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ベニバナダイコンソウ。


許してみな。
何でも許してみな。
自分を許してみな。
そうしたら見えてくるよ。
ずっと大事に隠していたものが。

だいたい根っこはひとつのとこに繋がっていて
その根っこの大事なとこを守るために
自分に厳しくしてっちゃうんだよ。

だから、ひとつずつ絡まってたとこを
先の細〜い細〜い、できたばっかりのとこから
ほぐしてくんだよ。

いきなりあせって、ごつい根っこから
ほぐそうとしたら、だめだよ。
ちぎれちゃうからね。

ゆっくり、ゆっくりでいいんだから
ほぐしてくつもりで

許してみなさい。


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朝番の笹野さん( 74 )が置いてくれる皆さんの密かな癒し、

イートインテーブルのミニ盆栽。
今日は「ダイコンソウ」だった。

こんもり盛り上がった苔土には
半分にカットされたアイスキャンデーの棒が刺さっている。
表には花の名前、そして裏には花言葉。
ダイコンソウの花言葉は「満ち溢れる希望」「前途洋洋」だった。

ダイコンソウという、まんまな名前にビビりながら
「大根てこんなビビッドな色の花も咲くんですね」と言ったら
「あの大根じゃないよ」と笑われた。

「ダイコンソウの 『コンジョウバ』 が大根の葉っぱに似てるから、そういう名前になったの。野菜の大根はアブラナ科で、ダイコンソウはバラ科よ」

なるほど、楚々とした少女とキリッとお嬢。

「『コンジョウバ』って何ですか」
可憐な花にはそぐわぬ力強い一語だ。

「根性ある葉っぱよ。茎が伸びてそっから葉っぱが出るんじゃなくて、地面からはえてるみたいな葉っぱ。ほら、タンポポとかピターっと張り付いたみたいな葉っぱあるでしょ。春に咲くお花は、地面に葉っぱが張り付いた状態で冬越しするのもあるから『根性あるなぁ〜』って意味でついたんじゃない?」

そうだったのか。小さな植物でもなんと逞しいこと。
わたしはその日、ダイコンソウを見るたびに
「逞しく生きよう」と思ったのだった。



嘘だった。

帰宅後、しみじみと「根性葉」について語ったら母に爆笑された。

「アンタ何言ってんの。根性葉じゃなくて『コンセイヨウ』、『根生葉』よ。コンジョウって......ウヒャヒャ」

笹野さん。違ったよ、笹野さん。
でも、笹野さんには「根性葉」のが似合っている。
そして、わたしも「根性葉」の方が気に入っている。

地表でがんばる根性葉の下に、深く入り組んだ根っこがある。
その絡まった根っこを、今日もゆっくり、ほぐしていくのだ。

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