詩20 夢の野のすゑ

夢の野のすゑ

窓辺より
てうど
かういふ
樹や風や曇り空の
明るく笑ふ
こゑがひかつて聴こへてゐます
窓へ耳を傾げると
川のあをい色合ひを
ささめかして
誰か往来を歩ひてをり
色とりどりの
鳥の鳴くけふは
だうもなつかしひひと日です
しどけなひ
風の吹く音もやはらかく
寂かに座椅子に座つてゐるひとの
心のさなかに在る森を
がうがう
うならせてをります
まう少し
暮れやう春のほとりの方へ
夢の小指でそつとさはり
こゑと言ふこゑを
そぞろに身へたゆたはせる
なべて
この世の現象よ
あなたはどこへ行つたのか


/小倉信夫



※日本現代詩人会 詩投稿欄 第20期(2021年1-3月)投稿作です。
 こちらへ投稿します。
 選者の皆様、ご多忙の中、お読みいただきありがとうございました。
 また入選された皆様、おめでとうございます。

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