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10年前に突如ケモ着ぐるみを始めた話 (2:制作)

制作(の依頼)に至るまで

JMofが終わり早速行動開始……なんですが時はすでに1月中旬で超パーティの開催は4月末。
つまりタイムリミットは3ヶ月しかないという状況の最中で余裕もクソもないまさに最初からクライマックスの状態から始まりました。

着ぐるみの知識はおろか裁縫すらまともにできず、かつその時期は仕事の納期が近づいていて定時で帰れる事がほぼ無かった自分が1から作るのはまず無理な話。
着ぐるみを依頼できる知人もいなかったので最終的に取った判断は「着ぐるみ業者に制作を依頼する」でした。

当時はゆるキャラブームの全盛期だったこともあり、調べてみたら近場にいくつか着ぐるみを専門とする業者がいたことから手当たり次第調べる事にしました。

着ぐるみ業者巡り

いくつかの業者やサイトを調べ自宅から可能な限り行きやすい業者を選定し、ひとまず3件に絞りました。

1件目

1件目は小さな店でやっているいわば工房的な雰囲気でした。住所を調べたところ当時の職場から歩いていける範囲だったので昼休みに向かったところ……

掲載してあった住所に「テナント募集」の貼り紙が貼ってました。

この時点で恐らく工房を畳んだ後と結論づけました。
この手の小さな業者にはよくある話なのですが、サイトは生きていても実際は店を畳んでいるというケースがあり、今回もそのパターンだとわかったので利用を諦めました。
移転の可能性もあったため、念のため掲載されていた電話番号に電話もかけてみましたが、結局繋がらなかったのでやっていないのはほぼ確定だったかと思います。

2件目

2件目は街の中心から離れた工業地帯にある着ぐるみ業者。当時はゆるキャラブーム真っ盛りだったこともありサイトの方にはその辺りの着ぐるみの実績がズラリ。
これは期待できると思い早速電話をかけてみて担当者に話を伺う事にしました、

「あの、着ぐるみの制作の依頼をしたいのですが」
「作れますよおたく、どこの業者さんで?」
「いえ、業者ではなく個人でなんですが……」
フッ(鼻で笑う音)……個人で着ぐるみの制作依頼ですか?」

明らか様に鼻で笑われました。この手の話は企業からの依頼が殆どであり一個人からの依頼は普通にないとは言え、その相手をバカにするかのよう態度を示すのは「業者としてどうなの?」と率直に思いました。
一応「個人でも着ぐるみ制作の依頼は可能です」という話は受けましたが、担当者のあまりの印象の悪さにまともに受けてくれないだろうと思いこの時点で諦め、別の業者を探す事にしました。

3件目

3件目は山奥の住宅街にある工房、住所から調べてみた辺り一軒家をそのまま工房にしていた模様。
サイトも調べてみた限りではゆるキャラの実績もある。2件目の鼻で笑われた件もあり心配になりつつもとりあえず電話。
真っ先に確認したのは依頼主は企業ではなく個人であるという前提で着ぐるみが制作可能かどうかを伺ったところ……

「はい、制作を受け付けてますよ」

心の中で「やったあああああ」と叫んだのは言うまでもなく。
時間が無かったということもありましたが、他にめぼしい場所を見つけても2件目のように門前払いされる懸念もあったため、3件目でそのまま制作の依頼を行うことになりました。

着ぐるみ業者とのやりとり

打ち合わせ

業者の決定後、電話からメールでのやり取りに移行し、見積もり依頼も兼ねて実際に工房へ伺うことに。

なぜ実際に向かう必要があるかと言うと、イラストの立体化に伴う細かいデザインをどう制作するかの打ち合わせもあるのですが、着ぐるみはいわゆる全身のオーダーメイドの服を作るのと同じものなので、当然着用者の身長や着丈・総丈などと言ったサイズを測る必要があります。
今回はオーナー(依頼主)=スーツアクター(中の人)なので一人で向かうこととなります。

打ち合わせ当日、着ぐるみを制作するイラストの三面図や簡単な設定資料を持っていざ工房へ。

打ち合わせの前に担当者から「イラストの三面図が必要です」と言われ急遽、当時イラストを描いていただいていたフォル公さんに真横図の追加で描いていただいたもの。(※ 前後は元々アルバム用に制作していたジャケットイラストから)

工房へ実際に行ってみると当然ではあるんですが辺りは普通の一軒家で、会社も一軒家をそのまま工房にしたもの。
インターホンを押して家……もとい工房に入り部屋に案内されて担当者と打ち合わせ。

軽い挨拶をすませて持ち込んだイラストを見て担当者が開口一番に言ったイメージの一言。

「これ、イメージとしてはクロノアに近いですよね」

…………イラストが元々クロノア好きな人が描いたものなので似ているのはまあわかるとして、なんで風のクロノア知ってるんすか担当者。というかゲームにある程度詳しくなければ普通真っ先にクロノアという言葉が出てくることないっすよ。

