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ARCANE観た -失敗は更なる失敗の素-

haoriです。

ARCANEのためにNETFLIX加入した

一昨年くらいにLeague of Legends(以下LoL)を始めたLoLプレイヤーなんですが、どっぷりハマってしまい、今も数百戦ランク回したりしてます。
MTGにしろ背景世界がすごい好きで、LoLのチャンピオンのユニバースとかも結構読んだりしてます。

今回はLoL初のアニメ化、プラスこの「ARCANE」を軸に様々なコラボやイベント、ゲームの発売があるなど最高潮の盛り上がりを見せています。
これを無視するわけにはいかず、僕もNETFLIXに加入しました。昨日。ARCANEを観るためだけに。

世間では「イカゲーム」とか流行ってたみたいですけど、ARCANEが記録を塗り替えて1位になってるみたいですね。流石世界一遊ばれているゲーム。

LoLプレイヤーじゃなくても観て面白い

「ゲーマーでなくても『ARCANE』の驚くべきアニメは観覧客の関心を集めるのには十分だ。引き込まれる魅力的なストーリーはARCANEの無視できない力」
https://news.yahoo.co.jp/articles/0db799acfd1497503833740285a854d532e15aa6

前提として、僕はもういちプレイヤーなので、完全にゲームと切り離してこのアニメを観るのは無理でした。作中で何度かチャンピオン同士の戦闘があるんですが、「不意打ちならアサシネートできるけど普通に戦ったらカイトされて終わりだな……」とか結構そんなことばっか考えちゃうわ。

とはいえ、市場の評価もさることながら、ちゃんとゲームを知らない人が見て楽しめる作品になってるんだろうな、というのがわかるのもあります。
一応、LoLプレイヤーとしての目線をなるべく外したレビューもしてみたいと思います。

簡単なあらすじ

科学、魔法、そしてぶつかり合う信念。繁栄を遂げる都市ピルトーヴァ―と、その下に広がる街ゾウンを舞台に、敵同士として戦いに身を投じる姉妹の運命を描く。
https://www.netflix.com/title/81435684

舞台は魔法と科学が混在する「ルーンテラ」という世界のとある国、「ピルトーヴァー」「ゾウン」です。
ものすごく簡単に言うとワンピースの「ゴア王国」とかドラクエ11の「デルカダール」とかと同じです。「ピルトーヴァー」は上級国民が住む科学と発展の街。「ゾウン」は下級国民が住む犯罪と暴力のスラム街。当然のように二者はいがみ合っており、街の境界は海と橋によって途絶されています。
ピルトーヴァーの科学者「ジェイス」の家に強盗に入った、孤児の「ヴァイ」「パウダー」の姉妹、そしてその一味がその家で盗んだものがきっかけとなって、ピルトーヴァーとゾウンを巻き込む一大事件へと発展していきます。
そしてまだいたいけだった少女のヴァイとパウダーが、如何にしてLoLに登場する「ヴァイ」と「ジンクス」になっていくのか……という話。

「LoL」の話じゃないので観やすい

話はヴァイとパウダーが孤児になる原因となったピルトーヴァーとゾウンの紛争から始まり、ふたつの街の均衡を守ろうとする勢力と、それを壊そうとする勢力、意図せずして大問題を引き起こした孤児たちの話へと発展していきます。

話の展開は結構ゆっくりなんですけど、何がいいかというと人と街との関係がしっかり丁寧に描かれているんですね。
LoLは超ファンタジーな世界で近未来ガジェットもオーパーツも魔法も異種族や化物も目白押しなんですけど、話の序盤はそういうのがほんの少し匂うくらいの感じで、あくまで人間ドラマにフォーカスしています。
たとえば「ヴァイ」は短気でピルトーヴァーに敵意をむき出しにしているが、仲間想いの優しい姉貴分だとか、「パウダー」は気弱な小さい子供で、子供扱いされるのは嫌だけど失敗ばかりで負い目を感じてる……とか。1話2話くらいでそういうことが緻密に描き出されています。

実はここのところはゲームやユニバース(キャラクターや世界観に関する説明や小説)に描かれている内容とは結構差異があるものがあります。僕なんかは「ヴァイ」というキャラクターのことをイカれチンピラくらいに捉えてたんですが、この作品では「ヴァイ」が再定義された上で、丁寧に説明されています。
なのでおそらく、ゲームの下知識がなくても話の筋を理解しやすかったんじゃないかなとか。

