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詩84 話す事

話す事

日が暮れてより時の経つて
安らかに思ほへる官能の
灯の明るさまで
かうまでとほく物の表を縁どるのを
昼の日の内の
昨日まで失はれ翌る日にはまたあらはれ
時のとなりには
同じく彩りの重なつて行くやうな
けふばかりの枯れたやぶや
色の変わつた樹の葉や丈のなへてきた草や
日の光まで
昨日といふ所のあつたらしひと考へさせる
景色や物の姿ばかり思ひ出されて
さながら時を秋と言ひたくなつてしまふ
ひと時の
暮れ方の内に秘めて行き
仕舞ふと言ふ仕草に近ひ身の動きで
秋らしく草と草の集ふ所の跡地へと安みたひ

/小倉信夫

2023年10月11日

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