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【エッセイ】ジャニーズ事務所性加害問題について

ジャニー喜多川氏より性被害を受けた方々からの告発がありました。

告発後、国連人権理事会は政府や企業が救済策を取るよう促し
特別チームが性被害はあったと認定
ジャニーズ事務所は9/7に会見し、性加害の認定と謝罪をし藤島ジュリー景子氏は代表取締役社長を引責辞任、東山紀之氏が後任となりました。

性加害は断じて許されません。
目を背けたい過去に向き合った被害者のみなさんの心痛は終わりがなく今も苦しまれていると思います。
本当に性加害は許されることではないんです。

これまでの経緯、会見を見て感じたことを書いてみます。
※ここに書いてあることは個人の感想です。一部予測も含みます。ご理解の上お読みくださいね。

〈「忖度」というより「恩義」か〉

今から30年ほど前
テレビ局を定年退職されるという方とお話する機会がありました。

テレビ局に入社を決めた1960年代はじめ、当時はご両親や友達など周りの親しい人たちから反対されたと話していました。
その頃はまだ「テレビ」という業界がよく知られておらず、未知の会社組織だからお給料がもらえるかもわからない、他の職場にしなさいと説得されたそう。
しかし女性は定年まで勤め上げました。その間、高度経済成長期を歩みながらテレビやラジオも映画界と同様にその位置を確かなものにしました。

お話した女性は現在80代。ジャニー喜多川氏と同年代でしょうか。

1950年代から1960年代はおそらく終戦後しばらく経ったもののエンターテイメントも道半ば。
ここからは憶測だけれど
おそらく先の話のようにテレビでエンタメを見せるというのも映画や劇場に比べてなかなか知られておらず支持されてはいなかったのではないか。
そんな中、喜多川氏はテレビ局とともに「テレビの中のエンターテイメント」を男性タレントを発掘し起用することで盛り上げ、互いが世論に認められるよう切磋琢磨していたのではないか。
やがてその働きは成功し、
テレビエンタメが文化として成長する頃、テレビ局も大きな組織となり同時にジャニーズ事務所も圧倒的なチカラを持つ芸能事務所になったように思います。

各テレビ局、テレビ業界の発展に尽力した喜多川氏がいつしかテレビ界の「恩人」になったのだとしたら
彼の事務所のタレントさんたちをこれまで率先して出演させることは恩返しでもあったのではないか。
やがてそれが「テレビ局の習わし」として受け継がれ、平成となり時代が変わっても各局はその習わしを守りいつしか『ジャニーズのタレントは特別に出演枠があるのではないか』と視聴者が疑問に感じても、テレビ局内で異を唱えるものも少なく今に至ったのではないかと思うのです。

近年使用される「忖度」という言葉は、もはやなんの重みも持ちませんが
各テレビ局のジャニーズ事務所への姿勢は「忖度」ではなくもっと重い感謝を込めた「恩義」だったと思います。
今後はテレビに限らずタレントの出演については視聴者やファンが納得できる一定のルールの構築が必要とされるでしょう。

しかし喜多川氏が恩人だからと言って、自らの欲を青少年たちにむけ犯罪を行っていいということはありません。
恩人に足りなかったものは「自制心」でした。
本当に残念でなりません。

〈東山氏は適任か〉

9/7の会見で代表取締役社長が藤島ジュリー景子氏から東山紀之氏に変わると発表がありました。

藤島ジュリー景子氏が叔父であるジャニー喜多川氏に対してどのようにコミュニケーションをとっていたのかは分かりませんが、喜多川氏亡き後は代表取締役社長であったのですから
被害者の方々に謝罪し解決策を講じる責はあると思います。
後任の東山さんについては私は現時点では否定的ではありません。
ジュリー氏と親交があり長年事務所に所属していた人物を社長にしても事務の体質は何も変わらないだろうし事実を隠蔽されるのではないかと言う声もありますがジャニーズ事務所はじめ芸能界はやはり民間企業とは異なる仕事上の常識もまだまだあると思うので
今回の問題の解決も彼に経営の知識はどれだけおありなのか分かりませんが、経験を生かし、謝罪と解決策を見つけてほしいと思います。

いずれにしても東山氏が社長として適しているか適していないのかを結論づけるのは早計でしょうし、そもそも外部に打診しても他に代表を引き受ける方がいるかどうかわかりません。
東山氏で解決が見込めないならその時は適任の方が現れるはずです。

〈冗談と性加害行為の境目〉

記者会見で女性記者が
東山さんに対して過去に性加害のような行為を後輩たちにおこなっていたのではないかと質問した際、
具体的な事象を例に挙げていましたが
昭和の時代、中学校の男子たちが休み時間に教室のすみで下ネタを言い合ってふざけていたのを思い出しました。
その場の男子はみんな笑っていましたが、中には苦痛な男子もいたのかなと今振り返ると思います。

男性、女性に限らず、どこまでが「冗談としての行為」でどこから「性加害行為」になるのか。境目はあるのでしょうか。
それは受けた側が「冗談」と受け止めたならそうであり「性加害行為」と受け止めたらそうなのでしょうか。

