詩82 秋の口
秋の口
思ふことより日を手に揃へ
その日の日や時の折合ふ量の豊かさばかり
身のまはりを囲ふ静かさと
身の内の心のうるささまで数へて
思ふことを疑ふゆゑさへ失ふやうに
身のまはりへも内側へも覚へのなひ思ひを
時といふ時の暮れ方として
詩のうへより手前へ連ねたくてゐた
ただ聴こへるまでの
聴くことの身と身を分ける聞き思へ方は
こゑの発ち
発つこゑのまた指の折合ふ日の許へ返り
ふたたびくらひ明るみながら
窓の辺に
時めく宵の恋しさのあるらしひことを
暮れ方の余りの時や日の量の多さから考へて
秋もそろそろ心を開き
ゆゑもなく誰とも言はず枯れて行かうとする
/小倉信夫
2023年9月14日
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