Hanadaと世界日報、そして論壇net

カルト教団や関連団体のサイトを見るのは正直、気分の良いものではない。
それらのサイトはアーカイブを貼ったので、先方に知られずに済む。2頁目なども、アーカイブのままで読める。

2022年8月、教団への厳しい視線の中でも連携

2022年8月26日発売の『Hanada』の10月号の内容が明らかになると、統一協会統一教会世界平和統一家庭連合)との関係が話題となった。韓国発祥のキリスト教系カルト教団だ。

飛鳥新社

【総力特集 統一教会批判は魔女狩りだ!】は以下の4記事からなる。

小川榮太郎 "安倍貶め報道"は仕掛けられた歴史戦
藤原かずえ 山上"礼讃"の報道テロリズム
世界日報取材班 デマを拡散させる石垣のりこ立民議員の居直り
佐藤優 旧統一教会問題と日本共産党

『世界日報』といえば、統一協会の日刊紙であり、機関紙と見做す事もある。
安倍晋三の死を境に統一協会への批判が高まっている。自前の発信力の弱い所に対してなら、発言の場を提供する意義もあろう。しかし世界日報などを持っており、他所に場を借りる必要はない。
内容も教団の自己弁護であり、これでは蜜月、癒着と思われても仕方がない。

文章で堂々と「世界日報取材班」の記事を宣伝

世界日報、2022年8月27日付、同日の状態

世界日報の方でも、Hanadaの記事を材料として教団の自己弁護に努めている。署名は森田 清策
しかも「世界日報取材班」の記事に加え、同じ特集から更に2つの記事を採り上げている。合わせて、月刊『Hanada』編集部@が文字を打つ手間を掛けて紹介した3つに当たる。
特集の内で、佐藤優氏による記事を除けば全て世界日報で採り上げるとなると、特集の構成からして世界日報が協力したのではないか、とさえ思えて来る。
いづれにせよ発売日の翌日であり、息の合っている事だ。

Hanadaと世界日報が連携した2019年7月

いつから仲が良いのだろうか。

Hanadaプラス、2019年10月31日付

世界日報「しんぶん赤旗」問題取材班、とある。「勝共」らしい記事だ。

先立ち、紙では同年7月26日発売の9月号に載っていた。

飛鳥新社

【全国徹底調査!】
世界日報「しんぶん赤旗」問題取材班 全国自治体を蚕食 血税で赤旗購読の異常

少し題が異なるが、同じ内容だろう。

同号には教団の幹部による記事もあった。

【総力大特集 ざんねんな朝日新聞】
(略)
鴨野守 出会い系サイトまで運営 朝日新聞の恥ずかしい副業

Hanadaの広告を見るに、鴨野氏は「ジャーナリスト」とある。これだけでは判らないが、下の如し。

FNNプライムオンライン、2022年8月10日付

旧統一教会の関連団体、世界平和連合富山県本部の鴨野守事務局長
(略)
2009年から8年間、統一教会の広報局長

富山県知事選への関与を含めた、地方行政への浸透の一端が記されている。

世界平和統一家庭連合 NEWS ONLINE、2015年5月27日の状態

教団のニュースレター『VISION 2020』第46号(2015年1月15日号)から同年2月に転載したらしい。「広報局長 鴨野守」とある。

この様に、2019年9月号は統一協会の色が濃かったと言えるだろう。

鴨野氏は、この後もHanadaに登場する。簡単に挙げておく。

2021年4月号
古田昭博(舟橋村生活環境課長)日本一小さな村の大きな挑戦 (聞き手:鴨野守

2022年5月号
水野辰雄(元ネパール大使)×鴨野守 人口減少を悪化させる「中絶野放し」

Hanadaと世界日報の連携は2019年4月からか

更に早い例があった。

飛鳥新社

月末からの連休の為か、4月23日に発売。下の筆者が教団関係者。

【歴史的スクープ】
藤橋進 直筆御製発見!昭和天皇の大御心

下は、藤橋氏の記事を花田紀凱編集長が簡単に紹介したもの。

Hanadaプラス、2019年4月30日付

藤橋氏の記事の冒頭を写真で納めており、肩書「世界日報編集局長」とある。

世界日報、2019年4月30日付、2022年8月30日の状態

Hanadaの先の記事を紹介し、「筆者は小紙編集局長」で結ぶ。

世界日報では2019年1月3日から4回にわたる記事だったとの事。それを纏めてHanadaに載せたのだろうか。

Hanadaが2016年に創刊すると、森田氏などが世界日報で好意的に紹介する例は前からあるが、論調が近いなら自然と言える。それくらいでは連携とまでは言えないのではないだろうか。