最近のアニメは「3話見て継続するかどうか決める」などと言いますが、ARCANEシリーズは3話ずつ配信なので、3話でだいたい話がまとまっています(まあ一気見したので僕は関係ないですけど)。
ラスト3話は全部盛り上がりすごいのでいいんですけど、最初2話見て「ああまあ普通にディストピア的なありがち作品かな」みたいになってる人、3話まで見てくれ。

4話以降から話が数年飛ぶので、LoLプレイヤーには聞きなじみのある言葉がいくつも出てきます。ここから一気にファンタジー要素が出てきます(ケミテックとかへクステックとかアーケインとか)。もしかしたらここで用語がわからなくて少し置いてかれる人がいるのかもしれない。
まあでも基本的にこの作品は「人と街」の問題にフォーカスされているので、そういうファンタジー的な部分抜きにしても、建前と本音の間で権謀術数に踊らされる人間たちの苦悩がちゃんと見えています。

失敗が失敗を呼び、狂気へと繋がる

LoLを無視した僕の感想としては、「失敗は成功の素なんてのは嘘で、失敗が失敗を呼んで人を破滅させていくのが普通なんだなあ」ということです。

「ジンクス」はその最たるもので、幼少期からやることやること全部裏目に出て、グレて成長した後でも自分の考えで勝手に行動して全部めちゃくちゃにして周りに煙たがられます。あだ名である「ジンクス」の由来は「お前がいると全部めちゃくちゃになるのがジンクスだから」(ゲーム内でも「ジンクス?ジンクスって意味よ!」という台詞がある)。彼女がしでかしたミスがトラウマになって、彼女自身を苛み、狂気とさらなる失敗へと誘発している。

この作品のキャラの多くは作中ないし過去に何かしらの間違いを犯し、その間違いに苛まれながら藪の中へと突っ込んでいきます。「ヴァイ」は妹について、「ヴァンダー」はピルトーヴァーとの抗争について、「ハイマーディンガー」は魔法が引き起こした過去の戦争について、などなど、何かしらに関して負い目を抱えている人間が多い。
彼らはそのために判断を誤り、より大きな事件へと延焼させていきます。

作中では科学者が多く出てくるので、「失敗は成功の素」などという言葉も思い浮かびますが、作中ではそんなことはない。ジンクスが犯す度重なる失敗と、苛むそのトラウマ、ジンクスに「何者か」でいることを強要する周りの人々が、彼女を怪物へとつくりかえていく。
作中でシルコがシマーによる人体改造について「怪物は誰の中にもいる」という表現をしていますが、ジンクスはシマーに頼らずともその怪物を大きくしていく。誰も彼女の本当の心を助けられないまま、事態は第9話ラストへとスノーボールする。
まあとはいえ、ジンクスが狂気に堕ちた理由はシンジドの影響も大きいですが……

彼ら彼女らに必要なものは何だったのか?というのは難しい話ですが、権力者の強欲、官憲の腐敗、ふたつの街の相互不理解が事態をより悪くしているのは事実。面白いのは、シスコがまとめるゾウンでもケミ長者(生体技術ケミテックを利用して富を得たゾウン民)による評議会もどきが出来上がっていること。ピルトーヴァーにいてもゾウンにいても、人の本質は何も変わらないのに、利権と相互不理解が不幸を生み出していく。

当事者であるヴァイやジンクスだけでなく、ピルトーヴァーにいながら権力者の政争に巻き込まれていく「ジェイス」と「ビクター」も、純粋に技術を追求する科学者から、その立ち位置と関係をおかしくしていきます。
このアニメは基本ヴァイとジンクスの話メインですが、群像劇的にこの二人の物語も描かれていくのが魅力の一つです。

その点、かなりしがらみが薄いエコーがめちゃくちゃ主人公っぽくていいですね。声優が畠中さんなので余計に主人公みが強い……

シナリオ以外のところもすごい

誰のレビューだったかで見ましたが、絵画が動いているかのようという表現はまさにそうで、LoLのスプラッシュアートがそのままアニメになったかのような、重厚な表現が見ごたえを補強しています。
しかもカートゥーン的なアニメではなく、洋画を見ているようなリアリティのある動きと感情表現がすごく印象的。

