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「貼るだけ」で溶液の濃度が分かるシート?!

生命をつかさどる「水」。それは人の暮らし、それを支える産業や自然環境においてなくてはならない存在。でも、様々な姿で存在する「水」の状態を把握し、最適な状態に制御することはかなり難しい。

というのも、産業機器や廃水処理、食品・飲料製品などで行われる環境計測を目的とした化学的液質検査では、必ず液体サンプルの採取や試薬の混合が必要とされてきた。これをするにはどうしても現場のユーザーに手を借りんとあかんから、遠隔から長期的にモニタリングをすることが難しかった。

したがって、遠隔操作を含む現場での長期的かつユーザー の技量を問わない簡単な計測を実現するには、サンプルを採取する必要がない上、反応性の試薬等を投与する必要がない(ラベルフリー)な新たな手法の確立が求められていた。

そこで、中央大学・東工大・阪大の研究グループは、オランダのEindhoven University of Technology、産業技術総合研究所らと共同研究で、水質を測る新たな光センサシートを開発しはった!このシートを配管に貼り付けるだけで、その中を通る液体の溶液濃度を計測することができるらしい!

センサシートのコンセプト/ Credit: 中央大学プレスリリース

センサシートは、 フレキシブルで広帯域の電磁波を吸収するカーボンナノチューブ(CNT)の薄膜と、高分子成分を含む薄膜支持基板、読出し電極から構成されていて、ゴムチューブなど柔らかな素材に貼り付けることができる。さらに、成長する植物や中身の液体が動くことで変形する蛇腹のチューブなどの動きに追従しながら密着することができる

そして、CNT薄膜の特性によって、室温でミリ波からテラヘルツ波、赤外線まで広帯域にわたる光を検出可能な上、70~280%に伸び縮みした状態でも安定して光をセンシングすることができるんやって。

センサシートの概念図/ Credit: K. Li, "Stretchable broadband photo-sensor sheets for nonsampling, source-free, and label-free chemical monitoring by simple deformable wrapping", Science Advances, 2022

また、配管に貼り付けると、内部の液体が発する赤外線放射(黒体輻射)を検出することができるらしい。実証実験では、溶媒からの黒体輻射が部分的に溶質に吸収され、それによって減衰した信号強度から溶質の濃度(水溶液濃度)を計測することができた!グルコースを用いた例では、血中や農作物での濃度に相当する50~2万mg/dL程度の濃度まで計測することに成功しはった。

他にも、流体の温度や粘度、センサーシートの無線式遠隔操作などが可能で、拡張性にも優れている。こうしたアプリケーションを組合わせることで、飲料品製造現場や化学合成プラント、生理食塩水を使用する医療現場などでの品質管理の現場で重宝されるようになりそうね。

研究グループは今後、素子性能や測定手法をさらに改善することで、濃度計測対象となる化合物を明らかにするとともに、生活排水や産業排水、動植物などの体内栄養素といった複数化合物を含む液流を対象としたモニタリングに挑戦していくつもりなんやって。

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abm4349


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