に、詩人の和合亮一さんが 関わっておられる Twitter の企画、愛の礫に参加しました。そこに投稿した詩です。

 ※ 愛の礫 = 国際芸術祭「あいち2022」に連動して行われている詩の投稿企画です。
 ※愛の礫のハッシュタグを付けて投稿された詩は「あいち2022」の和合亮一ブースにあるモニターに流れて行きます。
 ※題を付しました。


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