2019年4月より早い関係明示は確認できていない。この号の企画まで遡れば、連携の時期は更に遡るのだろう。
勿論、見えない部分での結び付きは知りようがない。

Business Insider Japan、2018年10月29日付

『WiLL』の最新号の発行部数は8万部。「Hanadaは6万部、正論は5万部と聞いています」(出版関係者)。

日本雑誌協会による2009年1~3月の『正論』の印刷証明付部数が6万5650であり、10年ほどの漸減と見れば妥当な数字と思える。Hanadaの数も合っているのではないか。
そして実売は半分くらいだろうか。

統一協会の信者は6万人ほど、10人に1人が買う位でも大きいのではないだろうか。組織で買わせているのかどうかは知らないが、世界日報で好意的に紹介すれば効くだろうか。

論壇netの宮本タケロウ氏、Hanadaに寄稿

統一協会の色の濃い2019年9月号には、こんな記事もあった。

【特集 疑惑の『主戦場』】
藤岡信勝 『主戦場』指導教官 中野晃一上智大学教授の重大責任
宮本タケロウ
(上智大学大学院博士課程所属) ミキ・デザキ氏は研究倫理違反

宮本タケロウ氏と言えば、論壇netの執筆者の一人だ。

サイト名が度々変わっており、当時は、論壇net -rondan-
2019年7月26日付、翌27日の状態(表示は26日)

発売日に早速、記事化している。「文/宮本タケロウ」とあり、Hanadaに載った記事の紹介だ。映画『主戦場』への批判。
ソース表示を見ると、2019-07-25T22:00:00Z、とある。Zは協定世界時であり、ロンドン辺りが基準。日本は9時間進んでおり、翌日の7時。そしてコメントが10時に寄せられている。

本の写真を載せている。IMG_20190724_20・・というファイル名からすると、24日に撮ったのだろう。

画像1

表紙には鴨野氏の名

目次

目次には世界日報「しんぶん赤旗」問題取材班
宮本氏、同じ特集で藤岡氏、論壇netと縁の深い百田氏も

さて、宮本タケロウとは、どの様な人物なのだろうか。

「文/宮本タケロウ」の右にはツイッターのURLを埋め込んである。
論壇netには2019年5月13日に初登場。ツイッターも、この頃に始めた様だ。しかし年末に凍結され、暫くして別アカウントを立てた。
アーカイブの7月辺りは残りが悪い。

宮本タケロウ@0PhS0i8HbCVrKV7: 2019年7月5日の状態(表示は4日)

Webライター。 千葉県南流山在住。中国文学を少々。 臨済宗のお寺の息子に生まれましたが、一人で上京。 論壇netに寄稿しています。 http://rondan.net 改名しました(宮本竹比露→宮本タケロウ) 関心のテーマ: 保守論壇、皇室、宗教、精神世界、不動産投資。トルコ語と韓国語読めます。

プロフィールの真偽は不明だが、凍結まで大きな変化は無かった。
なお、アイコンは風間俊介であり、本人ではない。

Hanadaの記事では大きく異なる。元は縦書き。

みやもと たけろう
一九八四年、福岡県生まれ。大学卒業後、在外公館勤務。発展途上国の開発コンサルタント等を経たのち、上智大学大学院入学(博士前期課程)。現在は研究活動の傍らwebライターとして皇室、保守論壇、宗教問題を中心に執筆・評論活動を行っている。主な寄稿先は論壇net(https://rondan.net/)。

生年があり、色々と詳しい。「上智大学大学院」は重要。
とはいえ結局、論壇net以外での表現活動は定かでない。

この後にも言える事で、論壇netの後継サイト群を除くと活動の気配がなく、そこでも次第に名を見なくなった。もはや過去記事が使い回されるくらいだ。
そして後継サイト群は、誰であれ署名を外す傾向にある。

実績に乏しい宮本氏にHanadaが書かせたのは何故だろうか。
7月下旬の論壇netは廃れており、Hanadaの出た翌27日には後継の、菊ノ紋ニュースが始まる。
論壇netは過去記事の使い回しも増え、荒れ果てて8月12日で止まり、翌日に閉じた。

