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詩95 昼



ゆゑといふさうも紐らしひ
紐と紐のたたまれとほり交はされてゐる所や
その波を立ててゐるものの
音のとほくまでとほり
かへつて色といふ色をきれひに失ひ
まなざす所と聴ひてはかへす耳の辺と
ただそのやうにあつて
あたかもそれを布そのものとして思ふなら
ゆゑを失ふといふ表し様の
ただかなふと言へるものとして
詩ではなく詩に近ひ詩の謂を
さう考へてゐたひ気のする
草の足もとへやはらひできて
風のひとときごとにたはむのを
昼くらひのこゑの感じ入られ方と思へて
やがて陰まで明るくさうして落ち着くくらひ
これを詩として書きたくなつてゐる
ひととほり時ばかり静かな今を深ひと思へる

/小倉信夫

二〇二四年三月七日

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