バラ好きの視点から読み解くさよならローズガーデン第1回~バラの熱狂時代1900
ごきげんよう、はねおかです。
今回はタイトルの通り、さよならローズガーデンについて書いてみたいと思います。
さよならローズガーデンは1900年代のイギリスを舞台とした漫画です。
この漫画にはバラやローズガーデンが登場しますが、バラに詳しくない人がいわゆるバラとして想像するバラである剣弁高芯咲きのバラは登場しません。
「さよならローズガーデン」に登場するバラは、一見すると芍薬のようにみえるバラばかりです。
これはバラの咲き方で言えば、カップ咲きと呼ばれる咲き方で、クラシカルな見た目から人気の高いバラでもあります。
1900年代のバラは、バラ熱が加熱していた時期です。
ハイブリッド・ティー・ローズの第一号として名を挙げた「ラ・フランス(1867年作出)」や、初の黄薔薇系品種「ソレイユ・ドール(1900年作出)」、オールドローズの最終到達地点「ハイブリッド・パーペチュアル・ローズ」らの群雄割拠。
これ以降、世界で最も売れたバラ「ピース」や、最速での世界バラ会連合殿堂入りを果たす「ダブル・ディライト」、逆にクラシカルな見た目に戻っていく「イングリッシュ・ローズ」などがどんどんと作出されていきます。
そんなバラ熱狂時代には、どれだけのバラの種類があったと思いますか?
ここで、アメリカン・ローズ・ソサエティが定義したバラの分類「ARS MODERN ROSES 12 DATABESE」から、原種・オールドローズを挙げみましょう。
このように、見ているだけで頭が痛くなってくるようなほどに広がりを見せるバラの分類とは逆に、封建社会である作中では、身分違いかつ同性ともなれば、きっと作中以上の侮蔑をもっていられたことでしょう。
作者もあとがきにおいて「当時の日本と英国の女性史や同性愛史について文献を詳しく調べていくうちに、映画やドラマ、小説などで認識していた以上の想像を絶する辛さを知った」と書いています。
あるバラ育種家は、こう皮肉を言ったそうです。
「ティー・ローズは平凡な枝に綺麗な花を咲かせ、ハイブリッド・パーペチュアルは丈夫な枝に粗末な花を咲かせる」と。
バラの評価でさえ、万人が認めるものがなかったのです。
今では様々な花形のバラが咲き乱れています。
僕が初めて(ジャンルとしての)百合の世界に足を踏み入れた20年前から比べたら、今は劇的なほどに百合というジャンルは認められ広がりをみせています。
バラの過渡期の世界に、駆け抜けた華子とアリス。
認められなかった二人に、僕は思いを馳せてしまいます。
参考文献
図説 バラの博物百科:原書房
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