★今日の問題★

BはAと内縁関係に入り、Aの子Cを懐妊したが、Cの出生前に、AはDの運転する車にはねられて死亡した。そこで、Aの親族であるEがDと示談交渉を行い、Cを含めて、Aの遺族に対する賠償金等として一億五千万円支払い、将来、Aの遺族はこの事故について一切請求をしない旨の和解契約を締結した。
ところが、一億五千万円の賠償金等はすべて、Eが受取ってしまい、出生したCには一円も渡らなかった。
この場合、Cは、改めて、Dに対して、損害賠償請求ができる。

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒

10秒

胡桃「10秒経過。どうかしら?」
建太郎「うーん。この事例では、Cは、Eに対して、お金を払えと言えるだけで、Dは無関係なんじゃない? 」
胡桃「ブー。間違い。そういう話じゃないのよ」
建太郎「え。そうなの? 」
胡桃「まず、胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなすとされているわけね」

民法
(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
第七百二十一条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。

建太郎「うん。条文通りだな」
胡桃「ただ、この条文の意味は、出生後、不法行為時に遡って権利能力を取得するという意味にとどまるわけで、出生前に損害賠償請求権を行使できるという意味ではないのよ」
建太郎「すると、EがCの分も含めて、Dと示談交渉を行っても、Cには何の意味もないということ? 」
胡桃「まさにその通りなのよ。判例も次のように述べているわ」

胎児である間は、代理人は存在しえないため、EがDとした和解契約の効力は、Cに対して何らの効力も生じない。(大判昭和7年10月6日)

建太郎「なるほどな。すると、Cは、改めて、Dに対して、損害賠償請求ができる。と」
胡桃「そうよ」

※問題は、ノベル時代社の判例六法 丸暗記100問ドリルシリーズを利用しています。下記サイトから入手できます。

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