見出し画像

詩21 また来やう季の頃/時と時の在る所に

また来やう季の頃

やうやく 日の
こはくなつて来た、
春のおはりの往来を
ゆつくり歩ひて
ゐた
差しては
少しずつ岩や土へ
ぶつかり
また差してくる
日の光は
暖かく、
雨と陽光を
夜の
影の積もつた道へ
とても
明るひ
そろそろ虫もさざなまう春だ
耳を澄ませば静かに聴こへる

/小倉信夫


時と時の在る所に

あなたを
あなた(…、と
呼ばう時と
その
束の間の時の在つた
所は
まう風の
夢と心の内へ
そつと眠つてゐるだらうか
あなたへ
幻の
霞のさなかの
春や
秋のやうな
あなたへ
心色づかう
新しひ六月の風景の
そのどこかにゐる霞にさはつてみたひ

/小倉信夫


2021年6月4日に、詩人の和合亮一さんが Twitter で行った企画、詩の礫「Ladder」に参加しました。そこに投稿した詩2篇です。

 ※ Ladder =梯子
 ※新型コロナウイルス感染症に惹起された現況を「有事」と考えて創作物をツイートする企画です。
 ※半角を全角に修正しました。
 ※題を付しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?