『死者の書・口ぶえ』-3

2021年2月2日

所収の「口ぶえ」本編を読み終える。前編のみで終わってしまったが、話も途切れ途切れとなっているふうにも読め、未完稿の印象が強い。しかし感覚描写はそこかしこであざやいでおり、また筆の運びにもリズムがあって面白い小説だった。と言っても「死者の書」ほどの完成度を感じられず、また前編のみでの終了ということもあって、道半ばで読み終えたのか……、と読後に考え込んでしまった。

これより注解と解説を読み、それで読了となる。当初、注があることを知らず読み始め、その存在に気がついたのも「口ぶえ」を読み始めたときだったから、「死者の書」「死者の書 続編」については注を読んでいない。(「死者の書 続編」も未完稿である。)こういうときは読み飛ばして解説に移ることが多いが、注解の冒頭に本編読了後に読むことをすすめる、とあったので読むことにした。

「口ぶえ」は少年たちの愛と葛藤の話である。葛藤する心理を感覚的に描いており、これまで人生のうち、友人を含め人とすれ違ってばかりの私には身につまされるものがあった。

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