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肺癌闘病14日目の所感 / 癌が小さくなった!&今後の人生について思うこと

一昨日病院に行ったら、直径8cm近くあった肺の腫瘍が、3.5cm程度まで小さくなっていました。2週間前タグリッソ80mgを飲み始めて、副作用の筋肉痛があまりに酷かったので5日目から数日休み、その後40mgに切り替えてまた飲み始めました。トータルでは9日ほどしか飲んでいないのですが、こんなに効くなんてびっくりしました。40mgだとほとんど副作用が出ないため、1ヶ月はこの量で様子を見ることになりました。40mgだと少ないのではないか、80mgより効果が無いのではないかと少し心配ではあるものの、1ヶ月経って効きが今ひとつのようだったらまた80mgで頑張る予定です。

Twitterで報告したらたくさんの方が喜んでくれましたが、友人とこのことについて話した時、これがどういう意味なのかについて結構多くの人が勘違いしたのではないかと気づきました。友人は、腫瘍が小さくなった=治癒に近づいていると思ったらしいのです。しかし、残念ながら癌がステージIVに達しているというのは離れた臓器への転移が起こっている、つまり癌が全身に広がっているということであり、仮に腫瘍が視認できないほど小さくなったとしても、癌は消えません。薬で成長が抑えられているだけなのです。癌は賢いので、しばらくすると薬への耐性を獲得し、再び成長し始めます。

タグリッソでは、何年かで耐性が現れるそうです。短い人では半年と聞きました。そうなると、今度は別の分子標的薬か抗がん剤を試すことになります。そうして選択肢を一つずつ使っていくのだと、医師は言っていました。選択肢はそんなに豊富なわけではないので、タグリッソが効いて本当に安心しました。できるだけ長く効くといいなと思います。

一昨日の夜、YouTubeで癌で亡くなった方のドキュメンタリーを観ていました。その方は20代の白人女性で、癌になるまではアクティブで素晴らしい人生を送っていたそうです。美しく明るい方で、癌との闘病の様子をTikTokで発信していました。ものすごく不謹慎なのは承知の上で、その方が少し羨ましいと思いました。その方は豊かな家庭に育ち、癌になるまでの人生を肯定的に語ることができ、家族やボーイフレンドに支えられていました。私は一人暮らしだし、親とは疎遠だし、お金の不安に苛まれているし、持病があってもともと生活がうまくいってなかった部分があるし、過去を振り返ればしんどい思い出や自己否定でいっぱいです。生きたくてたまらなかった彼女のような人もいるのに、「死ぬなら死ぬでしょうがない」と思っている自分が惨めに感じられました。

とはいえ、(まだ)彼女のように症状や薬の副作用に苦しめられていない現状はありがたいことです。タグリッソが効いたことで、実質的に多少の延命となりました。となると、やはり気になるのは余命です。私は後何年生きるつもりで人生の計画を立てればいいのかと、ここのところよく考えます。70代までは生きないだろうからもう年金は払わなくていいのではないかとか、今キャリアの幅を広げるために通訳学校に通っているけれど、この投資は妥当かとか、人生計画はお金と切っても切り離せません。

以前は余生が何十年もある前提でやっていたけれど、それが大幅に短縮されるとしたら色んなことが変わってきます。想定していた投資と期待するリターンの関係が崩れます。余命が数年の可能性があるとすれば、結局中短期的なことにフォーカスせざるを得ません。少し前までは、近い将来大都市圏に移住しようとか企業に雇用されようとか思っていました。でも癌になってしまったので、その計画は少なくとも短期的にはベストではなくなりました。

治療のことがあるので、当面は病院の近くに住みたいと考えています。幸い今の病院がかなり気に入っているので、しばらく今の土地で暮らすつもりです。ある意味では人生の選択肢が大幅に制限されましたが、制限されることでずっとグラグラしていた中短期的な計画が定まってくるというのは皮肉なものです。どこに住むか、何をするか、私はずっと迷い続けていました。でも、今の私は今の場所で今やっていることを続けるしかない。寂しいような、安心したような、複雑な気分です。


肺癌診断までの経過を書いた有料ノートです。読みものとして面白いという感想もいただいております。長いですが、たくさんの方に読んでいただけると助かります。拡散も大歓迎です。

お仕事ください。


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