2020年の詩

詩(2020年)


近中失題

かういふ茫々の湖も明るひもんだ
瀬々らぎにさはらうとなくさはつてしまひ
大きひ山を掌より波動が笑はせても
思つてゐるより優しひ湖だ
かれは
ここと言ふ所の険しひ涙で
この優しさを湿らしてゐる
草の畔にゐて
いまは歌をうたふのに
さうして息をつきたひのだ……

   (2020年5月8日 Twitter)


鳥羽

お前、風にさはつただらう
声が息に棚引ひてゐる
てうど息もそよいでゐて
(よくとほるこゑ(の後ろで摘まめるぞ
こゑは樹のやうに
トゥバにゐる。緑のクォントゥバにさ
絶へてさはつただらう
生き抜かうクォントゥバの風は気持ちいい

   (2020年5月22日 Twitter)


愛憎

(まばらのこゑで
子らが話し合つてゐるやうだ
そよぎとともに筆の許へ
声が近づひてくる
(さうだ、音のたたなひ(笑ひ)声を表に
私は詩を作つてゐる
(多摩の
風景のしたたかさ(や夢)の
こゑの際立ち方だなぁ
(川がさざめく風の
静かな音声も鳴つてゐて
いまは寂しひ時だ

   (2020年6月5日 Twitter)


草たふる

草がたふれる
草の騒々しさがたふれる
薙ぐ
籃青を装ふ草を薙ひでしまふ
さうざうしひ子三人が
たふされた草を起こし
夜の 夜も更けの
くちおしひ口笛を吹ひてここへ歩ひてくる
子三人の聲が
薙ぐ 草がハッとたふれる
たふれた砂から
萌す叢を子三人ならず大事にしてゐる

   (2020年6月19日 Twitter)


向カヒ山ニ、ヰタ

樹陰カラ
イマ、(こゑ…)、ト言フ、オレニ
曇リノ空ヘ(こーゑ…)ト言フ(こゑ)ガ
草緑ノ樹ノカタハラデ
(…はだう)ノ糸ヲ織ツテヰマス
空ト空ノ間ノ風(…こーゑ)ヲ縞ニ
草ヲツマンデ、違ヘテ
(ありがたう…)ト言ツタ、オマヘカラ
イマ、幽カナ布ニモ聴ヘテキテヰル

   (2020年7月10日 Twitter)


青ひ浦

朝だ。おまへ
(陽はうら(……かは?)の岸で
(此所が)岸だと言ふ川の
つづらの織り目に沿つて震へてゐます)
やさしいな
草の籠(つづら……?)草籠らうと
光はこの川音を浦伝へに
瀬々らがして聴こへる
ああ、おまへも陽の中にゐる……
おれは
おまへの魂の洞をつづる朝にゐるぞ

   (2020年7月31日 Twitter)


(無題)

心((……)こころ、こごる(血の…)戸を開かうとしてゐるドアノブ)ニ触ツテシマツタ……。友(……と言ふより私(吾立方…(…ワタシ?))からの敬慕を贈る)人ガ詩ヲ書ヒテヰル。カウイフ有事ノ際(きは……、端ッ葉ッ羽ッ……!、樹の端にある枝を手折らうとする力)ノサ中ノ火ダナァ。オレモ書キタイ。

   (2020年7月31日 Twitter)


のみち

おかに
なみばかり(うち)よせてゐて
なみ(…といふ、いま(…ににた
せせらぎがきこへてゐます
なみ(…、はおまへがいきてあるく
そまみちをぬらすほど
いま(…といふ、けしきににてをります
(せうるいの
こころがみてゐるぜつけいだなあ……
なみびひてゐる
おまへらにあへてよかつた

   (2020年8月21日 Twitter)


(………)ト言フ(………)ハ濡レソボツママ箱ヘ入ツタ

おまへたち、駅舎へこゑを放つたらう
こーゑ(… を彩り(…の波(…のうなじ… にして、
声量のゆるすかぎり放つたのを耳(のうろ…)に聴ひたぞ(…!
叢の繁り(の此方)から
線路の向かうへ青みを備へて、
こゑ(…こーゑ(… はおれの身(…のさ中の空管も
ざはめかせてをります
私、てうどベンチに座つてゐて
駅舎の屋根の闇のもとから
此の凄ひ全身(…の揺曳(… を聞ひてをりました
放られたこゑ(…、を
つづらの形に折り畳んで幽かに拾ひ、
駅の細長さ(細長ひ指のしわの折り目…、のために
空気(…としか知らなひ)くーき(…
を撫ぜて、詩(こゑ)を綴つて(綴じて)ゐたのだつた……
こんなことつてあるんだなァ……
さうだつた…、やはりみんなすさぶしむせぶやうなのだ
おまへ、こゑ(…、こーゑ(…、を
細長ひ駅(…とこゑに出す家(おいへ……))へ
放つたらう(…
私、声(風合ひ…)にさはつちやつたぞ
激しひ勢ひでたち籠めるつづらのくふき(くーき(…
にさはつてしまひ
音と声とが揺れてゐるさ中の
だう、だう、だう、(…! (だう…!
ああ、こーゑ(…、を綴つてをります
駅舎の叢の折り目(かがよふ織り目だ…)から聞こへる
多くの、だう、だう、だう、と鳴る詩(こゑ)を雪ぐ(瀬だ…!

