★今日の問題★

Aが所有する甲土地について、Bとの間で賃貸者契約が締結され、Bは甲土地上に乙建物を建てた。
その間に、AはCとの間で甲土地を売り渡す旨の売買契約を締結し、Cは甲土地について、所有権移転請求権保全の仮登記をした。その後、Bが乙建物について、建物保存登記をした。
この場合において、Cが仮登記に基づいて本登記をし、Bに甲土地の明渡しを求めたときは、BはCに対抗することができない。

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒

10秒

胡桃「10秒経過。どうかしら?」
建太郎「ちょっとまって、この事例は何が言いたいの? 何の話か分からん」
胡桃「この事例は、民法の知識だけでは解けないわね。借地借家法の条文を確認するわよ」

借地借家法
(借地権の対抗力)抜粋
第十条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

胡桃「本来、土地を借りているという権利は、賃借権の登記をしなければ、第三者に主張できないのよ。だけど、特例として、借地借家法にこの条文が設けられているわけね」
建太郎「うん。土地の賃借権の登記なんて、利用されていないからだっけ」
胡桃「そうね。だから、建物の登記さえしていればいいというわけね。そして、この事例では、Bが乙建物について、建物保存登記をしたのは、Cが甲土地について、所有権移転請求権保全の仮登記をした後だったということね」
建太郎「うん。それなら、Cが登記した時は、Bの賃借権はなかったものとみなしていいんじゃないの。Bがその後で、乙建物の建物保存登記をしても遅いですよってことじゃない」
胡桃「そうね。それでいいのよ。判例も次のように述べているわ」

判例も、建物所有を目的とする借地権の設定後、地上建物の保存登記前にその土地の所有権移転請求権保全の仮登記がされた場合、借地権者は、仮登記に基づいて本登記をした者に対し、借地権を対抗することができない。としている。(最判昭和42年8月24日)

胡桃「つまり、設問の事例では、Cの行為は、仮登記制度を適法に利用しているにすぎず、権利の濫用に当たらないということなのよ」
建太郎「あ。そういうことか」


※問題は、ノベル時代社の判例六法 丸暗記100問ドリルシリーズを利用しています。下記サイトから入手できます。

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