「現代J-POPにおけるNETFLIXの役割」2022/1/20

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・宇多田ヒカルのNEWアルバム「BADモード」が良い。昨日(1月19日)の配信開始からヘビーローテーションしている。多くのリスナーに当てはまりそうな感情、感覚を平易ともとられかねない歌詞に宿しつつ、卓越した歌唱力で説得力を持たせている、気がする。私ごときがコメントをするのも憚られるくらい凄いアルバムだ。

・配信開始が1月19日で、CD販売が2月23日と公開から販売まで1ヵ月ズレがある商業形態も面白い。配信をプロモーションの一方法として捉えての展開方法なのだろうか。圧倒的なファン、知名度と新作のクオリティが担保されていないと中々踏み切れないやり方な気もする。


・表題曲「BADモード」のこの一節が気になった。

メール無視してネトフリでも観て
パジャマのままで
ウーバーイーツでなんか頼んで
お風呂一緒に入ろうか

・「ネトフリ」「ウーバーイーツ」、令和初頭を生きる私たちの日常に溶け込んでいる単語だ。印象がなかったので、彼女が商業サービスを名指しで歌うことに少し驚いた。まぁ、日清カップヌードルのことも歌ってたし今更か。歌詞の文脈では、リラックスした家庭空間におけるアイテムとしての「ネトフリ」「ウーバーイーツ」だ。


・ふと、「NETFLIX」がJ-POPでどのように歌われてきたか気になった。この楽曲以外でこの単語が使われた例を知らなかったので。

・歌詞検索サイトの中でも特に楽曲掲載量が多い(ように思われる)サイト「うたてん」を使う。

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・以上が歌詞中に「NETFLIX」が登場した楽曲。

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・以上が歌詞中に「ネットフリックス」が登場した楽曲。

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・以上が歌詞中に「ネトフリ」が登場した楽曲。

・あくまで検索で出てきた限りだが、「NETFLIX」26曲、「ネットフリックス」2曲、「ネトフリ」6曲、計34曲が挙がった。思ったよりあるな。面倒なので、これらの単語、サービスへの呼称をまとめて以下「ネトフリ」と表記する。


・単語「ネトフリ」使用曲の中で初出は、2015年8月26日にリリースされたエグスプロージョンの「Netflix来航」だった。以下その歌詞。

ネネネネネネネネネ ネー!
ネネネネネネネネネ ネー!
ネネネネネネネネネ ネー!
ネネネネネネネネネ ネー!
ネネ ネットフリックス
(中略)
映画を返すの忘れて「延滞料40ドルです」
バカバカしてくて始めちゃったよ
ネトフリ ネトフリ
あれ観たい!今すぐ観たい!
「オリジナルのオモシロいヤツね」

・ど直球だ。

9月2日(水)より日本でのサービスが開始される、世界最大のインターネット映像配信ネットワーク「Netflix」。このほど、本サービスとダンスユニット「エグスプロージョン」のコラボ動画が公開となった。

・なるほど。2015年9月2日にネトフリが日本でサービス開始するに当たってプロモーションするための曲だったのか。彼らが「本能寺の変」以外にこんな仕事をしていたなんて知らなかった。


・PR案件以外で一番最初にネトフリに言及した楽曲は、2016年8月16日にリリースされた KEN THE 390の「プール」だ。以下その歌詞。

もう終わるよ夏休み 宿題忘れて軽あくび
ってそんな余裕なんてないのに見るTV Netflix MTV

エアコン効かせて ウォーキングデッド
ベッドでゴロゴロやる気もねーよ
とりあえず Hipして Hopして Popして Good!!
なんて現実は逃げ切れない

・夏の緩い情景が浮かんでいいな。惰性でテレビを付けっぱなしにしている無気力な感じが伝わってくる。国内でサービスが始まって1年経たずに曲にするのは、さすがフリースタイルダンジョン審査員といったところか。

・ちなみにウォーキングデッドは2022年のシリーズ完結(予定)まででシーズン11もあるらしい。こりゃ「ベッドでゴロゴロ」とでもしてなきゃ観切れないよな。


・以下、ネトフリが登場する歌詞の抜粋。

退勤→速攻帰宅 ためてた漫画にひたる
SpotifyからLK NETFLIXでこもる 時計の針が12
まだまだ終わらないぜ 家にいるなら何次会でもOK
Lucky Kilimanjaro「HOUSE」
朝までNetflix憂鬱なブルー 未来の世界 画面に映すんだ
グラスに一杯入った幸せ 連れて行ってくれ 満たして
OKAMOTO'S「Complication」
やらなきゃいけないこといっぱい
なのに今日に限って遅すぎるWi-Fi 10PM いつもならNetflix
ポップコーンとコークでビンジウォッチング
いやそんな気分になれないし 眠るにはまだちょっと早過ぎるし
SCANDAL「Living in the city」

・ネトフリが登場する曲を多く眺めていると、そこに「日常」や「惰性」(”怠惰”のニュアンスではない)が多く込められていることに気付く。誰しも常にアクティブに動くことはできない。オフの私的空間を象徴するのがネトフリなのではないか、と思った。

・中にはネトフリを倍速で観るようなせっかちな曲(Dos Monos「OCCUPIED!」)もあるが、ネットフリックスを取り囲む環境には緩やかな個人的な時間の流れがある。その緩さと外部(恋人・社会)との関係や対比を示すことで曲そのものが立体的になるような気がした。語用論には程遠い、薄い自分なりの感想。

・今後ますますNETFLIXが普及し、それに言及する曲が増えるだろう。このサービスが今後どう解釈され、楽曲の舞台装置となるか楽しみだ。


罵詈を抜いた? マジもう無理だ 
バリ島 もしくはパリでも行きたい
儲ける転売 Netflix 観ながら彼女とS○X
DOTAMA「雑言」

・やめなさいって。


・ちなみに「Hulu」が登場する楽曲は1曲(ミオヤマザキ「0721」)だった。


【今日得た知識】
・「Hulu」とは大事なものを入れるひょうたんを意味する中国語「葫芦」(拼音: húlú)と、インタラクティブに記録することを意味する「互录」(拼音: hùlù)にちなんでいる。

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