★今日の問題★

Aは、保佐開始の審判を受け、保佐人としてBが付されている。
ところで、Aは、次の二つの債務を有している。

1、既に消滅時効が完成した甲債務。
2、弁済期を徒過しているものの、まだ消滅時効が完成していない乙債務。

甲債務と乙債務について、それぞれの債権者から、債務を承認するように求められた。
この場合、AがBの同意を得ずに承認すると、いずれの債務についても、Aには弁済の義務が生じ、取り消すことはできない。

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒

10秒

胡桃「10秒経過。どうかしら?」
建太郎「これは、まず、条文を思い出さないといけないよな」
胡桃「そうね。この条文よ」

民法
(保佐人の同意を要する行為等)抜粋
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。
二 借財又は保証をすること。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

胡桃「まず、1から。既に消滅時効が完成した甲債務を弁済する義務はあるのかしら? 」
建太郎「甲債務は、消滅時効が完成しているんだろ。だったら、既に、Aには弁済義務がない」
胡桃「そうよ。それでも債務の承認をすると、どういうことになるかしら? 」
建太郎「新たに債務を負担することになるということか」
胡桃「そうなるわ。そこで、判例は次のように考えているのよ」

1、甲債務については、消滅時効が完成しているので、既に、Aには弁済義務がない。
これについて、債務を承認することは、新たに債務を負うも同然であるため、第十三条1項二号が類推適用される。(大判大正8年5月12日)

胡桃「するとどういうことになるか分かるわね」
建太郎「Aが甲債務の承認をしても、取消すことができると」
胡桃「そうね。じゃあ、次に、2、弁済期を徒過しているものの、まだ消滅時効が完成していない乙債務。これは弁済する義務はあるのかしら? 」
建太郎「あるな」
胡桃「じゃあ、乙債務を承認することはどういう意味があるかしら? 」
建太郎「消滅時効完成猶予の効力が生じるんだっけ? 」
胡桃「そうね。それだけことで、新たに、債務が生じるわけではないわね」
建太郎「おう」
胡桃「ということで、判例は次のように考えているのよ」

それに対して、まだ消滅時効が完成していない乙債務について、債務を承認すると、時効中断の効力が生じるが、既に生じている債務については被保佐人自身が管理の能力、権限を有するから、単独でした承認は有効であり、取消しうるものとならない。(大判大正7年10月9日)

建太郎「うん。取消し得るものにはならないと」

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