そういった謎の確信感を得つつ提出したイラストからどういったパーツが必要かを相談しつつ打ち合わせ。

打ち合わせ後の流れはこんな感じでした

  • 納品日を基に見積書を作成。承諾完了後制作開始

  • モデルに近いフィギュアを3Dスキャンしてそれを基に3Dデータを作成

  • 3Dモデルデータを確認し、問題が無ければ本制作

  • 制作完了後、完成品を確認してもらい納品

この流れを受けひとまずは打ち合わせは終了。

見積もりから問題発生へ

見積もりが完了したと連絡を受け早速確認します。
頭部と全身のスーツ、そしてそれぞれの各パーツを1月中旬から開始し、超パーティの出演の概ね1週間前である4/20頃を納品日として出てきた見積もり金額はおおよそ最低50万円+必要に応じて追加費用となりました。

初めて着ぐるみというジャンルを知る方にとっては恐ろしい程高い値段ではあると思いますが、元々の専門業者における着ぐるみ制作案件の相場価格は最低60万が目安となります。

まず企業が相手(もとい業務用)である前提、制作期間に1.5ヶ月~2ヶ月かかり、その上でスーツアクターの身体に合ったオーダーメード着ぐるみの制作案件なので人件費や材料費を考慮すると今回算出された予算はまだ安い方です。
恐らくですが、今回の見積もりは業者ではなく個人の依頼という配慮も入った価格だったかと思います。(当時は助かりました……)

実際個人で出せた金額かと言うとある程度の貯金はあったのでこれから先数ヶ月~半年の生活をなんとかすればギリギリ出せなくもない値段でした。
……はいそうです、個人出資かつイベント出演の為にこれだけの金額を出すのはあまりにも無謀だったことは確かです。

見積もりでどうするかを考えているうちにある問題が発生することとなります。それは超パーティ担当者からとある連絡。

「パンフレットに写真を掲載したいので3月中に用意してください」

……えっ?パンフ????写真??????
間に合わないというかもっと早く言って?????????

いきなりパッと出で出現した撮影依頼行程。出演確定時から薄々そんな予感はしてましたがこのイベント、規模の割にはスケジュールが超タイトで、何を動くにしても常になるはや体制だった事を覚えてます。特に当時の歌い手や自身の担当カテゴリである音楽カテゴリなどの一般投稿者に対してのオファーから出演までのスケジュールがかなりギリギリだったようにも思えます。

パンフレットはかなりの数を刷るはずなので写真の撮影を3月中に終わらせておく必要があるのはわかるのですが、着ぐるみの納品は4月なので当然撮影には間に合いません。相手はスケジュールを延ばしてもらうというのは当然無理なので制作側を短くする必要があります。

問題解決への行程変更、そして制作へ

納期が一気に短くなるという問題を着ぐるみ業者の担当者に相談しましたが、当然ながら「納期を早めるのはさすが無理」という前提のもと、担当者からとある解決策を提案されました。

  • 全身ではなくハーフスーツに制作を切り替え、必要なパーツはオーナー自身で用意してもらう

ここで言う着ぐるみのハーフスーツとは毛が見える部分のみを制作し、あとは自身で用意した衣装で(人間の)肌を隠す事により、擬似的に全身着ぐるみを着ているように見せるという手法です。
実際にケモ着ぐにもハーフスーツでやられてる方は結構おられるようで、衣装に関してもオーダーメイドすることなく一般的に販売されている衣類をそのまま着れるというのがポイントとなります。
見た目は全身よりも人に近くなりますが、制作面では納期・制作費も抑えられるという利点があります。

それを前提に更に相談し、最終的に下記のパーツのみ作る事になりました。

  • 頭部 (※ パーツ無し)

  • スーツ (※ 腕と足の毛が見えている箇所のみ)

  • しっぽ

納期最優先で頭部はゴーグルとニット帽無しで進めることにし、スーツは全身ではなく腕や足に見えている箇所を巻く形で対処、尻尾はズボンのベルトに付ける形にして最終的な納期は3月中旬に短縮。ハーフスーツに切り替えたので予算も最初の見積もりよりも更に安い30万円に落ち着きました。

日に日に時間が押していた事もあるのと、あと食費を削りまくる生活を回避できる貯金の余裕を考えた結果、今回出された見積もり・納期・金額でそのまま制作を決めることにしました。

とにもかくにも、自身のオリジナルキャラクターの着ぐるみの制作が始まりました。
そして自分自身も業者にブン投げてるだけで終わらず、いろいろなやり取りをする必要がありました。それはまた次の記事で。

……そして後にこの判断が大きな後悔を産むことになるのですが、それはまた後々の記事で。

余談

着ぐるみ業者の担当者との打ち合わせで参考となる3Dモデルのスキャンとは聞いていたものの、「何をスキャンするんだろ?」と思ってたら

「今回はクロノアのフィギュアを参考資料としてスキャンします」

と説明されて「ほーなるほどー」的な感じで思っていたんですが……2013年時点でクロノアのフィギュアって販売されてた記憶が全くないんです。
その際に色々調べましたがそれらしい販売情報は一切なかった
ので、この話は今もなお気になっています。
マジでクロノアのフィギュアってねんどろいど以外になんか出てたっけ……?


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