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湘南の本|『なぎさホテル』伊集院静


湘南が舞台となっている本を読むのが好きです

備忘録も兼ねて簡単にご紹介します



本の紹介


『なぎさホテル』 伊集院静
小学館文庫 2016年(単行本 2011年)

作家・伊集院静の原点が綴られた自伝的随想
 1978年冬、若者は東京駅構内にいた。足元のトランクには数枚の衣類、胸のポケットにはわずかな金しかなかった。入社した広告代理店も一年半足らずで馘首され、酒やギャンブルに身を置いた末に、東京での暮らしをあきらめていた。生家のある故郷に帰ることもできない。
 そんな若者が、あてもなく立ち寄った逗子の海岸に建つそのホテルで温かく迎え入れらえる。
「いいんですよ。部屋代なんていつだって、ある時に支払ってくれれば」
 見ず知らずの自分を、家族のように受け入れてくれる“逗子なぎさホテル”の支配人や副支配人、従業員たち。若者はそれからホテルで暮らした七年余りの日々の中で、小説を書きはじめ作家デビュー、大人の男への道を歩き出す――。
 作家・伊集院静の誕生まで、若き日に向き合った彷徨と苦悩、それを近くで見守ってくれた人々との出逢いと別れ。名門ホテルは平成元年にその歴史に幕を閉じているが、目の前に海の広がるあの場所で過ごした時間は、今でも作家の夢の中に生き続けている。作家デビュー前夜からの大切な場所と時間を振り返り、作家としての原点を綴った貴重な自伝的随想。巻末には、文庫化にあたり書き下ろされた「あとがき」を追加収録。

https://www.shogakukan.co.jp/



感想など


逗子海岸にあった逗子なぎさホテル(1926~1989年)が舞台となっている


これは伊集院さんの自伝なのだが・・・

本当にこんな人生があるのだろうか?

東京での暮らしがうまく行かず、あきらめて故郷の山口へ向かうはずの東京駅で、なぜか関東の海を一度見ておきたくなり、ふらっと逗子へ向かう

逗子の海岸で、たまたまなぎさホテルの支配人に声を掛けられ、そこから七年間ホテルに住まわせてもらう

そして、その間に少しずつ作家としての道を歩み始める


自分をうまく見せようとする表現は一切なく、酒とギャンブルが好きで、お金には無頓着、そしてやや暴力的な一面もある人物として自身を描いている

こんな人が近くにいたら、とても友達になりたいとは思わない・・・はずなんだけど、なぜか周りの人が放っておかない

伊集院さんというのは、きっとこの本では表現されていない、とても魅力的な人物なのだろう、と想像してしまう


また、なぎさホテルにいた当時の伊集院さんは、デビュー前後の夏目雅子さんと一緒に過ごしていた時間も多かったようだ

この本の中にも「M子」として登場する

だけど、あまり詳しく触れられていません

「周囲の人への配慮もあり、彼女について執筆はできない」と書いてありました

主に執筆時点のパートナー(篠ひろ子さん)に配慮しての事でしょう



この本には、人との出会い、生と死、という大きなテーマがあるように感じます

伊集院さんが大切な人を亡くしてしまう話がいくつか出てきます

人の死は生きている者のためにある

第十五章 正午の針

これがこの本を読んで一番強く印象に残った言葉です

偶然にも同じ時間に生を得た大切な人との時間を、当たり前に存在するものだと思わず、もっと大事にしよう(日々の選択の中で意識してそうしよう)

そんな感情が湧いてくる一冊でした


逗子海岸・国道国道134号
逗子なぎさホテル跡地はこの先右側

逗子なぎさホテルの跡地は、現在はすかいらーく系のファミリーレストラン(ラ・オハナ 逗子海岸店/夢庵 逗子店)になっています

あの近くに行くたびに『なぎさホテル』の物語を思い出してしまいます





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