詩88 かなしさ
かなしさ
日のことを終ふまで
此所を日差しの背景より
色の日によつて手のほとりまで色合ひの見へ
空の芯と言はうか
芯のまろさと言はうか
寄る辺なひかはひらしさに似た思ひを
目の前へ光と色と音のあつて
飽くまでと言はば
絶へず此の明るさの背の表の川と
川の波音のやうな騒がしさに
音も色も光もなく
ただ部屋のここにある
あつてその部屋の片はらにゐると言ふ
さういつた思ひを得て
得つつまた空のほとほと空しひ芯のまはりへ
うちやつてしまふ
宵ちかくまだやかましさの残る頃
空といふ空の色のあせて遠離るのを口惜しむ
/小倉信夫
2023年12月2日
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