   (2020年8月 日本現代詩人会投稿)


質量

いましもの秋の夜には
きなふ視た
夢とおなじひやうに儚ひ
こゑが机になみうつて居ります
虫を筆で片どり
胸の右手でさはらうとするこゑが……
私はいかにも
こんな心に荒ぶ若ひ虫らを
原稿用紙の片はらに置き
命のままにさはがせてゐます
  ソレガ私ニデキル悔シサノ表現デス

(2020年9月18日 Twitter)


雨夜

(はい
けふは雨がふつてゐます
夜を象るやうに……)
けふの夜
雨の
湛へやう此の雨音に
柔らかひ耳でさはる
身の傍で
しづしづ響き
夜の碧ひ空を伝つて
雨の
その凄ひふかさの水のとほる
海に耳でさはつてゐる
耳の洞穴は
けふは余りにぬれてゐる
アァ
くり返しふれよ雨よ
寂しひぞ

   (2020年10月9日 Twitter)


此ノ所ハ草ノ裾ダツダ津ダツタ


  シヅカニ身ヲコゴメテ
  松虫ノコトバノ聴コヘテヰル
  夜道ノ声量ノ尊サヲ
  筆デ浚フヤウニアルヒテヰマシタ
  筆ノ墨ノ濃ヒ色ヲ用ヒテ
  松虫ノ音ノ心ヲオヨビカラ零シツツ……

サウダナァ…、アハレナ(…かふの)、
幻の川と野の(…しづかなかふのの)こゑ…
がまつむし(…の心の風景の揺曳…)と伝へる
こゑを聞ひちやつた……
此の夜風のとほる言葉の道に
聴こへてゐる無量の声です
筆で小指に腰かけてさはり
こゑを叢に綴じやうとする松虫ばかりのさはがしさよ……
かふの(…野にかはる水)も
此の幻の野と川に湛へられてをります

  (コンナ心ヲ紙ニ筆デ彫ラウト
  虫ノ気持チニナツテ
  イマハ深更ノ公園ヲ霧ノヤウニ思フバカリカモ知レナヒ……
  夢ノ片ハラヲ
  アナタガスーット歩ヒテスギル
  イツカアナタノコトヲ考ヘテシマフアナタガ……)

アァ、憶ひ出を風で綴じるやうな(…闇の暖かひ)夜だなァ……
公園のかういふ(…かふの)に現れた無量のことばを
虫のまたふ笑ひ声に伝へながら幻してをります

   (2020年11月 日本現代詩人会投稿)


身に

アノネ
こんな日も在ったんだった
朝から夕べまで
あなたの耳に(詩の…)およびが
かがよう岬のように触っている日さ
アノネ
紙が野に(夢の…)本当の続きとして
待っているから
風の中の野や日の中の野の
原稿用紙はいつも寂かさ
アァ
あなたの生は
山が泣くようだ 指の心の山が…

   (2020年11月13日 Twitter)


残照

彼方、私は此方に居ます
(彼方もここに居るならばその理由を教えて下さい
私は此方に
緑色の樹のように生きています
武蔵野よ
碧い浜が浦と口づけする今
彼方は空が食った巌を受け容れますか?
(ああ
彼方はここに居ます
私は彼方に見つけられ
かなたの夢に
歌われつつ歌って居ります

   (2020年12月11日 Twitter)


シシンヘト

(ワタシカラ
ツタヘマス
モシ
ケフニクタビレテヰルナラ
テガミ…、スルホカナヒデセウ
ココロノミヅフカヒウミヘ
ミミヲカタムケ
イツモアリガタウ。テガミ…、ヲマチマス
(オマへソクサヒカ…
(オレハクタビレタゾ
ユメヲ
サカノボルヤウニ
コタヘマス
  ソツポムクセツナサヨ)

   (2020年12月29日 Twitter)


あなたの名が傍にゐた頃へ……

いつも
眠る前に
詩(こゑ…、を
紙に表して
眠りを暖めてゐました
しづかな
夜更けの机のうへで
いつも
その夜更けと
灯(ヒ…、の明るさの
あひだを詩(こゑ…、と共に歩みます
時計さへ
音をたてなひ深更です
窓の外では
犬がたまに吠へてゐたり
車(やバイク…、の走る音が
聞こへますが
いつも
夜は
寂(シヅ…、かでした
わずらはしひ
愛憎の感情を
ひとときのあひだ(時と時の間の
詩(こゑ…、として
書ひてしまふ時間は
朝を織る機(へ向かふ…、
心でゐたかも知れません
夜毎
前の日にしたやうに
詩(こゑ…、で
朝を繕つてゐると
鳥が鳴き出す日も在りました
本当に
寂(シヅ…、かで
かへり見るほど豊かな時だつた……
今も(てうど…、
詩(こゑ…、で
小夜を暖めてゐます

   (2020年12月31日 note)


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