こゑを手に拾ふ日より - 33

こゑを手に拾ふ日より  二〇二四年九月


 わたくしのことを面白がつてか、嫌ふやうに思つてか、のどけくあつてか、日に代はり人のおとなひ人の語りおもんばかるやう聴こへる日々のあつて、欺くものも驚かすものもその人らにもわたくしにもあるのをうち騒ひでゐれば、この独り住まひの部屋は寂しく、明るく華やひでもゐて、雨の降り日の明るむ日はなほ秋も来たかと思へてきてそらぞらしひ日を過ごしてゐると思ふ。時によつては景色は色をなくしてしまひ、ある時はそれをむなしがるやう色合ひの移ろふので、風の向かふ方へ此の時も流れ行き交ふものと見へてゐる。何も計らはづ、何もおさめづ、何も思はなひでゐると日はすさぶやうに繰り返される。

二〇二四年九月十九日


 窓際にゐて、窓のうへを少しく眺め雲の色のしたたるのをうるさがり、面白がつてむつかしがりながら、いつに増して少なひ昼の物を食べてゐた。うつとほしく降る雨に、おのづからいらだち、言ふ前の言葉は忘れられる。

二〇二四年九月二十二日


 いらだたしひ思ひを得るのは、今ほどにして健やかでゐたひと思つても、ひとりとして胸の落ち着かづ、それもいらだたしさをもよほさせる日の暮れの寂しさであるらしひ。集へば別れ、密かに集ひ、したはしさを嫌ふのは心の計らひのなさかと思へて、さうあればそれをけふのしまひ方のひとつとしてしまひ、いたたまれづにゐる内に勤めのやうに身をふりかへつては、詩を書きまた人と集ひに行く。

二〇二四年九月二十三日

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