詩85 底冷へ
底冷へ
このやうにして山なみのある
山なみを見て翌る日の
日の光を整ふともうるさひとも考へ
昨日のわたくしより
さう明るんでゐたと思へられて
それを仄かに明るくなひと
こゑもなく拒んでしまふ
光はさらに光の内にけふの日のあることを
うとましく考へさせてきて
それによりなほ
山容のわたくしの身の片はらに置かれ
その肌のなめらかであり
風のたはみ色気づくのを
さも深ひ過去や手ざはりの空しひやうな
わたくしの目の前と背の後ろにゐる私の
考へることを諦めてゐる姿と影を
その朝の日の光の
とどこほりなひ束の間の内に見る気のする
/小倉信夫
2023年10月19日
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