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雑記|江の島を散歩して気が晴れた話

仲見世通りの小さな噓


鬱陶しいことが立て続けに起こり、気分が滅入っていたある日

気晴らしに江の島をぶらぶらと歩きに行った


仲見世通りを通って稚児ヶ淵まで行き、少し写真を撮って、また同じ道を引き返してきた

多くの人で賑わう観光地を歩き、行き交う人々の楽しそうな表情を見ていると、自分の悩みが小さなことのように思えてくる


そろそろ帰ろうかと仲見世通りを下っている時

三十代くらいの女性がひとり、私の少し前を歩いていた

女性は占い屋の看板に目を留め、足を止めた

どうやら占いに興味があるらしい


その瞬間、女性のスマートフォンが鳴った

女性は画面を見て、通話ボタンを押した

「はいはい、どうした?・・・あ、、うん。今からごはん食べるところ」


誰がどう見ても占い屋に入るところだったが、女性はさらりと噓をついた

親し気な口調から、通話の相手はおそらく彼女の家族なのだと感じた

親かもしれないし、夫かもしれない

大きな声で話すから、聞きたくなくても聞こえてしまう


「しらす丼食べるの。『ちょびっと』で」

そう伝えると通話を切り、占い屋に入って行った


いやいや、違うから!

と、私は心の中でツッコミを入れた


そこは食堂ではなく占い屋だし

しらす丼で有名なのは「ちょびっと」ではなく「とびっちょ」だ

二重で間違ってるよ、と思った


わずか10秒ほどの出来事だったが、占い屋の前を通り過ぎた後、しばらくしてからジワジワと笑いがこみ上げてきた




20年前の記憶


この光景には既視感があった

かなり古い記憶だが、確かにどこかで見たことがあった

私は記憶をたどった


そして20年くらい前の出来事を思い出した

八王子のアウトレットモールに行った時の話だ


目的の買い物を終え、そろそろ帰ろうかと歩いていた時

三十代くらいの女性がひとり、私の少し前を歩いていた

女性はアパレル店のディスプレイに目を留め、足を止めた

どうやら気になる商品があるようだった


その瞬間、女性の携帯電話が鳴った

女性は画面を見て、通話ボタンを押した

「はいはい、どうした?・・・わたし?夕飯の買い出し中」


誰がどう見てもアパレル店に入るところだったが、女性はさらりと噓をついた

親し気な口調から、通話の相手はおそらく彼女の家族なのだと感じた

直感的に彼女の夫だろう、と思った


今どこにいるのかと尋ねられたのだろう

「今?・・トコスコ。ピザでも買って帰るね」

女性はそう伝えると通話を切り、アパレル店に入って行った


いやいや、違うから!

と、私は心の中でツッコミを入れた


ここはアウトレットモールだし

この近くにあるスーパーは「トコスコ」ではなく「コストコ」だ

二重で間違ってるよ、と思った




散歩っていいよね


それぞれどういう事情があってウソをついたのかは知らない

きっと優しいウソなのだろう

そう思ったが、根拠はない



江の島からの帰り道

弁天橋を渡りながら茅ヶ崎方面を見ると、雲の隙間から光芒がさしていた

綺麗な風景だな、と思って、写真を一枚撮った


Angels Ladder|江の島 2023


西の空に広がる風景を眺めながら、やっぱり散歩っていいな、と思った

観光を楽しむ人々の表情

通りすがりに聞いた女性の話と、それにつられて出てきた古い記憶

弁天橋から見る光芒

小さな出来事や何気ない風景に癒され、滅入っていた気分に光が差したような気がした




長文を読んでいただき、ありがとうございました


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