★今日の問題★

 通説によると、刑事訴訟では、天皇を被告人とする訴えを提起することができると解されている。正しいか?

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒……

胡桃「10秒経過。どうかしら?」
建太郎「民事訴訟は、天皇は象徴だから、天皇には民事裁判権が及ばないんだよな」
胡桃「そうね。刑事訴訟はどうかしらと言う問題ね」
建太郎「うーん。刑事訴訟も同じ考え方なのかな」
胡桃「まず、天皇が刑事訴訟の被告人になったことはないから、判例もないわけだけど、学説は次のように考えているのよ」

 天皇の象徴としての特殊性、さらに、皇室典範第二十一条の「摂政は、その在任中、訴追されない。」との規定を類推適用することで、天皇が刑事責任を問われることはない。

建太郎「摂政は、その在任中、訴追されない。そんな規定があるんだな」

皇室典範
第二十一条 摂政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

胡桃「ちなみに、摂政とは何か分かるかしら? 」
建太郎「藤原道長みたいに、天皇に代わって政治を行う人のことだろ」
胡桃「それは、昔の摂政ね。現在の天皇は政治的な権限はないわけだから、天皇に代わって政治を行う人は必要ないでしょ」
建太郎「あっ。そうか。すると、日本史の摂政と、今の摂政は違うんだ? 」
胡桃「名前は同じでも権限は全然違うということね。皇室典範には次のように定められているのよ」

皇室典範
第十六条 天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。
2 天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。

建太郎「天皇の代わりに置かれる職なんだな」
胡桃「そうよ。それから、日本史では、摂政は天皇家ではなくて、藤原家とかから出ていたわけだけど、現在の皇室典範では、摂政は皇族しかなれないということね」

皇室典範
第十七条 摂政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。
一 皇太子又は皇太孫
二 親王及び王
三 皇后
四 皇太后
五 太皇太后
六 内親王及び女王
2 前項第二号の場合においては、皇位継承の順序に従い、同項第六号の場合においては、皇位継承の順序に準ずる。

建太郎「つまり、天皇の代わりの皇族なんだな」
胡桃「摂政は天皇の代わりに、国事行為等を行う立場になるわけだけど、この場合、摂政は、その在任中、訴追されない。とあるわけね。すると、天皇も当然、訴追されないだろうということなのよ」
建太郎「なるほどな。すると設問は間違いなんだな」

※問題は、ノベル時代社の肢別100問ドリルを利用しています。下記サイトから入手できます。

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