詩93 射る
射る
わたくしはそれに心を添へ
うべなはず失はず
忘れるといふことよりは遠くへ設へ
身のまはりにはひとつまで砕けてあり
さう思はれるより移ろふやうな
ただこころ訪はれてゐる程であるやうな
それを手にて触れ得る正しさをおさめ
かりそめに
詩のことと言へるまま
ここへかう記すのを目のあたりのこととして
綴るとか書くとかしたためるとか言ひ
またはさう遠ざかるといふことらしひと思ふ
あり得なひ心を添へ
何程か象らうとしくりかへし肯はずゐるのを
時くらひなく記したくなり
かういふ身のほとりと身の儚さの周りにある
添へたものの忘れられていく日の究まつて
夜とは思へずその思はなひことで夜と認める
/小倉信夫
2024年2月23日
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