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JR西日本が赤字路線の収支を公表 対象路線の取り組みは? ③ 山陰本線

前回は関西本線、きのくに線、播但線、加古川線について紹介させて頂きました。今回は山陰本線を紹介します。日本最長距離を誇る長い路線ですので、今回は5つの区間に分けて紹介させて頂きます。前回の記事は下記リンクからご覧頂けます。


山陰本線の概要

先程も申し上げましたが、山陰本線は非常に長い路線ですので、まず山陰本線の概要を紹介させて頂きます。
 山陰本線は、京都府京都市下京区の京都駅から山口県下関市の幡生駅に至る路線です。また、山口県長門市の長門市駅から仙崎駅までの支線もあります。
 電化区間は京都駅~城崎温泉駅、伯耆大山駅~西出雲駅の区間です。今回収支が公表されたのは全て非電化区間です。それではひとつずつ見ていきます。

城崎温泉~浜坂

(この区間で運用されているキハ47形気動車)
【城崎温泉~浜坂間の現況】
この区間の普通列車は1~2時間に1本普通列車が運転されています。多くは豊岡~浜坂の運転ですが、豊岡~香住の区間列車や、城崎温泉を始発、終着とする列車もあります。また、鳥取~豊岡を直通運転する列車もあります。特急列車は1日3往復特急はまかぜ号が大阪~香住、浜坂、鳥取間で運転されています。
観光客向けの臨時列車として土休日に「快速 山陰海岸ジオライナー」が鳥取~豊岡間で1往復運転されていますが、現在は新型コロナウィルスの影響で運休となっています。冬季には、「特急かにカニはまかぜ」が大阪~浜坂で運転されます。
 この区間の輸送密度は693(2019年度)、営業係数は850(2017~19年度平均)、収支は11.8億円の赤字(2017~19年度平均)となっています。

【城崎温泉~浜坂の今後】
香住・浜坂といえばカニが有名です。このため、沿線には民宿がとても多いのがこの区間の特徴です。京阪神地区の駅構内で、カニと一緒にはまかぜ号を宣伝するのもひとつの策なのかなと思います。

浜坂~鳥取

(右がこの区間で主に運用されているキハ121系)
【浜坂~鳥取の現況】
この区間の普通列車は1~2時間に1本程度。1日に14往復運転されています。他の線区と比べるとそこそこの本数がある印象です。このうち2往復は城崎温泉に直通しています。特急列車は1日1往復特急はまかぜ号が大阪~鳥取で運転されています。 
 この区間の輸送密度は921(2019年度)。営業係数は849(2017~19年度平均)、収支は8.5億円の赤字(2017~19年度平均)となっています。鳥取駅発着ということで、そこそこの利用者がいるようです。

【浜坂~鳥取の今後】
ダイヤ上の問題点ですが、大阪発の特急はまかぜ1号が浜坂駅に13:09に着きます。浜坂始発の鳥取行き普通列車は浜坂13:05発となっており、僅差で逃げられます。非常に使いにくいダイヤになっているので、ここは改善するべきだと考えます。

出雲市~益田

(写真は益田駅)
【出雲市~益田の現況】
出雲市駅の隣の西出雲駅までは電化されており、出雲市~西出雲はかなりの本数が確保されています。
この区間の主力は、鳥取・米子~益田を結ぶ「特急 スーパーまつかぜ」、鳥取・米子~新山口を結ぶ「特急スーパーおき」です。
 西出雲~益田間の普通列車は1日11~12往復運転されています。また、2022年3月まで米子~益田にて快速アクアライナーが運転されていましたが、廃止されています。ただし、列車密度が減ったことにより特急列車の所要時間が短くなっており、利便性はさほど低下していないと思われます。
 この区間の輸送密度は1177(2019年度)、営業係数は446(2017~19年度平均)。収支は34.5億円の赤字(2017~19年度平均)でした。赤字額は今回発表された路線の中では一番多くなっています。特急列車のコストが嵩んでいるのでしょう。

【出雲市~益田の今後】
島根県は人口減少に歯止めがかかっていないのが現実です。しかし、 この区間は他の線区と比べると利用の減り方は緩やかな印象です。2001年に行われた高速化事業のいい影響が出ていると言えます。しかし、前述の通り特急列車を運行するためのコストが嵩んでいることから、何らかの対策をする必要はあるでしょう。

益田~長門市

(写真は長門市駅)
【益田~長門市間の現況】
この区間は、山陰本線の中でも本数、輸送密度が一番少ない区間です。1日8往復程度運転されており、長門市~東萩、木与間や益田~東萩の区間列車も設定されています。これは地域の学校の登下校の時間に合わせたものとなっています。土休日には観光列車「〇〇のはなし」が新下関~下関~東萩間で運転されています。
 過去には特急いそかぜ号が益田~下関間で運転されていましたが、2005年に廃止されています。
 この区間の輸送密度は271(2019年度)、営業係数は1314(2017~19年度平均)。収支は11.5億円の赤字(2017~19年度平均)でした。

【益田~長門市間の今後】
この区間には、全国的にも有名な観光地「萩」があります。2019年度の萩市の観光客数は450万人となっています。しかしこの区間の輸送密度は271ということで、観光客の大半は別の交通手段で訪れているということがわかります。今後もこの区間を存続させるには観光客が山陰本線を使って訪れるような策を練る必要があると思います。(出雲市や厚狭から直通列車を走らせるなど)

長門市~小串・仙崎支線

(写真は仙崎駅)
【長門市~小串、仙崎の現況】
 長門市~小串間は1日11往復普通列車が運転されています。また、土休日には観光列車「〇〇のはなし」が運転されています。仙崎支線はほとんどの列車が美祢線経由で厚狭駅まで直通運転を行っています。
 輸送密度は351(2019年度)、営業係数は1208(2017~19年度平均)、収支は9.5億円の赤字でした。

【長門市~小串、仙崎の今後】
この区間には乗車人員が1桁の駅が多数あります。この区間に限った話では無いのですが、地元の利用者を増やすことが鍵となりそうです。

今回は山陰本線の現状について紹介させて頂きました。
暗い話題が多くなってしまいましたが、山陰には魅力のある観光地が沢山あります。コロナ禍が明け、山陰が、そして日本が元気になることを願っています。
次回は姫新線を紹介させて頂こうと思っております。

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