きっとこれが別れじゃないでしょうと信じた日々のこと
ワンフレーズ聴いただけで涙が勝手に出てくる歌がある。
わたしが留学した国で少し昔に大ヒットして、日本でもリメイクされた映画の主題歌だ。
『あなたは今、わたしのそばにはいないけど、いつか帰ってくることを信じて待っているよ。』というような内容の歌である。
留学中、付き合っていた留学先の国の彼に振られそうになった時、必死に引きとめて、なんとか二週間後にまた話し合うということになった。
二週間、できることはなんでもしなきゃいけないと思った。朝は早く起きて運動、学校に行くまでも勉強して、学校から帰ってきてもまた運動、そして勉強、朝食と昼食は自炊して、夜はサラダだけで絶対炭水化物を食べない。そして日付が変わる前までには眠る。今思えばがんばりのベクトルがおかしな方を向いている気がしなくもないが、その時のわたしはとにかくそれまでの生活をどうにか変えて、少しでも変わったわたしで彼に会わなければと必死だった。毎日なにかしていないと涙が出てきそうだった。
その二週間のうちのある一日に、わたしが住んでいた都市で一番長い路線バスに始点から終点まで乗っていく冒険をした。これは、彼がここに引っ越してきて、すぐにしたことだというのを聞いていたのを思い出し、彼の見ていた景色を知りたくてした冒険だった。
正確には覚えていないけど、二時間半ほどの乗車時間、ずっと冒頭に述べた一曲だけを聴き続けた。この歌を聴きながら、祈ることしかできなかった。
やっと迎えた二週間後に、彼とはまた付き合うことになったが、わたしが帰国する直前に別れてしまい、今では連絡先も知らないほど遠くの存在になった。
その時の感情を覚えていて涙が出るのか、その歌の歌詞とメロディーの切なさに涙が出るのかわからないけれど、ふとした時に聴いてはセンチメンタルになる。
この歌が主題歌の映画は、このセリフで終わる。『偶然とは、努力した人に運命がかけてくれる橋だといいます。』
努力だけでどうにもならないことがあるのは確かだと思うけど、わたしはこの言葉をまだ信じていたい。
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