ジャニーズ事務所に在籍していた、あるいは現在も在籍しているタレントたちの過去の行為をひとつひとつ洗い出し暴いてゆく。
性加害を与えた側には謝罪するよう促し白黒つかないなら世間で裁く。
それはきっと「正義」なのでしょうけれど
被害者に寄り添うはずがいつしか
「タレントの過去を細かく暴いてゆくこと」「具体的な事象」などに興味がそそられることになってしまったら
被害者救済への解決が遠のいてゆくような気がします。
意地悪くいえばスキャンダルとして捉えればある意味「ビジネス」になるかもしれませんが
スキャンダルに変わってしまうと問題解決までさらに時間がかかると思います。

〈言える「空気」、言えない「空気」〉

自分の意見や考え、感じたことを相手に言える空気、言えない空気…そんな「空気」は確かに存在します。
社会生活を行なっているなら誰もが感じたことのあるああいう感じの「空気」です。

性加害が行われていることを知っていたのか、
知っていたなら何故何も言わず何も行動しなかったのか、
今回の件ではそのことを追求する声が聞かれます。
何も言わないことは、加害者と同罪であり、責任を取らなければならないということのようですが
実際にそのシーンを目撃していないのなら
それは「噂」で、自分が間違った情報を持っているのかもしれないと思い直し
創業者である喜多川氏のマネジメントやエンターテイメント手法を信じていたなら
性加害の噂は「噂」であってほしいと願い、
行動せずに触れてはいけないと触れられない「空気」が生まれたのではないか…。
もちろん保身もあったと想像しますが、ステージに立つ未来を目指す若いタレントたちが保身を考えたとしてもすべてを責めることはできないと思います。

平和集会に参加しない人(行動しない人)が全て平和反対派であるわけではないと誰かが言っていたのを思い出します。
性加害の噂を聞いたり知っていたタレントたちが行動しなかったのなら全員が「加害者」だと判断していいのか。
また今回の件を語らない所属タレントたちは「ずるい」と責めていい立場なのか。
私には答えが分からないのです。

〈所属タレントの活動〉

CM契約解除などの動きが見られますが
イメージ戦略である広告は
コンプライアンスに問題があった事務所に所属しているタレントを起用すると
企業、商品イメージがダメージを受けるため契約を結べないという判断も否めないと思いますが
あらゆる方面で所属タレントの活動を制限すると彼らの収入がなくなるなど、また別の人権侵害となる恐れもあります。
コンプライアンスに背いた事務所に所属するタレントたちにも責任を負わせることは絶対的に正しいとはいえるのか。

各企業の商品を消費者が購入したのは少なからずタレントたちの貢献もあったと思います。手のひらを返したような状況はしばらく続くかもしれませんが、やはりジャニーズ事務所のコンプライアンス変革が急がれます。

〈ファンとして。今後への提案〉

ファンとして、素人案ではあるけれど思うことは

ジャニーズ事務所は芸能活動を停止し
所属タレントの処遇としては別の事務所への移籍先を探す(容易ではありませんが)
あるいは一定の金額面での補償を行い、
事実上ジャニーズ事務所は解体して
今後は被害者への救済に専念する…
ということを提案したい。

この問題の着地点は
「ファンの皆さんが彼らの活動をこれからも応援できるように」
そして
「被害者の方々が安らげる時間を取り戻せるように」
ということです。

ジャニーズのタレントたちに厳しい声があります。以前よりあったかもしれませんが今回のことでより厳しい状況になりました。
しかし
私は彼らから笑顔になれるたくさんの時間をもらいました。
テレビの中、スクリーン、ステージパフォーマンスなど、彼らのこれまでの活動は偽物ではありません。
努力で勝ち取った彼らの人生そのものであり
ファンの人生の一部でもあるのです。
「ジャニーズ」というブランド名を残すのか残さないのか。
判断は簡単ではありませんが
応援してくれるみなさんやファンの方々はどんな決断をしても応援してくれる、あるいは時間をかけて理解してくれると思います。

ジャニーズ事務所出身のタレントたちと、ほかにも才能のあるたくさんのタレントたちが磨き合い、輝き、日本のエンターテイメントをより一層魅了してくれることを期待し
被害を告発してくださった皆さんに穏やかな日々が訪れるように
見守ってゆきたいと思っています。
いえ、ジャニーズ事務所のこれからを見守らなければなりません。

〈終わりに〜認識を変えることこそ〉

今回の事務所側と記者(メディア)の方々のやり取りを見ていて私はかなりの未熟さを感じました。
成熟した報道が見られないということはまるでこの国の政治のチープさのようでもあり
そんな報道を許してしまっている私たち世論の未熟さをも表しています。

罪はもちろん加害者にあるのですが、これまでメディア、マスコミ、そして私たち世論も含めて

「残念ながら性被害を受けてしまうのは女性」で
「男性が性被害を受けることはない、または受けても深刻ではない」
という認識があり今回の性被害は報道されることもなく
同時に世論もまたその認識のもとに被害者のSOSを見逃し
被害が広がってしまったのではないかと思います。

健全な報道とは何か。
私たちの認識を変えることは犯罪を防ぐ入り口だと思っています。


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