2020年の瀬より
目を覚まして、まずいつもと同じ食事を摂り、その日仕事があれば電車に乗って仕事へ向かい、電車の中ではスマホを見ていて、昼食時にもスマホを見たり(あるいは眠ったりし)、仕事をして、帰りの電車の中でもまたスマホを開き、帰りには少し買い物をして家に帰る一日を、何度となく繰り返していた一年でした。
スマホを見ながら、家族や知り合いの安否のことを考えたり、世の中で起きていることを調べたり、あるいはSNSを使ってソーシャルメディアの提供する(簡易)ブログで何かをつぶやいたり、時には買い物をして、メールを送り、ポイントを得ることもあればアプリの提供する情報を何とない心で読むことも、また何度となくありました。
その日が仕事のない一日だったら、本屋さんをぶらついたり、適当な昼食を摂ったり、スーパーで食材を買い込んだり、少し遠出をして、遠出をしなければわからないことを知ろうとしたり何かを買ったり、あるいはやはりスマホばかり見ていたり、仕事がなければ探したりする日もまた、幾たびとなくありました。
夜も更けてきたら、しづかに詩を書き始める日々は、心の部屋の電灯のような明るさで、その日とその日から数えて次の詩を書く日まで明るく灯り、夜になるとその明かりをつけて、昼間には日の明るさのもとに詩の文字を照らす一日も、幾たびとなくあり、そしていまこの時でもあります。
本を読み、本を手に取る喜びを味わい、また本を読むことの難しいその時に苦しんだ日も、幾たびとなくありました。
まるでこのひと年が、いつもと変わらない質量と速度と目の前へ現れる姿形とでもって過ぎたように書きましたが、これらの生活のほとんど全てに新型コロナ感染症の引き起こしたパンデミックが影を落としています。
「本の栞」という連載を始め、「詩の礫」という企画に参加し、また日本現代詩人会投稿欄には作品が掲載され、増補私家版『生きているから見つめる』の制作を進め、ブログでは「書店幻想」というアイディアの譜面を書きました。
振り返ると、私は私の創作を読んでくれる皆様に支えられて、上に書いた日常のリズムがあったのだとわかります。混乱のさなかに生を記し、その生をしづかに辿ってくれる読者がいたことが、私には一番嬉しいことです。
この一年作品を読んでくださった読者の皆様とともに、私の詩を選んでくださった皆様、企画をこしらえてくださった皆様に、深く感謝いたします。そして、来年の私の創作に期待を寄せてくれている(と私が信じている)皆様へも、感謝申し上げます。
ありがとう。皆さんもどうぞ健康にお気をつけて、お元気でいらしてください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。更新はまだもう少し続きますが、こちらを年末のご挨拶といたします。よいお年をお迎えください。
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