あと僕は日本サーバーでプレイしているので当然日本語吹替で見てたんですけど、声優さんの演技がすごい。僕ヴァイを普段使ってない理由ってなんかキャラクターの台詞があんまり好みじゃないってのが大きかったんですけど、小林ゆうさんの演技がめちゃくちゃすごい。幼少期の苦悩しつつも芯があってみんなの指標であろうとする少女の演技、青年期のあんまりな境遇に荒みつつも気のいい姉御って感じの演技、両方ものすごい。ゲームともまた違うんだけど、ヴァイだとわかるのがすごい。
あと3話の幼少期パウダーの玉野るなさんの演技ものすごいので見てね。

楽曲もすごいんですけど……これは観ないとわかんないので観てください。やっぱ外国アニメってすごいよ……

LoLプレイヤーとしての感想

先にいくつか気になったところから……

1. ゲームやユニバースと結構話が違う
顔見ればジェイスってわかるけど、ゲームやユニバースの尊大で自信家なジェイスしか知らなかったので、アニメの理知的で分別のあるジェイス見て「こいつ誰!?」ってなった。だってジェイスのユニバースの台詞「お前が今日しでかした中で一番愚かなことは、俺と戦おうと決めたことだ――降参するなら今だぞ」ですからね。
ヴァイのユニバースとかも「バーのオーナー」みたいな文言が出てくるので、おそらくヴァンダーのことだろうなみたいなのはわかるんですけど、細かい生い立ちを見ていくとアニメと違うなとか。

2. 出てこないチャンピオンが結構いる
ワーウィックが見たかった!!!!!!!!!!!!!シンジドが出るって言うからさ……
ARCANE観るにあたって一応調べたんですが、たとえばゾウン関係者で言うと他にドクタームンドとかアーゴットとかジグスとかもいます。ジグスは時系列的にたぶんもっと後(ジンクスが犯罪者として暗躍するようになってから)出てくるんだと思うんですけど。まあでもワーウィックもシンジドのユニバース的にはARCANEより時系列後なんだろうな……
もうシーズン2制作が決まってるらしいし、今回はノクサス人もちょっと出てきてたので、もしかしたら次回アーゴットとか出てくるのかも。

3. これチャンピオン逆輸入ないな!?
プレイヤーがこういうアニメ化とかに期待するものって少なからず「アニメに出てきたキャラクターが逆にチャンピオンとしてゲームに追加される」っていうのがあると思うんですけど、どうやら一体も出そうなキャラクターがいないんだなこれ。
LoLは実はイラオイみたいなパワータイプ屈強おばさんが他にいないのと、ケミテック技術を使ってるチャンピオンがあんまりいないのとがあるので、セヴィカが出てこねーかなみたいなのを密かに願ってたんですけど、ヴァイに負けちゃったからな……

上記に対して、しかし明確にめちゃくちゃよかったなと思うところのほうが多いです。

1. チャンピオンと世界がより好きになる
ジンクスとヴァイというキャラクターが深く描かれることで、よりこのキャラクターたちを好きになれるというのがすごくいいなと思っています。だってこのアニメ見た後ヴァイとジンクス組み合わせてピックしたいなってそりゃ思うでしょ。でもハイマーディンガーは正直好感度が下がった。
アニメ見た今だと、ケイトリンとジンクスを同時にピックしにくいのはちょっとした因縁すら感じるよね。たぶんbotで相対するたびこのアニメのことを思い出すと思う。

2. ゲーム内の用語への理解が深まる
これはまあ部分的にネタバレなんですけど、ターボ ケミタンクが出てきます。正直見た瞬間笑っちゃったんですけど、マジでウディアが積んでるときみたいな速度で動いてる。
ゲーム内のアイコンだけだと、この装備ってどういう装備なんだろうなあ……みたいなのがイメージしづらかったりするので、そこが結びついたことだけでもプレイヤー的にはうれしかったですね。
ゲーム内で出てくるへクステックとかケミテックとかの意味もよくわかってなかったし。
そういう意味だといつかフレヨルドの話が出るといいな……フレヨルド系のアイテムよくわかんないの多いし……

NETFLIXに契約してLoLをやろう

ということで、ぜひNETFLIXに契約してARCANEをご覧ください。マジで面白い。
そしてできればLoLをやってください。やっぱゲームはやったほうが面白い。

あとヴァンダーはたぶんワーウィックじゃないです。声優違うし。
これで違ってたらちょっと恥ずかしいな。

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