こゑを手に拾ふ日より - 36

こゑを手に拾ふ日より  二〇二四年十二月


 けはひのたつ日の身の周りはしはぶひてをり、にほふ日の夜半のことごとは震へてをり、かはく日の身の近くには物の気配のあり、翌る日に連なりつつ樹を伝ひ布を伝ひいづくかへ凍みて去らうとしてゐる。または集ひつつ集はせつつ身の周りに黙してゐて、匂へば立ち、嫌へば散り、殺めれば身を問ふのを花とも考へただにするまま、冬のこととしてのみ寒がりながら、日とともに翌る日に備へてゐるのみでゐる。その飽くるやうな頃の空をたなにつくやう思はれても、花に身を染めるのを嫌ひつつ、去り気なひ手の置き方や惑はせ方で染まりながら口惜しひ思ひのある日もある。此の所を冬と思へば春はまう隣より来る。

二〇二四年十二月二十九日


 際立つてゐる装ひもあり、だらしなくてある装ひもあり、筋のかよふ風のよそほひを見つつ、またたくさまに霞むのを辻と言ふあらはし方で構へてゐる。笑ふやうとも休むやうとも見へてそのたたづまひはめかすとも、あらためて粧ふとも言へ、日の光の瀬の音もまぢかくまで来て、はやくもその日の暮れ方を思はせるありさまでゐる。冬とよばはばさうであつて、春とよばはばさうでもあつて、ただひとときは隈をなくしさまよふやうにゐる。

二〇二四年十二月二十九日


 ならぶと言ふ、失ふと言ふ、引くと言ふ、むなしがりせつながりかなしめるやう、さのまへへ添へ笑ふやうに語り、砕くやうに笑まひ、身のもとへ遠のき引ひて行くものを、けふの川のせせらぎと思ふ。まだかすみ、まだ残り、聴こへてゐる音を背の前へ見て、樹のほとりの川を耳に聴き、そのこゑに集はせる。またはたださびしがり、町に日もかげらふ。

二〇二四年十二月三十日