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にんげんカンケー

「しかし今の世の中のことは、これまでの道徳や何かで律するわけに行かない。

永井荷風

「濹東綺譚」




祖母より上の時代には、妾だとかなんだとかいった人間関係があったそうな。

祖母は気の強い、今でいうフェミニスト気質なひとだった。女学校をでて、結婚したくないと言って昔ではありえない、20過ぎても嫁に行かなかったそうだ。でも、両親が亡くなって、親戚どもに(ワタシは祖母方の身内はだいっきらいで敵!)追い出されるように嫁に出された。祖父は今で言う、大層なイケメンだったそうだ。そして、結婚して早々に事故で亡くなったそうだ。そうしたら、祖父の子どもだというひとが8人、でてきたという。祖母は母と一緒に二人の子どもを育てたそうだ。そのうちの一人を、ワタシは知っている。

彼女は本当の母に捨てられたという事実をわかる年頃で祖母にひきとられ、母と育った。中学を卒業と同時に家出をして、結婚するときに戻ってきたそうだ。でも、祖母は結婚を許さなかった。ワタシが小学生のときに母がワタシと同じ名前の親戚がいる、会いに行くかと言って東大阪の方まで足を運んだ。彼女は祖母を恨んでいたかも知れないが、幼かった母を愛していて、ずっと連絡していたようだ。そして、ワタシと同じ名前を娘につけたんだろう。ワタシの親戚になる子どもはワタシと数ヶ月違いの生まれだった。初めて見た彼女の家族は、何というか、異世界だった。祖母が結婚を反対したことは後から知ったことだけど、ワタシでも反対するだろう。彼女の夫、そのおじさんは長袖の裾からも見える入れ墨で、テレビでもチャンネルを変えてしまう世界の人なんだとわかった。母が呼ばれたのは、彼女が脳腫瘍で、手術をする前の日だったらしい。もし、何かあったら、そう、彼女の子どもはワタシのきょうだいとなる、そのためにワタシは会うかときかれたんだ、

手術は成功して、ワタシと同じ名前のこどもとはそれきり会ってない。会わないように祖母や母がしていたんだろうし、祖母亡きいま、母は絶対に会わしてくれないだろう。



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