しかし前号の出た6月下旬には秋篠宮ご夫妻の訪欧を控えた会見があり、閲覧数も多く、コメントの応酬も中身があった。
流行っているサイトゆえ、そこの執筆者を起用すればHanadaの宣伝になると思ったのだろうか。
論壇netでの宮本氏の記事には「本屋さんへGO!」という一節もある。

宣伝であれば、金を出すだろう。例えば、Hanadaから宮本氏への稿料が破格であり、論壇netから宮本氏への稿料が格安であれば、実質はHanadaから論壇netへの資金援助と言える。

Hanadaの『主戦場』批判と連携する論壇net

先の宮本氏の記事と同日に、下が出た。

7月26日付、翌27日の状態(表示は26日)

宮本氏の記事の次の次に当たる。ソース表示を見ると、2019-07-26T00:11:39Z、とある。9時過ぎに出た様だ。そしてコメントが10時過ぎに寄せられている。

『主戦場』の公開で言及の増えた「強制連行」という語の恣意性を主張する藤岡信勝氏を支持する記事と言える。宮本氏と並んで目次に名があった。
そして後半では、朝鮮人への批判にも使える、と主張している。
しかし引用に問題がある様だ。

松浦寛氏は、百田尚樹氏の著作『日本国紀』を追及していた頃の論壇netと連携していた。
皇室誹謗サイト化の後は、管理人の「ろだん」氏と交流の絶えた者も多い様だが、松浦氏とは続いていた。
ろだん氏の呟きが消えており、アカウント自体も同年末に消えたので解りにくくなっているが、ろだん氏に向けたもの。
9時過ぎに記事が出るや即座に、根拠なしと指摘したのだろう。

「オランダ政府が1994年に発表した資料」、「和訳:オランダ軍法会議資料」とあるのだが、どこから引いてきたのだろうか。ろだん氏が説明した気配がない。

署名の「文/一ノ瀬 隆」は、この記事のみ。ソース表示では「ろだん(管理人)」であり、自分で書いたのだろう。
内容の酷さを恥じるなら、「文/編集部」や、それも無しとする手もあったろうに、名を使い捨てた理由が解らない。外部の者と印象付けたかったのだろうか。

* * * * *

論壇netの2記事、そしてHanadaの特集は映画『主戦場』への疑問だ。
2019年春以降、Hanadaは批判を続けていた。
読んではいないが並べておく。

2019年6月号
山岡鉄秀 従軍慰安婦映画の悪辣な手口

2019年7月号
山岡鉄秀 プロパガンダ映画『主戦場』の偽善

2019年8月号
藤岡信勝 慰安婦ドキュメント映画『主戦場』デザキ監督の詐欺的手口

2019年9月号
藤岡信勝 『主戦場』指導教官 中野晃一上智大学教授の重大責任
宮本タケロウ(上智大学大学院博士課程所属) ミキ・デザキ氏は研究倫理違反

2019年11月号
藤岡信勝 上智大学腐敗の構造

2020年1月号
藤岡信勝 ローマ教皇への直訴状―映画『主戦場』をめぐって

山岡鉄秀氏で始まり2回、そして藤岡氏が引き継ぎ4回。毎号1記事で、2記事だったのは9月号の一度のみ。
藤岡氏の11頁に対し、宮本氏は5頁であり、脇役感がある。

実績の乏しい宮本氏だが、強みを持っている。『主戦場』は監督のミキ・デザキ出崎幹根)氏の修士論文に当たる映像作品だ。
しかも宮本氏と同じ上智の大学院であり、容易に規定を知り得る立場だ。

藤岡氏の記事から最後を除く3つは、監督と指導者の中野晃一教授、そして上智大学を批判している。
最後も、カトリック系の上智への批判だからこそ、ローマ教皇への直訴状だったのではないだろうか。
上智に対する外からの批判に説得力を持たせるべく、内部からの声を届ける者として、藤岡氏なり、Hanadaなりから頼まれたのか。
因みに、松浦氏も上智の教員だ。

この「一ノ瀬氏」の記事もまた、Hanadaと連動したと言えるだろう。
Hanadaから金を貰って頼まれて書いたかどうかは知らないが。

Hanadaも、論壇netも、規模や支持に比べて資金の潤沢な印象があった。元を辿れば、統一協会からの厚意を受けていたのだろうか。

お読み頂き、ありがとう御座います。『論壇net』が閉鎖して時も経ち、世の関心も薄れるなかで『菊ノ紋ニュース』など別のサイトが同じ問題を繰り返しているのが残念です。ろだん氏たちの悪事を妨げるべく、ご支援を頂ければ幸いです。