アジ

私にとってアジといえば、アジフライ。時点でアジの開きだ。
アジが有名な沼津の隣、富士市で育った私にとって、アジは幼い頃から身近な魚だった。
学校の給食ではアジフライ、アジの南蛮漬けが月に一度は出ていたと思う。好きなメニューのひとつだった。南蛮漬けのごはんが進むこと進むこと。

アジの開きは、家で食べる機会が何度かあった。青魚の苦手なおばがいない日に食べるのが恒例だった。

成人してから、海老名サービスエリアで売っているアジの唐揚げを食べた。はらわたを除いてまるごと揚げてあるのだが、これが美味しいのなんの。
そういえば昔、母が大量のアジの小魚を貰ってきて、じゃんじゃん揚げて食べさせてくれた。あの味に似ているな、と思った。

アジを捌いたのは、札幌に住んでからのこと。
地元のものを食べたいと取り寄せたもののなかに、アジがまるまる一匹入っていたのだ。
思えばこれが、巡ってきた初の魚捌きチャンス。
漁港の傍で18年生きてきたのに、魚一匹すら捌いたことがなかった。
遅すぎるデビュー。いや、遅すぎるということはないのかもしれない。
もちろん、出刃包丁なんてものはない。えいや!と普通の包丁で捌いたが最後、お世辞にも上手とは言えない三枚下ろしが出来上がった。
捌けた喜びよりも、なんだか魚に申し訳なく思えてしまい、あれから魚捌きからは遠退いている。いつかまたチャンスとして巡ってくるだろうか。

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